Newsletter No.19   16 April 2000

 

スウェーデンの男声合唱団、スヴァンホルム・シンガーズ

 スウェーデン放送合唱団をはじめとして、このところ北欧の合唱団はめざましい注目を集めるようになってきました。大きくとりあげられはしなかったものの、デンマークから訪れたトリニターティス・カントーリの昨年の東京公演も、知るひとぞ知る合唱団のコンサートとして熱い支持を得たと聞きます。ニューステットの宗教作品集が静かなブームをよんでいるオスロ大学スコラ・カントールム、アイスランドのクリョウメイキ室内合唱団やハトルグリーム教会合唱団など、即座に名前が思い出せる団体だけでも十の指では足りないくらいです。

 それにくらべて男声合唱のほうは、ひところにくらべると、どことなく混声合唱におされ気味です。ヒゥーゴ・アルヴェーンに育てられ長い伝統を誇るOD(オルフェイ・ドレンガル)は、指揮者がエーリク・エーリクソンからロベルト・スンドに変わってからは
緻密さの点で今ひとつの感があり、YL(ヘルシンキ大学合唱団)もマッティ・ヒュオッキの下では名声にややかげりが見られます。短期間ながらグリークラブに在籍したこともあり、個人的にも男声合唱にもっとがんばってほしいと思っています。

 男声合唱というと、アメリカのアイヴィリーグのフラターニティ (友愛クラブ) とイメージが重なるせいがあるのか、どうしても体育会系のノリの印象が強く、先日も混声合唱のファンからノーテンキな連中だとからかわれてしまいました。"Gaudeamus igitur" と歌いながら夜毎ハイデルベルクの町を練り歩いた “学生王子” のころのように、“酒と女と歌さえあればこの世は楽し” というイメージもあるので、それも仕方ないかもしれません。

 でも、繊細な歌から力強い歌まで聞かせる幅広い表現は、ちょっと得がたい男声合唱の醍醐味ではないでしょうか。どんなに柔らかなソプラノの声にだって負けないくらい優美なトップテナーと、深い響きで音楽を支えるベース。その間で歌唱に陰影をつけ、奥行きを与えるセカンドテナーとバリトン。同質の声が作り上げるダイナミックで繊細な音楽には混声合唱とは違った魅力があります。「ハモってさえいれば 幸せなんだろう」と言われたって、いいんです ( “ハモる” というのは、“ハーモニーのある響きで歌う” という意味のスラング)。ただ、強がりは言ってみても、このところ男声合唱はなんとなく劣勢なような気もします (男女の機会均等がどうとかいう法律とは無関係でしょうけど)。

 そんなところに “男声合唱ここにあり!” というグループが登場しました。スウェーデンのスヴァンホルム・シンガーズ Svanholm Singers です。高校の男声合唱団カントレス・カテドラーレス Cantores Cathedrales が発展した団体で、18歳から23歳まで約20人の団員の多くはルンド大学の学生です。カントレス・カテドラーレスの時代には、1997年オランダで開催された国際男声合唱コンペティションで一位になり、あわせて1997年ヨーロッパ最優秀男声合唱団にノミネートされました。スヴァンホルム・シンガーズとなってからは、1998年11月、約500の団体が参加して行われたスウェーデンの全国合唱コンペティションで "Toner för Miljoner" (百万人のための響き)を受賞。その結果、翌1999年に兵庫県宝塚市で開催された国際コンペティションに参加することになります。この大会で彼らは男声合唱部門賞とグランプリの両方の栄冠に輝きました。

 カントレス・カテドラーレスの時代からこのグループを育ててきた指揮者は、エヴァ・ブーリーン Eva Bohlin (b.1936) です。数学と音楽の教鞭をとるかたわら、ルンド室内合唱団、クリンテルナ、ルンド大聖堂少年聖歌隊などの育成に貢献してきました。いずれの合唱団も国際コンペティションで一位を獲得するなどの活躍をし、ブーリーンさん自身も1991年には "Choir conductor of the year" (年間最優秀合唱指揮者)に選ばれたこともあります。ルンド室内合唱団 Lunds Kammarkör 自主制作のスウェーデンの民謡などを収録したCDは、混声合唱のアルバムとして好評を得た1枚です。

