Newsletter No.2   25 August 1998

 

近況について

 オープンから1カ月と10日、アッという間に時間が経ってしまいました。オーダーしていながら入荷が間に合わなかったタイトルも次第にそろってきて、少しずつ “北欧音楽の店” としての形ができてきたような気がします。CDに添付するカバーノートの作成に追われていますが、あとひと息というところまできました。

 

新しいレーベル

 ここで皆さんにお礼を言っておかねばなりません。入手希望のアルバムを色々と教えていただいた結果、新しく Opus3 (オーパス3) とシベリウス音楽院のCDを揃えることができるようになりました。近日中にエストニアの音楽の録音を出しているドイツのレーベル、Antes Edition (アンテス・エディツィオン) のタイトルも入手できる予定です。これからも色々なレーベルの作品を手に入れられるよう努力していくつもりです。

 

Opus3 (オーパス3) (スウェーデン)について

 Opus3 はクラシカルからジャズやブルーズまで、アクースティック音楽の面白いアルバムを出しているレーベルです。素晴らしいのは、代表者でプロデューサーとエンジニアを兼ねるペーションさんの録音に対する姿勢が一貫していることです。すべてのアルバムで追求されているのは“音楽する楽しさ”で、定評のある自然な雰囲気を大切にした録音も、決してそれ自体が目的ではなく、現場の音楽を聴く側にも体験してもらうための手段です。セッテルクヴィスト弦楽四重奏団の演奏するステーンハンマルの弦楽四重奏曲第6(CD19702)、モーツァルトのクラリネット協奏曲のバセットクラリネットによる録音 (CD8801) など、みなペーションさんの自信作です。アイスランド、レイキャヴィクのハトルグリーム教会で録音された“オルガンと打楽器による即興音楽”は一聴すると「エーッ!」と言いそうな作品ですが、何度か聴いているうちにその音の世界に魅せられていく、そんなアルバムに仕上がっています。これからの録音が楽しみなレーベルです。

 

シベリウス音楽院のアルバム

 ヘルシンキにあるシベリウス音楽院のことはご存じでしょう。サイモン・ラトルの後任としてバーミンガムのオーケストラを指揮するサカリ・オラモ、トロント交響楽団とフィンランド放送交響楽団のユッカ=ペッカ・サラステ、新しいシベリウスの交響曲の録音で日本でも人気の高いオスモ・ヴァンスカ、シベリウス・コンペティションで優勝したヴァイオリンのペッカ・クーシストなど、国際的に活躍中のこれらの才能はすべて、音楽のジャンルや作曲、演奏の別を問わずフィンランド音楽教育の中心となっている、この音楽院の出身です。この音楽院がリリースしているCDは、リーサ・ポホヨラ教授によるエーリク・ベリマンのピアノ作品集など、現代の音楽が中心です。中には BIS のシベリウスのピアノ作品の録音などで名高いエーリク・T・タヴァッシェルナ教授によるエングルンド、ハイドン、スカルラッティのソナタとともに、シューベルトのイ長調の遺作のソナタのライヴ録音のように面白いアルバムもあります (Sibelius Academy SACD6)Opus 3 と同じくこれからが楽しみです。

 

管楽器のための北欧の音楽

 私たちの店にお見えになる方は当然ながら色々な音楽の好みをおもちになっています。中でも特に面白いのは、音楽大学の学生やOBの方たちに限らず、自分で楽器を演奏される方が多いことです。それも圧倒的に多いのが管楽器です。管楽器のための音楽には私たちの予想をはるかに超えた人気が集まっています。ルーマンのフルートソナタ (Proprius PRCD9019, PRCD9020)、クルーセルのクラリネット協奏曲 (Musica Sveciae MSCD527, BIS CD345 ほか)、そして特別に気に入っていただいているのがフィンランド金管アンサンブルによるシベリウス、ウスコ・メリライネンとラウタヴァーラのブラス作品を集めた “青春の魅力と情熱” (Alba ABCD102) というアルバムです。

 既存の曲からの編曲が多いブラスのジャンルでは珍しく、すべて金管楽器のためのオリジナル作品ということもあるのでしょうが、それだけでもなさそうです。自分で楽器を演奏しない方も「楽しい」言ってくださることからもわかりますが、作品とサラステの指揮するアンサンブルの演奏が醸しだす音楽が、まさに “楽興の時” だからではないでしょうか。高らかにファンファーレを奏でることの多いブラス楽器が、これほどまでに “柔らかく” 美しい音楽を生みだすと、ブラス楽器のもつ可能性にあらためて驚いてしまいます。

 このアルバムにトランペット奏者として参加しているヨウコ・ハルヤンネ Jouko Harjannne が音楽大学の方たちに人気があるのはとても嬉しいことです。トランペットというとスウェーデンのホーカン・ハーデンベリエル (ハーデンベルガー) Håkan Hardenberger が世界の人気者で、確かに名手だと思います。ただ、あまりに上手くて、時として音楽がスイスイと流れすぎるきらいがなくもないような気がします。ハルヤンネも名手ですが、この人の演奏を聴くと、“上手さ” より音楽への深い “共感” が感じられてとても好ましく思えるのですが、どうでしょうか (ことわるまでもないと思いますが、この “ヨウコ” さんは、どこかの “ヨーコ” さんと違ってヒゲをはやしたフィンランドの男性です)。

 こういった素晴らしい演奏家がたくさんいるためでしょうか、現代の北欧には管楽器のための優れた作品が多くあります。モーツァルトが協奏曲と五重奏曲を作曲したのもアントン・シュタートラーというクラリネット奏者がいたためのようですし、いい演奏者というのは、作曲者にインスピレーションや少なくとも作曲の機会を与える存在に違いありません。スウェーデンのラーションの12の小協奏曲の中にも管楽器のための佳作があります (Intim Musik IMCD030)。また、ノルウエーのホーヴランのピッコロ協奏曲とマドセンのテューバ協奏曲 (Aurora ACD4976)、同じくマドセンのホルン協奏曲 (Simax PSC1100) に代表されるような、バロックの時代を思い起こさせる“コンチェルタンテな”楽しい作品が数多く見受けられます。人によっては“現代の”という形容がないほうがいいと言われるかもしれません。

 アンサンブルのための作品でも、エングルンドの五重奏曲やカップ (エストニア) の組曲などを集めた、ヴィスビ管楽アンサンブルによる “バルト海の風” というCD (Proprius PRCD9024) があります。ようやくエアコンもいらなくなる季節、こういう “リスナーフレンドリー” な現代の音楽にふれてみるのも一興ではないでしょうか。

(TT)


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© Nordic Sound Hiroshima

CD artwork © Alba (Finland)