Newsletter No.7   12 February 1999

 

Swedish Society Discofil の今後の発売予定

 Swedish Society Discofil (スウィーディシュ・ソサイエティ・ディスコフィル)から1999年に発売の予定されているCDの内容が一部発表になりました。

 まず、ユシー・ビョーリン(ユッシ・ビョルリング)の“海へ”は、SCD1010 としてリリースされていたスウェーデン語歌曲集。マスターテープから再度リマスターし、1958年スウェーデン放送協会録音による彼の愛唱歌《海へ (Till Havs)》が新たに追加され、この春の発売が予定されています。

 ボロディン四重奏団の1958年録音のステーンハンマルの弦楽四重奏曲第3番も、SCD1032 として発売されていた録音をリマスターしての再発売です。以前はステーンハンマルのピアノ曲《晩夏の夜》と《2つの感傷的なロマンス》が一緒に収録されていましたが、今回はラヴェルの四重奏曲との組み合わせに変わります。

 今回初めてCD化されるのは、ニルス・グレヴィリウス指揮ストックホルム・フィルの演奏によるアルヴェーンの交響曲第4番です。ヴォカリーズの独唱はソプラノのグンニラ・マルンボリとテナーのスヴェン・エーリク・ヴィークストレム。1962年12月7日ストックホルム・コンサートホールでの録音です。スウェーデン Decca から発売されていたLPと同じ音源ですが、好録音で定評のあるプロフォン・レコードの技術陣が2分の1インチの3トラック・テープからリマスターするということなので、かなり音質が改善されるものと期待できます。10月の発売予定です。

 

ITM の新譜から

 アイスランドの ITM から昨年発売されたヨウン・ノルダルの宗教合唱曲集は、澄み切った空に拡散していくような瑞々しい歌声の素晴らしさのためか、北欧音楽のファンの間で大きな評判になり、これをきっかけに、あらためてアイスランド音楽が注目されるようになりました。

 その ITM から、こんどは独奏ヴァイオリンのための作品集が発売になりました (ITM8-10)。アイスランドにおけるヴァイオリン音楽の歴史は浅く、19世紀の中頃、ひとりの建具師が現在と同じ形のヴァイオリンを外国から持ち帰るまでは、“フィズラ”と呼ばれる2弦のフィドルが使われていたにすぎず、この楽器もこの時代にはすでに廃れてしまっていたようです。新しい楽器はアイスランド語で“フィーオリーン”と名付けられ、この名称を普及させようと様々な試みがなされたにもかかわらず、結局この楽器は昔のフィドルと同じ“フィズラ”という名前で呼ばれるようになりました。ヴァイオリンがそれだけ人々に親しまれる楽器になったということかもしれません。

 この新しいディスクには、ヨウン・レイフスの1924年の《習作》から、1996年作曲のトリグヴィ・M・バルドヴィンソンの《アダージョ》まで、作曲年代の異なる5つの作品が収録されており、今世紀アイスランドの多様なヴァイオリン音楽を聴けるようになっています。演奏しているルート・インゴウルスドウッティル Rut Ingólfsdóttir は、アイスランド交響楽団のコンサートマスターを経験し、1974年に創設されたレイキャヴィーク室内管弦楽団の初代のリーダーとして、アイスランドを代表するヴァイオリニストといわれています。彼女のきめの細かい音による集中力の高い演奏でこれらの作品を聴くと、器楽と声楽というジャンルの違いはあっても、ノルダルの合唱作品と同じ世界を訪れているかのように感じてしまいます。アイスランドという同じ風土から生まれた音楽だからでしょうか。

 余談になりますが、このところ、端正な演奏に特色のある北欧出身のヴァイオリニストが目につくようになってきたような気がします。シベリウスのヴァイオリンとピアノのための組曲ホ長調 (シベリウス初期室内楽作品集 Ondine ODE850-2) や《ロマンス》("Strings Attached" Ondine ODE901-2) などで繊細な音色による爽やかな音楽を奏でるペッカ・クーシスト Pekka Kuusisto、スヴェンセンの《ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス》 (Simax PSC1097) で流麗な旋律をやさしく歌うヘンニング・クラッゲルード Henning Kraggerud、あるいはグリーグの3曲のヴァイオリンソナタ (Victoria VCD19070) に高貴な演奏をきかせる、今のふたりよりは年上のテリエ・トネセン Terje Tønnesen など、好みの問題もあるでしょうが、大向こうをうならせるタイプの演奏家でないぶん、冴えた技巧を意識させることなく作品本来の美しさを楽しませてくれるように思います。