 ブーリーンさんの父親は、ヘルデンテノールとして名声を博したセト・スヴァンホルム Set Svanholm (1904-1964)。ヒシュテン・フラグスター (キルステン・フラグスタート) と共演したヴァーグナーの《ジークフリート》の第3幕第3場の録音は、名高いふたりのヴァーグナー歌手による白熱の歌唱として歴史的名盤の1枚に数えられています。ショルティがジョン・カルショーの製作で録音したヴァーグナーの《ラインの黄金》で、スヴァンホルムは、フリッカ役で参加したフラグスターのたっての希望によりローゲの役を歌っています。新しい男声合唱団に父の苗字を冠したことのいきさつは、わかりません。ただ、スヴァンホルム・シンガーズがブーリーンさんにとってもっとも個人的に思い入れの強いグループだということだけは、まず間違いなさそうです。

 スヴァンホルム・シンガーズが自主制作したアルバムは、1999年の8月と9月に録音されました。宝塚市での結果に自信をつけた後の録音ということになります。クラシカルな作品を主体としながらも幅広いレパートリーを誇ることを示すため、このCDでは、アルヴェーンやヴィカンデルらの曲とともに、現代の作曲家による作品も歌われています。

 《Salve Regina (サルヴェ・レジナ) (元后あわれみの母)》は、ノルウェーのクヌート・ニューステット Knut Nystedt (b.1915) が、スヴァンホルム・シンガーズとエヴァ・ブーリーンのために作曲した作品です。ニューステットの代表作のひとつ《O Crux (オー・クルックス) (おお十字架よ)》のように劇的な展開をきかせる曲ではありませんが、作曲者の信仰告白の表現には変わりありません。愛情にみちた音楽には、男声合唱団の標準レパートリーとなるにふさわしいだけの魅力が感じられ、空間にひろがっていく柔らかなトップテナーの響きとともに心に残ります。

 クラシカルなレパートリーの作品、たとえばアルヴェーンの《夕べ》や《蝶々》などをロベルト・スンド指揮の OD の演奏とくらべると、包みこむような暖かい響きがスヴァンホルム・シンガーズの最大の持ち味ではないかという気がします。OD にくらべて約三分の一という少ないメンバー数のためだけなのか。ブックレットに載せられた2枚の写真が醸し出す親密な雰囲気がそのまま歌唱に反映していることだけは確かです。ブーリーンさんは、メンバーにとっては優しいおかあさんのような存在なのかもしれません。明かりを落として聴いたヘルマン・パルムの《山のトネリコとライラックの下で》の静かな抒情が、胸をしめつけます。スヴァンホルム・シンガーズ、そして男声合唱に熱いエールを送りたいと思います。


Svanholm Singers SvS1 スヴァンホルム・シンガーズ
ヴィルヘルム・スヴェードブム (1843-1904) (編曲) さあ、大いに飲もう、生あるかぎり (Hej dunkom)
オット・オルソン (1879-1964) (編曲) 判事の踊り (Domaredansen)
ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960) (編曲) 夕べ (Aftonen) 蝶々 (Papillon)
 喜びの花 (Glädjens blomster)
ヴェルヨ・トルミス (1930-)
 二部作 (Kaksikpühendus)
  ただひとつの歌だけ (Ühte laulu tahaks laulda) 星 (Tähed)
クヌート・ニューステット (1915-) Beata nobis (歓喜せよ) Salve Regina (元后あわれみの母)
エドヴァルド・グリーグ (1843-1907) Ave maris stella (めでたし海の星) (1898)
 子供の歌 (Bådn låt) 作品30-2
フランツ・ビーブル (1906-2001) Ave Maria (アヴェ・マリア)
フランシス・プーランク (1899-1963) アッシジの聖フランチェスコの4つの小さな祈り (1948)
カイ=エーリク・グスタフソン (1942-) De profundis (深き淵より)
ダーヴィド・ヴィカンデル (1884-1955) スズランの王 (Kung Liljekonvalje)
オット・フレードリク・トゥルベリ (1802-1853) (編曲) うるわしき水晶 (Kristallen den fina)
アウグスト・セーデルマン (1832-1876) (ヒゥーゴ・アルヴェーン 編曲) 月明かりのなかで (I månans skimmer)
ヘルマン・パルム (1863-1942) ナナカマドとライラックの下に (Under rönn och syrén) 
カミーユ・サン=サーンス (1835-1921) サルタレッロ (Satarello) 作品74
  スヴァンホルム・シンガーズ エヴァ・ブーリーン (指揮)

