Newsletter No.24   14 October 2000

 

スウェーデンの自然の美しさと神秘 − ヒゥーゴ・アルヴェーン《山の王》

 夏が過ぎ、秋風を肌に感じる季節になると、どこからともなく《夏至祭の夜明かし (Midsommarvaka)》が聞こえてくるような気がします。スウェーデンの作曲家ヒゥーゴ・アルヴェーン Hugo Alfvén (1872-1960) の3曲の《スウェーデン・ラプソディ》の第1番。スウェーデンのもっとも大切な国民的な祭りのひとつ夏至祭を夜明かしで祝う人々の気分が民謡に基づくラプソディとして綴られています。まもなく紅葉の季節という時にそういった音楽が聞こえてくるというのも、考えてみればおかしな話です。でも、北欧の音楽を好んで聴くようになってから、この季節になるときまってこうなります。どうしてでしょうね。

 これまであまり気にもしませんでしたが、最近ふと思ったのは、この作品の中間部のゆったりしたテンポの音楽のせいではないかということです。始まりの部分の軽快な舞曲と、歓喜が情熱となってほとばしるフィナーレにはさまれた感傷的な旋律の音楽。この音楽には、何かほっとさせるところがあるような気がします。照れくささをかくして言うなら、ふと思いをはせる、いわば心の故郷のような音楽、とでも言いたいところです。

 思い出してみると、アルヴェーンの音楽とはずいぶんと長いつきあいになります。北欧の音楽を知るようになるきっかけとなった英 Gramophone 誌のロバート・レイトン Robert Layton 氏による特集記事で、ステーンハンマル、ラーション、ベールヴァルド、アーレ・メリカントと一緒に紹介されていて、それ以来ということになります。

 ストックホルム群島(アーキペラーゴ)の自然からインスピレーションを受けた第2番と第4番の交響曲《海辺の岩礁から (Från Havsbandet)》− とりわけ第4番の官能的な音楽の印象は強烈です。この曲のさきがけとなった交響詩《岩礁の伝説 (En Skärgårdssägen)》。第1番《夏至祭の夜明かし》につづく《ウップサララプソディ (Uppsalarapsodi)》と《ダーラナラプソディ (Dalarapsodi)》の2曲。《エレジー (Elegi)》が特に有名な、劇音楽《グスタフ二世アードルフ (Gustaf II Adolf)》組曲。E・J・スタグネリウス E. J. Stagnelius の詩「殉教者たち (Martyrerna)」の、母が子供に祈りを教える部分をテクストにしたカンタータ《主の祈り (Herrens bön)》。そして、これらの大曲に負けない魅力をもった数々の歌曲と合唱曲。

 レイトン氏に誘われて北欧の音楽を聴き始め、最初に知った作曲家のひとりがアルヴェーンだったというのは、ずいぶんと幸せなことでした。スウェーデンの人たちは、スウェーデンの自然を身近に感じさせるアルヴェーンの音楽に心の拠りどころのようなものを感じているといいます。同じ思いが、スウェーデンに住んでいなくても伝わってくるのがアルヴェーンの音楽ではないか。その後いろいろな北欧の作曲家たちの音楽に出会ったせいで、アルヴェーンとは − 秋口をのぞいて − 疎遠になりがちでしたが、最近、あらためて彼の音楽をあれこれと聴いているうちに、そう考えるようになりました。

 その思いを特に強くさせたのが、バレエパントマイム《山の王 (Bergakungen)》です。この作品には、作曲者自身が選んだ4曲からなる管弦楽組曲もあり、自作自演の録音があります (Swedish Society Discofil SCD1003) が、今回じっくりと聴いたのは、アルヴェーンがバレエのための音楽として書いた全曲版のほう。Swedish Society Discofil からリリースされた、スティーグ・リューブラント指揮のマルメ交響楽団による1971年の録音 (SCD1106) です。4管編成の管弦楽が要求されるため、この録音にはエクストラとしてヘルシングボリ交響楽団のメンバーも参加しています。