 このインゴウルフドウッティルも同様の美質をもつ演奏家と言えそうです。無伴奏ヴァイオリンによる現代の音楽というと、なんとなく緊張を強いられそうな先入観をもってしまいますが、彼女のヴァイオリンの美音を聴いているだけでも、気持ちが和む思いがします。

 このあと ITM からは、さらに3枚のアルバムが発売されることになっているので、情報が入り次第、順次紹介していくつもりです。

 

ソルケトル・シーグルビョルンソンのCD

 ソルケトル・シーグルビョルンソン Þorkell Sigurbjörnsson (b.1938) がヨウン・ノルダルらとともに現代アイスランドを代表する作曲家だということはご存じのことと思います。器楽、声楽を問わず幅広いジャンルの作品を作るかたわら、プロフェッショナル、アマチュア、あるいは子供の音楽教育の指導者としての活躍は、アイスランドだけでなく北欧各国で高く評価されています。

 日本でも BISITM から発売されているCDによって彼の音楽に惹かれるひとも多く、中でもハムラクリーズ合唱団による“アイスランド合唱曲集” (ITM6-01) に収録されている《聞いてください、天国の創造主よ》は、合唱曲を好んで聴くひとたちと合唱活動に参加するひとたちの両方の心をとらえた作品と言われています。

 今回アイスランドから入荷した数種類の旧譜CDの中に、彼の作品だけを収録したアルバムが2枚含まれていました。ひとつは3つの異なる楽器のための協奏曲、もう1枚には宗教合唱曲が集められています。協奏曲集 (MedEd 1993) におさめられた、チェロ、クラリネット、そしてヴァイオリンのための協奏曲は、すべて各楽器の標準的なレパートリになってもいいくらい、生き生きとした音楽をきかせてくれる楽しい作品です。

 もうひとつのアルバムの宗教合唱曲集 (Smekkleysa SMK1) はクリョウメイキ室内合唱団のメンバーで構成したヴォーカルアンサンブルによる録音です。この合唱団は、ITM のノルダルのアルバムで《世々の歌》と《レクイエム》を歌っている団体なので、すでにおなじみのことと思います。最初の《テ・デウム (Te Deum)》は、作品の名前から連想される大がかりな音楽とはまったく異なり、どことなく “わらべ歌” を思わせるような素朴な旋律をもった、ハープの伴奏をともなう作品です。作品の魅力もさることながら、クリョウメイキ・ヴォーカルアンサンブルの素晴らしい歌唱をきくと、現実とは別の世界に入ってしまったような錯覚を起こしてしまいそうです。発声、フレージング、アンサンブルのすべてに熟練の技術があって初めて達成される見事な音楽のように思えます。

 《テ・デウム》から最後の《聞いてください、天の創り主よ》まで、“清らかな” とか “繊細な” とかいった言葉を越えて、音楽に浸りきることができることでしょう。

 

ヘルシンキ音楽院のシベリウス・アルバム

 前回新着CDとして紹介したヘルシンキ音楽院自主制作のシベリウス・アルバム (Helsingin Konservatorio HKSCD101) は素晴らしいアルバムでした。

 弦楽四重奏曲《内なる声 (Voces Intimae)》は指揮者のペッカ・ヘラスヴオ Pekka Helasvuo 自身が弦楽合奏のために編曲した版による演奏です。ダブルベース・パートの加わった弦楽合奏という編成に変わっても、シベリウスの“内省的な”音楽はいささかも損なわれることなく、味わい深い音楽として響いてきます。四重奏曲を初め、弦楽器のための室内楽作品を奏者の数だけ増やして演奏すると、音が厚ぼったく響くだけで、作曲者の意図したものとは違った音楽になりがちです。このシベリウスの演奏にそれが感じられないのは、ヘラスヴォの編曲の巧みさと音楽院の学生たちの丁寧な演奏によるところが多いように思います。