参考ディスク

Proprius PRCD9046 田舎の婚礼 − 19世紀と20世紀のスウェーデン男声合唱作品集
J・C・F・ヘフネル (1759-1833) スウェーデンの旗のもと 立ち去れ、時代のはかない思い出よ
エーリク・グスタフ・イェイエル (1783-1847) 静かな影
スウェーデン民謡 うるわしき水晶 東の国へ
オット・リンドブラード (1809-1864) 田舎へのあこがれ「冬はすでに」
 蒸気船の歌 オルフェウスの歌
グスタフ王子 (1827-1852) 行進曲「学生の楽しい日々を歌え」
 春の歌「夜明けの鳥のようにしあわせに」
ヤーコブ・アクセル・ユーセフソン (1818-1880) 春の歌「春のそよ風が吹いて」
 セレナード「星がきらめいて」

アウグスト・セーデルマン (1832-1876) 合唱曲集《田舎の婚礼》
ヴィルヘルム・スヴェドブム (1843-1904)(編曲) 乾杯の歌「大いに飲もう」(民謡)
オット・オルソン (1879-1964)(編曲) 判事の踊り(民謡)
ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960)  海の夜明け
ヘルマン・パルム (1863-1942) 山のトネリコとライラックの下で
ダーヴィド・ヴィーカンデル (1884-1955) スズランの王 ほか
  オルフェイ・ドレンガル (OD) エーリク・エーリクソン (指揮)

 

アイスランドのレーベル Smekkleysa

 アイスランドのレーベルでは、アイスランド音楽情報センターの ITM が、なんと言ってももっとも身近な存在です。ごく最近もヨウン・レイフスの「エッダ」に基づく作品集 (ITM9-01) とレイヴル・ソウラリンソンのヴァイオリン協奏曲と交響曲第2番 (ITM7-12) の2枚のディスクをリリースしたばかり。新しいアルバムの計画もいくつかあるということですので、これも楽しみです。

 いくつかあるアイスランドのマイナーレーベルのCDも、これまでに何枚か紹介してきました。なかでも Smekkleysa (スメックレイサ) からリリースされたソルケトル・シーグルビョルンソンの合唱曲集 “到来”(SMK1) は、混声合唱のファンにかぎらず幅広く愛されているアルバムです。《テ・デウム》の懐かしく、愛らしい音楽のためではないかと想像しています。

 このレーベル、Smekkleysa の掲げる目標は、Bad Taste (悪趣味)
をもって “イイ趣味” を打破することだとか。ところが、実は、この目的そのものが、きわめて趣味のいいシャレになっています。というのは、今回サンプルをちょうだいしたアルバムが、それぞれに興味深い、それこそ徹底して “イイ趣味” を感じさせる音楽になっているからです。

 ソプラノのマルタ・グヴズルーン・ハトルドウルスドウッティルが歌うアイスランドの民謡集 (SMK2)、女性作曲家ヨウルン・ヴィーザル Jórunn Viðar の歌曲集 (SMK8)、いろいろな歌手が分担したアイスランド歌曲集のアルバム (SMK4,
SMK5) など、特に声楽のアルバムが目をひきます。

