Newsletter No.4   25 October 1998

 

アイスランド ITMCD − ヨウン・ノルダル宗教合唱曲集ほか

 スウェーデンと同じく独自のレコードレーベルを持っている、アイスランド音楽情報センターの製作するCDに関して、お知らせがあります。

 アイスランド音楽情報センターのレーベル、ITMCDは入手がむずかしく、開店当初は私たちも10タイトルしかそろえることができませんでした。ITMCDはいずれも、選びぬかれた曲と演奏のアルバムとして定評があるので、このレーベルのCDがない北欧音楽の店というのは、非常にさびしい気がしていました。その ITM の25タイトルのCDを、今回やっと全種類そろえることができました。

 この中には、今年発売されて、その存在だけが知られ、北欧音楽のファン待望のアルバムとして期待の高かった、ヨウン・ノルダル Jón Nordal の宗教合唱曲集も含まれています (ITM7-09)1926年生まれのヨウン・ノルダルの独自の音楽の世界は、すでにチェロ協奏曲などの器楽作品を通じてよく知られていました。合唱曲は、ITMの初期のCDに《岩への祈り (Kveðið í bjargi/Invocation to the Rock)》などの4曲が収録され、その素晴らしさを知るひとたちは、もっと多くの曲を聴きたいという願いをもっていたようです。

 このアルバムにはここ10年ほどの間に書かれた3曲が収録され、タイトルの “太陽を私は見た (Sól eg sá)” は、3番目の作品《春の朝の祈り》で歌われる現代アイスランドの詩人マティーアス・ヨハネッセン Matthías Johannessen (b.1930) の詩、《太陽の雄鹿 (Sólhjartarljóð)》の冒頭の言葉からとられています。

 最初に収められた《世々の歌 (Aldasöngur)(1986) は、16世紀から17世紀に生きたビャルニ・ヨウンソンの詩、15世紀の写本からとられたラテン語の聖歌の詩、それに20世紀のヨウン・ヘルガソンの詩を対比させることによって、アイスランドのカトリシズムの変化をたどり、失われた文化的、宗教的生活の輝きを表現することを意図した、神を賛美する歌です。1995年作曲の《レクイエム (Requiem)》は、鎮魂ミサのラテン語の典礼から《レクイエム・エテルナム(永遠の安息)》の部分だけを歌った短い作品です。この2曲を歌っているのはベルンハルズル・ウィルキンソン Bernharður Wilkinson 指揮のクリョウメイキ合唱団 Hljómeyki で、ソプラノはハトルヴェイグ・ルーナルスドウッティル Hallveig Rúnarsdóttir (b.1974)。バリトンのオウラヴル・E・ルーナルソン Ólafur E. Rúnarsson は《レクイエム》のみに参加しています。いずれも16分前後の曲で、透明感のあるアカペラ合唱の響きが美しい、充実した作品です。

 この2作とともに多くのひとに愛されると思われるのが、ソプラノ、カウンターテナー、チェロ、パーカッション、オルガンと混声合唱のための《春の朝の祈り (Óttusöngvar á Vori/Matins in Spring)(1993) です。13世紀アイスランドの《太陽の詩》につづいて、ラテン語の典礼からキリエ、サンクトゥス、アニュス・デイ(神の子羊)が歌われ、先に触れた《太陽の雄鹿》で曲のクライマックスを迎える構成になっています。アトリ・インゴウルソンによるブックレットの解説で強調されているのが、《太陽の雄鹿》の部分にみられる “聖と俗の融合” です。最初のふたつの部分では “宗教” が前面に出ていて、サンクトゥスの「ホザンナ」のフォルテッシモの合唱とオルガンが鳴り響く壮麗な音楽など、古今の宗教曲に共通する宗教音楽らしさを感じさせます。しかし、《太陽の雄鹿》の冒頭、「太陽をわたしは見た、太陽の雄鹿を、その角は天国まで届き、そして明るい星が…」とソプラノが歌う高揚感のある旋律は、まさに “世俗” の歓びの歌です。アトリ・インゴウルソン Atli Ingólfsson の“信仰の心が自由にはばたく音楽となり、地上の人間の喜びの歌を歌う”という文章は、ヨウン・ノルダルのこの作品の最大の特徴を的確に表現していると言っていいように思います。

 《春の朝の祈り》だけは、ホルズル・アウスケルソン Horður Áskelsson (b.1953) 指揮のハトルグリーム教会モテット合唱団 Mótettukór Hallgrímskirkju が本拠地の教会で録音しています。純正ピッチで歌う透明感の高い歌唱に、時おり絶妙に“息”をまぜる、そういったテクニックも、“聖と俗の融合” というこの曲の特徴を最高度に表現する点で大きなポイントになっていそうです。