 実際、これは見事なくらいスウェーデンでなければと言いたい作品です。

 「魔法の森の様々な雰囲気の中に自然というものを描く機会を手にしたおかげで、あのバレエの作曲は大いに楽しませてもらった。わたしが描写できた自然 − 夏の装い、太陽が沈みまた昇る、若いふたりが凍死し十字を切るように太陽が昇る寒い冬。舞台美術を担当したエウイーン王子 Prins Eugen は、それを美しく視覚化してくれた。わたしにとっては山の王の広間を描写する絶好の機会だった。思いつくかぎりの手段で自然を描き、同時に人間の心の動きも描いた。この作品を書いた時ほど楽しかったことはない」

 アルヴェーン自身のこの言葉からも自信のほどが感じられます。

 高名な童話画家ヨン・バウエル John Bauer が、ストックホルム・オペラの委嘱に対して魔法にかけられた羊飼いの娘の話のバレエ化を提案し、アルヴェーンに共同作業を依頼をしたのが1915年。1917年の8月までには全3幕のスケッチが出来上がったものの、旅行や他の作品 − 交響曲第4番も含まれます − を書くためにいったん作曲を中断したために、全曲が完成したのは1923年1月です(中断の間に第4番を作曲したことが、《山の王》を完成させるにあたって重要な意味をもっていたことは間違いないでしょう − ヴァーグナーが《ジークフリート》の作曲を中断して《トリスタンとイゾルデ》を書き、《トリスタン》を書くことにより獲得した技術が、中断後の音楽の質をより高度なものにしたことと似ています)。これだけの年月をかけて作曲したアルヴェーンには、自らも語っているとおり、自分の最良のものをこの作品に注ぐことができたとの満足感があったことでしょう。

 それにしてもすごい楽器編成です。フルート、オーボエ、クラリネット、バスーンがそれぞれ4本。6本のホルン、4本のトランペット、3本のトロンボーンとテューバ1本。ハープ2台にチェレスタ、打楽器とウィンドマシーン。そして、それに見合う弦楽群。これはもうリヒァルト・シュトラウスの世界です。アルヴェーンが“やたらゴテゴテと飾り立てる”シュトラウス (吉田秀和氏) のオーケストレーションに大きな影響を受けていたことは、先に挙げた交響曲第4番などの作品でも明らかです。《山の王》のほうは、バレエのための音楽という性格上、交響曲よりもはるかに自由な音楽が書けるため、管弦楽の色調の他にもシュトラウスの影が見え隠れします。シュトラウスが書いてもおかしくないようなホルンの旋律が聞こえてきたときには、おどろいてしまいました。そのうえ、ヴァーグナーやフランス印象主義音楽に影響をうかがわせる音楽や、ダーラナ地方の民謡の借用があるとなれば、ペッテション=ベリエルが“はなはだしく折衷的”と評したのも無理からぬところです。だからといって、そのことでアルヴェーンの音楽の価値が損なわれるものでもないでしょう。アルヴェーンがあらゆる手段で描いたスウェーデンの自然。これが《山の王》の何よりの魅力です。

 視覚の助けなしにこの音楽に親しむには物語のあらすじも必要でしょう。ちょっと長くなりますが紹介させてください。

第1幕 第1場 緑の牧場。背景は木々の茂る山々。夕暮れが近い。

・羊飼いの少年と羊飼いの娘 (Vallpojken och vallflickan)

 遠くから角笛が聞こえる。羊飼いの娘が走りながらやってきて、あとから羊飼いの少年が追ってくる。熱くキスしてから、ふたりは指輪を交換する。娘は小さな十字架を少年の首にかける。ふたたび角笛が響き、ふたりはうっとりと耳をかたむける。娘がはっとして、耳を澄ます。少年がすばやく動いたので、娘は笑い、少年もつられて笑う。ふたりは急いでその場を去っていく。

・入場 (Intåget)