 2セットにわかれたアイスランド歌曲集には、首都レイキャヴィークのシティ・シアターで開催されるゲルゾウベルグ歌曲リサイタルのレパートリーから選ばれた作品が収録されていますが、ライヴ録音ではありません。第1集・第2集 (SMK4) に56曲(約133分)、第3集・第4集 (SMK5) に59曲(約149分)という膨大な数の歌曲(一部民謡も含みます)が収められているので、とても一気に聞きとおすというわけにはいきませんが、アイスランド歌曲の歴史を鳥瞰し、その作品を楽しむにはもってこいのアルバムです。民謡集では、もちろん《百合 (Lilja/The Lily)》も歌われています。中世アイスランドの“無調音楽”として有名な作品です。ヨウルン・ヴィーザルの歌曲は、繰り返し聴くたびに親しみが増してくる作品のような気がします。

 民俗音楽としてもっとも興味を引くのは、アウルニ・マグヌーソン研究所が保管している音源による “声 (raddir/voice)(SMK7) でしょう。主婦、農夫、漁師、大工など、それこそ“土地の人たち”が歌ったリームル、賛美歌などの民謡が収録されています。一番古い録音は1942年、新しいものでも1970年代の初頭の録音です。「素朴だなー!」と思いながら聴いているうちに、いつの間にか時空を超えていったような錯覚に陥ってしまいます。

 “…だったら、ぼくはどこにいけば?(...hvar væri é þá?)(SMK3) は、アイスランド音楽界の一匹狼、スヴェイン・ルーズヴィーク・ビョルンソン Sveinn Lúðvík Björnsson (b.1962) の室内楽作品集です。簡潔で直截、そのくせ情緒をつよく刺激します。1989年から1997年にかけての作品が収録されていますが、いずれも新しいとも古いとも言えない音楽です。これが彼独自の世界なのでしょうか。演奏しているのはCAPUTアンサンブルです。精妙で確実な、そして共感をもった演奏を行っています。アウスケトル・マウッソン Áskell Másson (b.1953) の作品集“生へ (Til Lífsins)(SMK14) では、打楽器が繰り広げるさまざまな音の世界が体験できます。《光》 (1998) ではチェロとギターと少女合唱が、《人類の父》(1968) では葦笛が、それぞれ打楽器といっしょに音楽を作り上げていきます。

 どれもこれも非常に趣味のいいアルバムですが、あえて Smekkleysa の “悪趣味” を指摘するとしたら、アイスランド歌曲集のセットのカバー・イラストレーションでしょうか。いずれもヘルギ・ソルギルス・フリズヨウンソンというアイスランドでは有名な作家の作品が使われています。たしかに有名かもしれません。でも、この2枚のイラスト、なんとなくコワイような、あえて言うなら気味が悪いと言えなくもないような。ユーモラスと見る人がいても不思議ではありませんが、ちょっとどうでしょう (あくまで個人的な趣味ですが)。

 詳細な曲目まで紹介できないので、別に Smekkleysaリリースリストを用意しました。また、全部のディスクの試聴盤もありますので、じっくりと楽しんでみてください。

 

リトアニアの新しい音楽のシリーズ

 バルト三国のひとつ、リトアニアのもっとも重要な作曲家として挙げられるのがミカロユス・コンスタンティナス・チュルリョーニス Mikalojus Konstantinas Ciurlionis (1875-1911) だということは、まず疑いのないところでしょう。Marco Polo からリリースされた管弦楽作品とピアノ作品のCDは、リトアニアの音楽遺産を知り、味わうための貴重な録音として、今でもカタログに残っています (8.223323/8.223549/8.223550)。特にユオザス・ドマルカス Juozas Domarkas が指揮した管弦楽作品の演奏は、リトアニアの音楽はロシア音楽とは違うという、アイデンティティを強く示した演奏として、非常に意義のあるアルバムです。《森で (Miske/In the Forest)》と《海 (Jura/The Sea)》の2曲の交響詩など、フェドセーエフの“あきれかえるほどロシア的な”演奏とはまったく別の世界です。フェドセーエフのCD (Chant du Monde LDC288004) はたしか廃盤になっていると思います (ランズベルギスを憤慨させた演奏だという話があります。当然でしょう)。ただ、あのディスクの余白に収録されたヴィルニュス四重奏団による弦楽四重奏曲だけは、なんとか復活してほしいものです。ピアノのための作品には、リトアニア大統領で音楽家のヴィータウタス・ランズベルギス Vytautas Landsbergis による貴重な録音もあり (EMI Classics 7243-566791-2)、これもチュルリョーニスが国民的存在だということのひとつ証しかもしれません。