 3曲のメロドラマのなかでは、これが唯一の録音になる《嫉妬の夜》が注目されます。タイトルだけきくと、イタリア・オペラが得意とするドロドロした愛憎劇を想像しそうですが、実際は23歳のシベリウスの感性の作り上げた、透明な響きが印象的な美しい作品です。ヴァイオリン、チェロとピアノ、それにソプラノのヴォカリーズが加わる音楽にのって、フィンランドを代表する俳優といわれるラッセ・ポユスティが、自分のもとを去ってしまった恋人のことを夢想するJL・ルーネベリの長大な詩の一部分を朗読します。

 《伯爵夫人の肖像》はオスモ・ヴァンスカとラハティ交響楽団のディスク (BIS CD735) もありますが、本来のメロドラマとしての朗読つきの演奏による録音は今のところこのアルバムしかないはずです。《孤独なシュプール》は、すでにメロドラマ版の録音もあり − 同じくヴァンスカ指揮のラハティ交響楽団 (BIS CD815) − そこでも同じくポユスティが朗読を担当しています。なお、このCDには後半の2曲のバラード版(朗読なし)による演奏も同時に収録されており、両ヴァージョンを比べる楽しみもあります。ちなみに、このヘラスヴオとヘルシンキ音楽院のメンバーによる録音が行われたのは1994年4月なので、ほぼ1年後に録音された BIS の《伯爵夫人の肖像》に“世界初録音”と注記がありますが、実際には“世界初商業録音”が正しいということになります。

 

北欧マイナーレーベルの発売する他国の作品のCD

 ご承知のとおり、北欧のマイナーレーベルの多くは、北欧の演奏家を起用して自国以外の作曲家の作品の録音も出しています。中には非常に興味深いアルバムもありながら、メジャーレーベルのCDのように大きく取り上げられることがないために、どうしても見過ごされがちのようです。実際、もっと情報があればという声も寄せられていますので、前回のニューズレターから、これらのCDを新譜情報に含めて紹介するようにしました。

 また、新譜情報だけでなく、各レーベルのリリース内容のわかるカタログも必要でしょうから、TutlDaphne のように、日本語によるリストも徐々に用意していくつもりです。ITM のリストは出来上がり、これからフィンランドの MILS を作成するところです。カタログがなかったり、あったとしてもカタログだけでは詳細がわかりにくいレーベルのものから順番に作成することになりますので、早くほしいというご希望のレーベルがある場合はお知らせ下さい。

 

スウェーデンの新しいレーベル Atrium

 ワーナー・クラシックスからスウェーデンの新しいレーベル Atrium (エイトリアム) のCDが発売されました。ラップランド出身のヨイク・ヴォーカリストの作品、スウェーデンの民俗楽器“ニッケルハルパ”を取り入れたアルバム、という具合に、フォークミュージックをベースにしたアクースティックな音楽のレーベルです。既発売の9点のCDからピックアップしたオムニバスアルバムとそのほか数枚のCDを聞いたところ、いかにも“北の音”の世界に誘ってくれる音楽です。“クラシカル”の範疇には入らない音楽でしょうが、ワールドミュージックと呼ばれる音楽とはひと味ちがう洗練された響きがあって、意外な面白さが発見できるかもしれません。これまでに発売になった9枚のアルバムのタイトルと主なアーティストを紹介しておきます。

Atrium 3984-23500-2 フロム・ア・ノーザン・プレイス (Other music from a northern place)
 (オムニバスアルバム)

Atrium 3984-22107-2 天使の島々 (Angel Archipelago)
  ヨハン・ヘディン(ニッケルハルパ) バッカ・ハンス・エーリクソン(ベース)
  ユーナス・シェーブルム(パーカッション)

Atrium 3984-22197-2 三部作 (Triptyk)
  オーラ・ベックストレム(フィドル) ユーハン・ヘディン(ニッケルハルパ)
  ユーナス・クヌートソン(サクソフォーン)

Atrium 0630-19717-2 ルオッサ・エアナン (Ruossa eanan)
  ウッラ・ピルッティヤルヴィ(ヴォーカル)