 音楽が近づいてくる。村の若者たちの一団とともに、フィドル弾きと踊り手たちが牧場にやってくる。若者たちが踊りの位置につく。

・最初の踊り (Första dansen)

 おさえた動作のもったいぶった踊りが始まる。羊飼いの少年と娘がゆっくり歩きながら登場。最初の踊りが終わるのを待ってから踊りに加わる。

・第2の踊り (Andra dansen)

 男の子たちは楽しそうに踊る。娘たちは元気よく、でも、しとやかさを忘れることなく踊る。かわりばんこに全員が相手を変えて踊る。一組がステップを間違えたために踊りが乱れ、男の子がひとりひっくり返ってしまう。全員が大笑いし、男の子が立ち上がるとさらに大声に。娘たちは心配になってくる。転んだ子ともうひとりの間でケンカが始まる。年長の若者たちがふたりを引き離そうとし、ほかの者たちも仲裁に入る。ケンカはおさまり、転んだ子も落ち着く。ふたたび全員が集まり、踊りを始める。

・第3の踊り (Tredje dansen)

 羊飼いの少年がキスしたので、羊飼いの娘はとまどい、顔を赤らめながら走り去る。ちょっと考え込んでから、少年は娘の後を追いかける。踊りはまだ続いている。つづく“間奏曲”は、フクロウが鳴き、あたりは奇妙な生き物だらけの魔法の森の中で必死になってお互いを探す羊飼いの少年と娘を描写する。

第1幕 第2場 魔法の森。月明かりが見えない夜。

・フンペが食べ物を探す (Humpe letar mat)

 みにくいトロルのフンペが、食べる物はないかと岩や根の下を探しながら、うろつきまわっている。カエルが一匹跳びだしてきた。フンペは満足げにうなり声をあげ、カエルを捕まえると、噛んで、呑み込んでしまう。もう一度岩の下を探るとヘビが出てきたので、あわてて後ずさりする。フンペは、ヘビをつかみ、頭をもぎとって捨てると、そのまま食べてしまう。嬉しそうにうなり、他に何かないかと探すフンペ。木の幹の間から、そのむこうにある湖の人魚たちが現れる姿が見える。森のトロルに呼びかける人魚たち。一匹のトロルが岩の裂け目から這い出してきて、興味深げにみつめる。人魚たちはもう一度、呼びかける。あたりを見回しながら、もう一匹トロルがやってきて、つづいて三匹、四匹、五匹、六匹、七匹。そうやって仲間全員が群がってくる。若いトロル、年寄りのトロル。トロルの子供たちは嬉しそうに飛び跳ねている。

・人魚とトロルの最初の踊り (Sjöjungfruru och troll, första dansen)

 月の光が射し込み、踊り手たちを照らす。人魚とトロルたちが踊る。

・人魚とトロルの第2の踊り (Sjöjungfruru och troll, andra dansen)

 人魚の数匹と、若く、あまりみにくくないトロルたちが相手を欲しがっているかのような動作で踊る。

・ひとりぼっちの羊飼いの娘 (Vallflickan ensam)

 明け方になり、羊飼いの娘は角笛で若者に呼びかけようとする。が、うまくいかず、やけになって角笛を捨てる。泣きはじめるが、すぐに涙をぬぐい、どうにか落ち着きをとりもどす。バラ色の暖かい太陽が昇る。小鳥の声に耳を澄まし、娘は花とイチゴを摘みはじめる。自分の洞穴にこっそりと逃げ込もうとするフンペ。途中、娘のしぐさを物欲しげに見つめ、機嫌をとろうと花やイチゴを山ほど摘むと、娘の通り道にまき散らす。フンペは、娘が触れた花や葉っぱにくちづけする。日の光が射し込んでくる。指輪を見つめる、娘は物思いに沈むが、小鳥のさえずりを耳にして我に帰る。

・踊り (Dans)

 羊飼いの娘が踊る。

・羊飼いの娘はフンペと出会う (Vallflickan möter Humpe)