 チュルリョーニスと同時代にはチェスロヴァス・サスナウスカス Ceslovas Sasnauskas (1867-1916) とユオザス・ナウヤリス Juozas Naujalis (1869-1934)、テオドラス・ブラジス Teodoras Brazys (1870-1930)、ミカス・ペトラウスカス Mikas Petrauskas (1873-1937) らがいました。その他にも、若い頃にはみずから“リトアニアのグリーグ!”と称し、ロマンティック音楽の後継者との自負をもっていたユオザス・グルオディス Juozas Gruodis (1884-1948) らがいますが、実際に音として音楽を知ることができるのは、これからのことになります。むしろ、アンタナス・レカシュース Antanas Rekasius (b.1928)、ブロニュース・クタヴィチュス Bronius Kutavicius (b.1932) ら、現代の作曲家のほうが録音の点では恵まれているかもしれません。特にレカシュースの《弦楽のための音楽》は、ユハ・カンガスがオストロボスニア室内管弦楽団を指揮した録音でおなじみの方もあることと思います (Finlandia 4509-97893-2)

 リトアニア音楽情報出版センターがリリースしている「リトアニア・ニューミュジック・シリーズ」も、“ロシア(そしてソ連)から脱皮しよう”としている現代の作曲家たちを紹介するシリーズです。現在6枚のCDがリリースされており、リトアニアの多様な現代音楽を知ることができます(詳細は、リリースリストを参照してください)。

 “リトアニアの交響的作品、ライヴ”(LCUCD001) は、現代の交響的な作品をライヴによる演奏で収録したアルバムです。5曲すべて興味深い作品ですが、ヴィータウタス・バルカウスカス Vytautas Barkauskas (b.1931) の《管弦楽のための小協奏曲第2番》と、アルギルダス・マルティナイティス Algirdas Martinaitis (b.1950) の《未完成交響曲》の曲がとりわけ面白いかもしれません。バルカウスカスの作品はかなり複雑な音楽のようですが、はっきりした調性があります。メロディ、ハーモニー、テクスチュア、リズムが作り上げる音楽を、純音楽としてそのまま楽しめばいいように思います。《未完成交響曲》は、かわった作品です。ヴァーグナーの《ヴァルキューレの騎行》を思い起こさせる冒頭から“何でもあり”風の音楽が展開して、あきることがありません。ヴァーグナー以外にシューベルト、ブラームス、マーラー、モーツァルト、ブルックナーも顔をのぞかせます。シベリウスの《悲しいワルツ》を彷彿とさせる瞬間まであります。マルティナイティスが何を意図したのかは、じっくり推測してみる価値がありそうですが、とりあえずは不思議な音楽の世界に遊んでみたいところです。

 ヴィドマンタス・バルトゥリス Vidmantas Bartulis (b.1954) の《レクイエム》 (LMIPCCD006) は、演奏時間約70分の大曲です。スターリン主義の犠牲者を悼むためにリトアニア文化省から作曲を委嘱されました。居住まいを正したくなるような真摯な音楽によって“最後の審判”が語られるので、全体を強い緊張が支配します。それだけに、優しい音楽が顔をのぞかせるエピソードではそれまでの厳しい音楽との美しい対比が浮かび上がり、祈りの心を伝えます。一般的な“レクイエム”とは違うので、人によって受け取り方も違えば、好みも分かれるかもしれません。

 個人的には、室内アンサンブルのための作品を集めた“数珠”にも興味を覚えました (LMIPCCD005)。アルバムタイトルは、女性作曲家オヌテ・ナルブタイテ Onute Narbutaite (b.1956) の作品の題名です。この5曲、どれがどうとは言えませんが、それぞれの作曲家が作り上げた音の世界が素晴らしく豊かです。マルティナイティスの《アルマ・クリスティ (Arma Christi)》やバルトゥリスの弦楽四重奏曲《おお、ダーリン (O, Brangioji/Oh, Darling)》などは、作曲家の機知を感じさせます。こればかりは実際に聴いてもらうしかないかもしれません(このアルバムだけでなく、すべて試聴盤があります)。