 アイスランドからの最新情報によると、このモテット合唱団のメンバーで構成された室内合唱団が、今月の中旬にフランスで開催された国際合唱コンクールで優勝したとのことです。

 最初に言ったとおり、ITMCDはすべて興味深いアルバムです。ヨウン・レイフス Jón Leifs (1899-1968) の生涯を描いた映画《石の涙》のサウンドトラックからのCDも、種々の曲の断片の寄せ集めのように見えながら、彼の音楽のエッセンスが味わえるように巧みに構成されています。ペトリ・サカリ指揮アイスランド交響楽団による《悲歌 (Elegy)》など数曲は、Chandos からリリースされているヨウン・レイフス作品集 (Chandos CHAN9433) に入っている録音と同じ演奏だと思いますが、《バルドル (Baldr)》からの抜粋をはじめ、このCDでしか聴くことができない演奏も含まれています。

 ITM の全25タイトルのCDの曲目と演奏者を記載した詳細なリストがありますので、ご希望の方はお知らせください。

 

Antes EditionCD

 以前にもお知らせしましたが、Antes Edition から発売されたアルバムのなかから、エストニアの音楽のCDを中心に、今回14タイトルが入荷しました。なかには Musica Sveciae (ムシカ・スヴェシエ) にデューベン・コレクションの録音のあるホルトゥス・ムジクス(音楽の園)というバロック合奏団が演奏する、ペーテル・ヴァヒ Peeter Vähi (b.1955) の《レヴァルの4枚の絵画》などという珍しい作品もあります (BM-CD31.9086)。彼らは“キリスト生誕2000年”という、古楽器から電子楽器までを駆使した面白そうなアルバム (BM-CD31.9059) にも参加しています。

 “バルト海沿岸地方の音楽” では、カメラータ・タリンなどのグループが17世紀のメーデルの作品から現代のエステル・マギの作品までを演奏しています。“ポートレート” として作品集になっているのは、ヘイノ・ユーリサルー、ライモ・カングロ、マッティ・クールベリ、アンティ・マルグステ、ヤーン・ラーツそしてマギ。あとのふたりにはそれぞれオルガン曲集とピアノ曲集もあります。オルガン作品集では、他にヤーヌス・トリムのオルガン交響曲3曲などを収めたアルバムもあります。

 残念ながら未聴ですが、エイノ・タンベルグ Eino Tamberg (b.1930) の第1番と第2番の交響曲とヴァイオリン協奏曲を録音したCD (BM-CD31.9075)(第1番はネーメ・ヤルヴィ指揮エストニア放送管弦楽団による演奏です)と、ウルマス・シサスク Urmas Sisask (b.1960) の《クリスマス・オラトリオ》と《クリスマスのミサ曲》(BM-CD31.9061) の2枚は、非常に興味深いアルバムではないかと思います。

 

アッテルベリの交響曲の録音予定

 クット・アッテルベリ Kurt Atterberg (1887-1974) の第7番から第9番の交響曲のCD録音予定について、いくつかのレコード会社に照会してみました。残念ながら録音の予定はないとのことです。広上淳一の指揮で第6番を録音している、全集物の好きな BIS でさえ、各地の交響楽団が演奏する予定でもないかぎり無理だろうという回答でした。Musica Sveciae は政府予算がおりない現状では可能性はないでしょうから、あとは、第1番と第4番の古い録音のCDのある Sterling にたずねてみようかと思っています。でも第7番、第8番、第9番、いったいどんな曲なのでしょうか。

 ちなみに BIS の次回の北欧作品の録音は、カレヴィ・アホの交響曲第7番です。手紙には書いてありませんでしたが、演奏は、アホがレジデンス・コンポーザーを務めるヴァンスカ指揮のラハティ交響楽団だと思われます。ヴァンスカとラハティについては、フィンランド語で歌うクリスマス音楽のアルバムの発売も予定されています。

(追記) この項目を書いたあとになって、アッテルベリの第7番と第8番がリリースされるという知らせが入ってきました。“Sterling (スターリング) に” と書いたばかりの、その Sterling から発売されます (CDS1026-2)。オーケストラははマルメ交響楽団。ミハイル・ユロフスキーの指揮です。

 

クラミの作品の録音予定

 シベリウス後のフィンランドでもっとも魅力ある作曲家のひとりウーノ・クラミ Uuno Klami (1900-1961) の作品リストには、当然録音されるべき素晴らしい作品がもっとたくさんあるといわれています。2000年は彼の生誕100年記念の年にあたるので、録音の予定がないかどうかを BISOndine に照会しました。残念ながらアッテルベリの場合と同様、クラミの作品の録音についても交響楽団の演奏会のプログラム次第との回答でした。現在フィンランドのクラミ協会に問い合わせていますので、後にあらためてお知らせします。