 森から出る道を探そうとして、羊飼いの娘はフンペに出くわす。驚いて体がすくんだものの、次には逃げ出す。フンペは急いで娘の後を追いかけ、太陽の光に目がくらみ転んでしまう。ふるえながら立ち上がろうとするが、また倒れ、痛みのあまりうめき声をあげる。羊飼いの娘はフンペが可哀想になり、コケで目を護ってやる。人魚たちまでもフンペを助けようと近づいてくる。水中から身体を出し、空に向かって腕を伸ばすと、とつぜん空一面が雲に覆われる。

・夏の雨 (Sommarregn)

 雨が静かに降りはじめる。湖に落ちた水滴は人魚に変身し、水がはねるように湖を飛び出すとフンペを取り囲んで踊りだす。

第2幕 反対側から見る、同じ森。

・羊飼いの娘とフンペ (Vallflickan och Humpe)

 羊飼いの娘はフンペとうちとけ、フンペの赤い毛を指で梳かしてやる。立ち上がり、娘に礼を言うフンペ。娘は森から出る方角をたずねる。「あっち」とフンペが言うと、娘は喜びの身振りをする。歩きだした娘の前をフンペが道案内として急ぎ足で……と、森の奥に明かりに照らされた門が見える。

・門が開く (Porten öppnar sig)

 ものすごい騒音とともに門が開くと、そこに山の王が立っていて、中に入るよう手招きする。トロルたちが群がって出てくる。フンペは娘をかくそうとするが、山の王はフンペを押しのけて娘をひっつかみ、トロルたちに引き渡してしまう。トロルと死にものぐるいで戦うフンペ。トロルたちは、踊ったり叫んだりしながらフンペをからかい、なんとか娘を自由の身してやろうと必死のフンペをばかにする。トロルたちは娘を金の皿に載せ、頭上にかかげると、恐怖のあまり手をもみしぼむ娘をよそに、門の方へ運んでいく。トロルが群になって山の中に戻り、娘の姿が門の中に消えると、門が閉じる。地面にくずおれたフンペは、悲しみにうちひしがれ、数回しゃがれたうめき声をあげる。フンペは、とつぜん立ち上がると、猛烈な勢いで門まで走っていき、右に左にとうろつきながら握り拳を扉に打ち付け、それからふたたび地面に倒れる。フンペは、山のトロルたちにばかにされたことを思いだして、苦々しさのあまり息がつまったのか、首に両手をあてる。もう一度、別の方法をさがすため怒りにふるえながら立ち上がる。

・羊飼いの少年とフンペ (Vallpojken och Humpe)

 羊飼いの少年が登場。娘を捜しまわり、ヘトヘトだ。フンペが近寄り、拾いあげた角笛で山の方を示す。少年はこわくてふるえる。フンペが事の次第を語っていると、好奇心のつよい好意的なトロルたちがゆっくりとふたりのまわりに集まってくる。少年は言葉につまるが気を静め、ナイフを取り出して山に向かおうとする。だが、フンペが道にはだかり、魔法の力を借りなければ山の王には絶対に対抗できないと語る。そうこうするうちに、森に入っていったいたトロルたちが、おかしなかっこうをした古い木の幹をもって戻ってくる。幹を下におろすと、トロルたちは、何をするのか怪しげな準備をはじめる。木の幹を縦にもちあげて、柱のようにしっかりと地面に打ちつける。

・呪文 (Besvärjelse)

 幹を取り囲み手をかかげると、トロルたちは三度呪文を唱え、まじめくさった不思議な動作の踊りを始める。しだいに幹は一本の剣に形を変えていく。そして、まじないが終わると、剣は黄金色に輝き、刃がキラリと光る。それを取ろうとフンペが駆け寄るが、羊飼いの少年はフンペを押しのけ、勢いよく剣をつかむと、頭上で振り回しながら嬉しそうに叫び声をあげる。少年は山の王の玉座のある方角に向かって頭をさげると、門に向かって突進する。一撃のもとに門を砕き、少年は山の中へ消える。そのすぐあとをフンペが追う。