Atrium 0630-17710-2 マルゴマユ (Malgomaj)
  ユーナス・クヌートソン(サクソフォーン)

Atrium 0630-17971-2 ミュージック・イン・ダークネス (Music in darkness)
  テンメル四重奏団

Atrium 0630-17709-2 エンキドゥ (Enkidu)
  ユーナス・シェーブルム(ドラムズ、パーカッション)

Atrium 0630-17972-2 夕暮れまで (Eventide)
  ニコライ・ドゥンガー(ヴォーカル)

Atrium 0630-19780-2 マーカラーケ (Mahkalahke)
  トランスヨイク

(TT)

新譜情報

BIS CD866  カレヴィ・アホ (1949-) バスーンと弦楽四重奏のための五重奏曲 (1977)
 アルトサクソフォーン、バスーン、ヴィオラ、チェロとダブルベースのための五重奏曲 (1994)
  ラハティ交響楽団室内アンサンブル ハッリ・アハマス (バスーン) ハンヌ・レヘトネン (アルトサックス)

Danica DCD8190 NFS・グルントヴィ (1783-1872) のテクストによるデンマーク賛美歌集
  カメラータ室内合唱団 ミケール・ボイェセン (指揮)

Danica DCD8200/01 2CD's GF・ヘンデル (1685-1759) オラトリオ《メサイア》
  インガー・ダム=イェンセン (ソプラノ) キアステン・ドルベア (メッツォソプラノ)
  ペーター・グレンルン (テノール) ペーア・ホイアー (バス)
  カメラータ室内合唱団・管弦楽団 ミケール・ボイェセン (指揮)

Finlandia 3984-25986-2 逃亡者の夏 − ペーア・ネアゴー (b.1932) 管弦楽作品集
 逃亡者の夏(弦楽合奏のための3つの楽章) 牧歌 (Pastoral) 変容 (Metamorphose)
 賛辞 − 弦楽のためのアルバム(観察《ベーラ・バルトークへのオマージュ》)
 この世界の外へ《ルトスワフスキーの思い出に》 アダージョ 星座
 壊れたすだれへの航海《ジャン・シベリウスへのオマージュ》
  オストロボスニア室内管弦楽団 ユハ・カンガス(指揮)

Rondo RCD8356 フレゼリク・クーラウ (1780-1832) ピアノ作品集 第3
 序奏、主題と9つの変奏曲 作品18
 
(クーラウの劇音楽《盗賊の城 (Røverborgen)》の盗賊の歌《Velkommen varme Purpurskaal》による)
 主題と7つの変奏曲 作品12
 
(ケルビーニのオペラ《二日間 (Les deux journées)》のアリア《Guide mes pas o providence》による)
 ソナタ 変ロ長調 作品30
 序奏とロンド 作品98b
  (オンスロウのオペラ《行商人 (Le Colporteur)》の合唱《ああ、凍えそうな時は (Ah! quand it gêle)》による)
 序奏とロンド 作品96
  (オンスロウのオペラ《行商人 (Le Colporteur)》の合唱《村の祭りだ (C'est la fête du village)》による) 
   トマス・トロンイェム (ピアノ)

Rondo RCD8359 トランペットとトロンボーンのためのデンマーク・ロマンティック協奏曲集
ヒルダ・セーエステズ (1858-1936) コルネット (トランペット) と管弦楽のための組曲 変ロ長調
アクセル・ヨーアンセン (1881-1947) トロンボーンと管弦楽のための組曲
トーヴァル・ハンセン (1847-1915) トランペットソナタ
ライフ・ティボ (1922-) トランペット、トロンボーンと弦楽合奏のための協奏曲 (1982)
  ケティル・クリステンセン (トランペット) カーステン・スヴァンベア (トロンボーン)
  オルボー交響楽団 ヘンリク・ヴァウン・クリステンセン (指揮)

Rondo RCD8364 ヴィクトー・ベンディクス (1851-1926) ピアノ作品集
 ピアノソナタ 作品26 8つの小品 作品22
  ピーター・シーヴライト (ピアノ)


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© Nordic Sound Hiroshima

CD artwork © ITM (Iceland), Helsingin Konservatorio (Finland)