 

フィンランドのマイナーレーベルのCDのこと

 今回フィンランドのマイナーレーベルのCDを数種類取り寄せてみました。トイヴォ・クーラのピアノとオルガンのための作品全集 (MILS 8923)、パルムグレンの男声合唱曲集 (Amici Cantus ACCD91)、マデトヤの混声合唱と歌曲のアルバム (Suomen Laulu SLCD006)、そしてカントレス・ミノレス青少年合唱団による《ピエ・カンツィオーネス》を含むフィンランド合唱曲集 (Fuga 9093)、以上の4点です。

 クーラのピアノ作品はヘイノネンと舘野泉による小品の録音がありますが、ピアノのための組曲と《流れを漂う舟》《舟歌》は他に録音がないはずです。入荷したのは、フィンランドのピアニスト、マッティ・ラエカッリオが演奏したアルバムです。パルムグレンの男声合唱曲は、今年になって Finlandia からヘルシンキ大学合唱団による全曲演奏の2枚が発売になりました。選集のほうは、ノルヤネン指揮アミチ・カントゥスの歌唱による録音です。スオメン・ラウル (Suomen Laulu フィンランドの歌) という名称の合唱団が歌うマデトヤの合唱曲のCDは、このグループ自身のレーベルのアルバムです。

 フィンランドには海外に流通していない、小編成の音楽のアルバムがいくつかあるので、これからも面白そうなアルバムを少しずつしい作品がもっとたくさんあるといわれています。流通ルートの関係から価格が高くなってしまうのが難点なので、安く入手できる方法も探していこうと思っています。

 

ミーハーなお知らせ − セーゲルスタムのサインつきCD

 Ondine からシベリウスの管弦楽作品集が発売になりました。曲目は音詩《大洋の女神》、劇音楽《テンペスト》の第1と第2の組曲、それに音詩《夜の騎行と日の出》。《レンミンカイネン》組曲と《タピオラ》につづく、セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルの2枚目のシベリウス・アルバムになります。最初のアルバムのセーゲルスタムの演奏は相当に “熱い” 演奏だったと思います。今回、新しいアルバムの発売にあたり、Ondine のキールネンさんの好意により、セーゲルスタム直筆のサインつきブックレット添付のCDを入手することができました。セーゲルスタムのファンの方におすすめします。

(TT)

 

新譜情報

Bergen Digital BD7034 フィンマークの高地の朝 (Morgen over Finnmarksvidda)
アルネ・ダーグスヴィーク、オーラ・グラーフ
 短調のポルス (Mollpolsen) 学校の鐘が鳴った時 (Da klokka klang)
 青い夕べ (Blå kveill) マガモ (Villanden)
 カササギのような美しい娘を持つ者はいない (Ingen har så fager datter som skjura)
 小さい子 (Lite bane) ハリング (Halling) 夏の夜 (Sommernatt) 祈り (Bøn)
 自転車ハンドル (Cykkelstyret) 群島の海 (Skjærgårdsø)
 フィンマークの高地の朝 (Morgen over Finnmarksviddden)
  アンサンブル・ノール (ピアノ五重奏) マリ・ハウエン (フルート)
  アルタ・モテット合唱団 オッタル・グリムスター (指揮)

BIS CD936 カレヴィ・アホ (1949-)
 交響曲第2(1970 rev.1975) 交響曲第7番《虫の交響曲 (Hyönteissinfonia)(1988)
  ラハティ交響楽団 オスモ・ヴァンスカ (指揮)