第3幕 第1場 山の王の宮殿の広間

・山の王の宮殿の広間で (I Bergakungens sal)

 中央の天井高く、黄金のカゴが吊るされ、羊飼いの娘が閉じこめられている。広間にいるのは、山のトロルたちと山の王。あたりがますますうるさくなり、怖くなった娘が激しく動いたために、トロルたちの注意をひいてしまう。

・羊飼いの娘はトロルたちのために踊る (Vallflickan dansar för trollen)

 トロルたちが黙ってカゴをみつめる中、羊飼いの娘は踊りを始める。踊りが終わると、トロルたちが嬉しそうに叫び声をあげる。王の命令でカゴがおろされ、娘がカゴからはい出してくる。自由にしてくれと頼む娘に耳をかさず、王は、荒っぽい身振りでもう一度踊るよう命じる。

・羊飼いの娘は山の王のために踊る (Vallflickan dansar för Bergakungen)

・羊飼いの娘の踊り (Vallflickans dans)

 軽快な動きで踊る、羊飼いの娘の最後の踊り。

・トロルの娘の踊り (Trollflickans dans)

 羊飼いの娘が踊り終わると同時に、長い髪とキラキラ輝く黄金の飾りと宝石で幾分か肌を隠した、裸のトロルの娘が登場。ヘビのような、なまめかしい動きで、羊飼いの娘に気をとられている山の王の注意をひこうとする。トロルの娘は、踊り終えると、羊飼いの娘を心底憎み嫉妬するような、激しい、ヘビに似た仕草をみせる。そして、羊飼いの娘をじっとみつめたままゆっくりと退場する。

・トロルたちの最初の踊り (Trollens första dans)

 一団のトロルが踊りはじめる。他のトロルたちは酒を飲み、ますます酔いがまわってくる。

・トロルたちの第2の踊り (Trollens andra dans)

 上機嫌になった別のトロルの一団が飛び出してくる。トロル全員が乱痴気騒ぎに夢中になっているその時、外側からのものすごい一撃で山が裂け、羊飼いの少年が飛び込んでくる。フンペは仁王立ち。少年が王に剣を向けるなり、よろめくように後ずさりしたかと思うと、トロルたちともども氷と化してしまう。

・解放 (Frihet)

 羊飼いの少年と娘は、魔力から解放され、意気揚々と日の光のほうを向く。ふたりの動作は歓びの踊りにかわっていく。急いで門を出ていくふたり。

第3幕 第2場 夕暮れの松の森。地面に雪はない。

・フンペが羊飼いの娘を連れ去ろうとする (Humpe försöker röva bort vallflickan)

 羊飼いの少年と娘が登場。奸智に長けたフンペがあとにつづく。娘は疲れ切っている。慰めようとする少年。娘は泣きながら倒れ、少年のほうは道を探しに行って姿を消す。フンペは、こっそりと近づくなり、とつぜん突進し、連れ去ろうと娘をつかむ。抵抗する娘。そこに戻ってきた少年は烈火のごとく怒り、剣を振り上げ、フンペの首をつかむと、地面に投げつける。フンペは、おびえて飛び退き、茂みの中に消える。少年が娘のほうを向くと、娘はこわくてからだがすくんでしまっている。娘を両腕でやさしく抱き、なだめるようにからだを撫でると、大きなな岩まで連れていって腰をおろす。少年のひざに頭を預け、腰に腕をまわすと、娘はその場にくずれる。少年は片手を娘の頭にのせ、もう一方の手を剣の上に置く。ふたりはゆっくりと眠りに落ちていく。

・吹雪 (Snöstormen)

 フンペの邪悪な姿がふたたび現れる。怒りと憎しみのしぐさをしながら小刻みに歩き回るが、眠るふたりに近づこうとはしない。すぐに意を決すると、森の神と空の神に向かって祈りをささげる。と、ヒューヒューという風の音が聞こえ、雪のトロル、大気の精、森のトロルが大勢やってくる。全員が眠っているふたりのまわりで踊ると、雪が降りはじめる。はじめは静かに、そして風が激しくなるにしたがって雪の勢いは強まってくる。ついには吹雪になり、羊飼いの少年と娘を表す主題が響くと、頂点に達する。荒れ狂う吹雪のせいで、何も見えない。どんどん暗くなっていき、しまいにはほとんど暗闇の世界。そして風がおさまり、雪もやむと、ほどなくあたりは静まりかえる。