 リトアニア音楽情報出版センターは、近々、新たに3枚のCDをリリースすることになっています。西側世界のメンバーになったリトアニアからどんな音楽が聞こえてくるのか、大いに気になります。

(TT)

新譜情報

Bergen Barokk BBR901 
ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー (1616-1667) カンツォーナとカプリッチオ
 トッカータ第1番 イ短調 トッカータ第5番 ホ短調 トッカータ第6番 イ短調
 組曲第5番 (アルマンド クラント サラバンド)
 カンツォーナ第1番−第6番 カプリッチョ第1番−第6
  ハンス・クヌート・スヴェーエン (ハープシコード) [楽器 リュッケルスのレプリカ]

Danica DCD8209/11 3CD's ヴァウン・ホルムボー (1909-1996)
 リベル・カンティコールム Liber Canticorum (歌の本) (全曲)
  第1集 作品54 第2集 作品59 第3集 作品60 第4集 作品61
  第5集 作品96a 第5a集 作品158a 第5b集 作品158b
  カルミナ室内合唱団 ペーター・ハンケ (指揮)
  ヒムニア室内合唱団 フレミング・ヴィネキレ (指揮) 
  コペンハーゲン大学合唱団 リレ・ムコ イェスパー・グローヴェ・ヨーアンセン (指揮)
  カメラータ室内合唱団 ミケール・ボイェセン (指揮)
  ユラン室内合唱団 モーエンス・ダール (指揮) 
  ソケロン合唱団 モーテン・シュルト=イェンセン (指揮)

Euridice EUCD011-99 虹色のアーチ − シグムン・リレビェルカ (1931-) 室内楽作品集
 ヴァレリア組曲 虹色のアーチ (Arco Iris) アイマラ組曲 デュオ・ヌオーヴォ
 クンナ 四重奏曲 永遠の安息は誰にも成就できないだろう
  ミカエル・ロンベルグ (ピアノ)
  トリオ・ヴァレリア
   ラグンヒル・ハンセン (フルート) クリスティン・アルソス・ストラン (チェロ)
   スサンナ・トート・ロンベルグ (ヴァイオリン)
             
Finlandia 3984-29714-2 カール・ニルセン (1865-1931)
 交響曲第3番 ニ短調 FS60 作品27《シンフォニア・エスパンシーヴァ (ひろがりの交響曲)》
 交響曲第6番 FS116《シンフォニア・センプリーチェ(素朴な交響曲)》
  アンナ=クリスティーナ・カーポラ (ソプラノ) ヤーコ・コルテカンガス (バリトン)
  フィンランド放送交響楽団 ユッカ=ペッカ・サラステ (指揮)

Finlandia 3984-29720-2 ペール・ヘンリク・ノルドグレン (1944-)
 交響曲第2番 作品74 (1989) 交響曲第4(1997)
  フィンランド放送交響楽団 ユハ・カンガス (指揮)

Heilo HCD7033 アネモネのように清らかに青く − アイヴィン・グローヴェンの正調オルガン
アイヴィン・グローヴェン (1901-1977) 作曲・編曲
 バラードの調子 ルレマン 水の精 ヴィルファーとシュロクラー 結婚行進曲 グリシラ
 ハボールとシグネ(ハウバートとシーネ) そんな日はこないだろう シヴレの娘たち
 キリスト、すべてに秩序をもたらしたお方 弟子たちはイェルサレムで腰をおろしていた
 はじめての蝶々 夢の詩 ティンからきた男 前奏曲 ヴォルビュ湖 シグリ
 グーロは朝の礼拝に馬ででかけた
  コーレ・ノルストーガ (オルガン) スタイナル・オフスダール (フルート、リコーダー)
  ダグネ・グローヴェン・ミューレン (ヴォーカル)


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CD artwork © Svanholm Singers (Sweden), Lithuanian Music Inormation and Publishing Centre