BIS CD947 クリスマス・ワンダーランド (Joulun Ihmemaa) − ラハティ交響楽団のクリスマス
ゲオルク・ヨーゼフ・フォーグラー (1749-1814) (カレヴィ・アホ 編曲) ホサナ (Hosianna)
ジャン・シベリウス (1865-1957) (イルッカ・クーシスト 編曲)
 雪はうず高く積もり (On hanget korkeat) 作品1-5
オット・コティライネン (1868-1936) (カレヴィ・アホ 編曲) クリスマスの朝の雀 (Varpunen jouluaamuna)
ヤルッコ・キースキ (1966-) クリスマスのことば (Joulun kieli)
フェリックス・バーナード (1897-1944) (ヤルッコ・キースキ 編曲) 冬のふしぎの国 (Winter Wonderland)
ヨーナス・コッコネン (1921-1996)/民謡 (ハッリ・ヴェッスマン 編曲)
 クリスマスには (Jouluna)/天使の歌が聞こえた (Kuului laulu enkelten)
マルック・ユーハンソン (編曲) ポプリ《クリスマスの星 (Joulun tähti)
リーロイ・アンダーソン (1908-1975) そりすべり (Rekiretki)
イルッカ・クーシスト (1933-) (編曲) ポプリ《ワイルドなクリスマス (Wild Christmas)
アハティ・ソンニネン (1914-1984) (ヤルッコ・キースキ 編曲) 平和、ただ平和だけを (Rauhaa, vain rauhaa)
アルマス・マーサロ (ヤルッコ・キースキ 編曲) クリスマスの鐘 (Joulun kellot)
カッス・ハッロネン (1953-) (ヤルッコ・キースキ 編曲) わが心のクリスマスは (Sydämeeni joulun teen)
フランツ・グルーバー (1787-1863) (アツソ・アルミラ 編曲) 聖しこの夜 (Jouluyö, juhlayö)
ジャン・シベリウス (1865-1957) (ヤルッコ・キースキ 編曲)
 クリスマスの歌「私には富も名声もいらない」 (Julvisa "Giv mig ej glans, ej guld, ej prakt") 作品1-4
マルッティ・トゥルネン (1902-1979) (イルッカ・クーシスト 編曲) クリスマスを祝おう (Me käymme joulun viettohon)
オスモ・ヴァンスカ (1953-) (ヤルッコ・キースキ 編曲) クリスマスのメッセージ (Joulun sanoma)
ミカエル・プレトーリウス (1571-1621) (カレヴィ・アホ 編曲) 高き天より (Enkeli taivaan)
  ラハティ交響楽団 ラハティ・ラウルプー児童合唱団 パウリ・ピエティライネン (オルガン)
  オスモ・ヴァンスカ (指揮) ユッカ・ヒルヴィカンガス (コールアングレ) ハッリ・リドスレ (テューバ)
  アリ・ヘイノネン (トランペット)

BIS CD958 カール=エーリク・ヴェーリン (1934-1992) 弦楽四重奏曲集
 弦楽四重奏曲第9番 作品62 (1990) 弦楽四重奏曲第1番《Eigentlich nicht... (本当ではない)》 (1967)
 弦楽四重奏曲第6(1982)  弦楽四重奏曲第7(1984)
  ターレ四重奏団

BIS CD962 ハーラル・セーヴェルー (1897-1992)
 ファンファーレと讃歌 (Fanfare og hymne) 作品48 (1969-70)
 ピアノ協奏曲 作品31 (1950) 交響曲第9番 作品45 (1966)
  小川典子 (ピアノ) スタヴァンゲル交響楽団 アレクサンドル・ドミトリーエフ (指揮)

Danica DCD8198 永遠のひときれ (Lidt af Evigheden)
ニルス・W・ゲーゼ
(1817-1890)
 季節の絵 (Årstidsbilleder) 作品51
  夏 (Sommer) 落葉 (Løvfald)  クリスマスイブ (Juelkvæd) 若葉 (Løvspring)
カール・ニルセン (1865-1931) デンマークの歌 (Den danske sang)
 楽しいときが多くて (Tit er jeg glad)
 私は心地よい眠りにつく (Jeg lægger mig så trygt til ro)
オトー・モーテンセン (1907-1986) 荒涼とした冬が去り (Den kedsom vinter gik sin gang)
スヴェン・S・シュルス (1913-1998) デンマークは香しく (Yndigt dufter Danmark)
ニルス・ラクーア (1944-) つばさ (Vingar)
ベント・ロレンセン (1935-) 3つの中国の詩 (1972)
ミケール・ボイェセン (1960-)
 永遠のひときれ (Lidt af evigheden) (1998)
  はじめに言葉があった (Først var ordet) なぞにみちた (Gådefuldt)
  わたしがどこに行こうと (Hvor jeg end går) いちごの歌 (Jordbærsangen)
  はじめに言葉があった II (Først var ordet II) 永遠 (Evigheden)
  聖アネ少女合唱団 ベンテ・エトロプ (指揮) ビアテ・ホイビ・ニルセン (指揮)
  エアリング・ペーザセン (指揮) ミケール・ボイェセン (指揮) ベリト・ヨハンセン (ピアノ)
  スサネ・スコウ (ピアノ) ヘンリク・スコテ・ラーセン (オーボエ)
  ハンス・ニュゴー (チェロ) ヨーアン・エムボー (ピアノ) マス・ヴィニング (ダブルベース)


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CD artwork © ITM (Iceland)