・夜明け (Gryning)

 夜明けが近い。前と同じ情景が、一面雪でおおわれている。羊飼いの少年と娘は、眠りにおちたときと同じ姿勢で座っている。雪でおおわれ、幻想的で不思議なふたりの姿。ふたりの人間のようでもあり、ふたつの大きな岩、あるいは歪んだ形のトウヒの茂みのようにも見える。弱々しい光の大きな太陽が昇る。光の筋が、ゆっくりと、輝く十字架の形に変わっていく。

Prophone Records の許可により、SCD1106 の英語訳テクストをスウェーデン語原文を参照しながら翻訳)

 スウェーデンの自然といっても、決してキンポウゲの花畑に蝶々が舞っているような景色ばかりでないことは、わかっているつもりです。でも、それが北欧の国だけに、どうしても旅行会社のパンフレットのような美しいところばかり思い描いてしまいます。スウェーデンの人たちにとっては、自然は美しいものであると同時に神秘であり、厳しいもののはずです。だからこそ自然に対して畏敬の念を抱き、どう共に生きるかに心を砕かざるをえないということでしょう。そういった自然の多様な姿を約70分の音楽で描いた《山の王》は、アルヴェーンの代表作のひとつと呼ばれるにふさわしい音楽でしょう。

 指揮者としても高名だったアルヴェーンは、1906年以降ほぼ毎年、最も多いとき − 1915年 − には年14回もの演奏会を指揮しています (Phono Suecia の3枚組の自作自演集 (PSCD109) のブックレットで、詳しい内容を知ることができます)。Phono Suecia のアルバムのブックレットの「コンプレックスをもった国民的作曲家」と題した長文のエッセイ のなかでカール=グンナル・オーレーン Carl-Gunnar Åhlén は、自作を指揮する機会に恵まれたアルヴェーンを、ヴァーグナー、R・シュトラウス、マーラー、レーガー、北欧ではエドヴァルド・グリーグ Edvard Grieg とジャン・シベリウス Jean Sibelius、そして現代のクシストフ・ペンデレツキ、ミキス・テオドラキスらとともに挙げ、“音楽史において数えるほどの作曲家にしか与えられなかった特権”としています。オーレーンが示唆するとおり、有名な“アルヴェーン・コンサート”をはじめとし、自作を指揮することが多かったことも、アルヴェーンの音楽がスウェーデンの人たちの身近なものになるために大きな役割を果たしたことは間違いありません。

 このオーレーンのエッセイには、アルヴェーンがエドワード・エルガー Edward Elgar の音楽に興味をもっていたこと、北欧の作曲家のなかではグリーグをもっとも高く評価していたことなどにも言及されており、一読の価値があります。特に、第1楽章だけ先に作曲、初演された交響曲第5番についての記述 − 1942年5月1日の初演の録音もアルバムに収録 − には、第2楽章の作曲にとりかかるにあたり、「インスピレーションの井戸は干上がってしまった」と始まる1951年11月1日の日記も引用されおり、興味をひかれます。「この7年間、わたしは何も作曲してこなかった。あるとすれば、即興で書いたくだらない歌がひとつ。だが、やってみよう。書くことが、みじめさと絶望と死の予感だけだとしても。いや、スコアは暖炉にくべられることになるだろう」人びとから愛される音楽を書いたアルヴェーンも、芸術家につきものの創作に対する苦悩と無縁ではなかったことが明らかです。《夏至祭の夜明かし》があまりに有名になり、アルヴェーンの代名詞のように呼ばれるために、彼の作品は一般に“軽い音楽”と過小評価されがちですが、オーレーンの指摘を待つまでもなく、音楽が表現する自然に対する思慕、あるいは情熱が、聴くたび、より強く感じられてきます。

 《山の王》には、リューブラントの演奏とは別にスウェーデン放送交響楽団をエフゲニー・スヴェトラーノフが指揮した録音 (Musica Sveciae MSCD614) があります。ずっと以前、初めて聴いた時には今ひとつピンとくるものがありませんでしたが、あらためて聴きなおすと、雰囲気豊かな音楽はなかなか魅力的。スウェーデン放送のオーケストラも格段に安定した演奏を聞かせます。表現として特に面白いのは第3幕第2場《フンペが羊飼いの娘を連れ去ろうとする》の、フンペが少年に剣で脅されるときにあげる悲鳴を模すクラリネットの音でしょう。4人のクラリネット奏者はここで、マウスピースを本体からはずし、マウスピースだけで演奏するよう指示されています。作曲者の立会いのもとにリハーサルを行ったレオ・ブレッヒが、「リヒァルト・シュトラウスがあの音を聞いていたら、最初に思いついたのが自分でなかったことで、頭に血が上っただろう」と語ったと伝えられています。リューブラントの演奏でも作曲者が望んだ響きの効果は出ていますが、ややあっさりめ。一方、スウェーデン放送の奏者たちが響かせる音の面白さはちょっと喩えようがありません。どういう具合に演奏したのか、(マウスピースだけなのに)音程があります。

 そうした捨てがたい面もあり、手放せない演奏には違いありませんが、69分43秒のリューブラントに対し78分51秒(いずれも空白を含めて)という演奏時間の違いからも推測できるとおり、全体にテンポが遅く、ややもすると音楽の流れが滞りがち。羊飼いの若者たちの情熱よりも森の神秘のほうにウェイトがおかれてしまって、音楽が必要とする推進力が犠牲になっているきらいがあります。このあたりが好きずきの分かれ目でしょう。率直に言って、はじめて聴いたときに最後まで興味が続かなかったのは、そのせいではないかと思っています。オーケストラの技量に多少目をつぶって、まずリューブラントの録音を。情熱がうまく表現されたときアルヴェーンの音楽が、いかに輝きを増すか。そのことを納得させられる演奏のように思います。

(TT)

Swedish Society Discofil SCD1106 ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960)
 バレエパントマイム《山の王》作品37
  マルメ交響楽団 ノールショーピング交響楽団員 スティーグ・リューブラント(指揮)

参考ディスク

Musica Sveciae MSCD614 ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960) バレエパントマイム《山の王》作品37
  スウェーデン放送交響楽団 エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮)

Phono Suecia PSCD109 3CD's
ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960) 自作自演録音集
 交響曲第4番 ハ短調 作品39《海辺の岩礁から》 交響曲第3番 変ホ長調 作品23 
 スウェーデンラプソディ第3番《ダーラナラプソディ》作品47
 ヘルシングランドの昔の歌 作品4-10
 交響曲第2番 ヘ長調 作品11 − アレグロ(第3楽章)
 森は眠る 作品28-6 夏の香り 作品8-2
 交響曲第5番 作品54(1942年版)(第1楽章のみ)
 スウェーデンラプソディ第1番《夏至祭の夜明かし》作品19  
 劇音楽《グスタフ二世アードルフ》組曲 作品49 − ブライテンフェルトの戦い
 スウェーデン議会設立500年記念カンタータ 作品51 (1935)
 組曲《ソルバッケンのシュネーヴェ》 作品50
エドヴァルド・グリーグ (1843-1907)(アルヴェーン編曲)
 情景音楽《十字軍兵士シーグル》作品22 − 忠誠行進曲
  ビルギット・ニルソン(ソプラノ) エイナル・アンデション(テノール) ヨルディス・シュムベリ(ソプラノ)
  ヨエル・ベリルンド(バリトン) ハンセル=リーナ・ヨーランソン(ヴォーカリーズ)
  オルフェイ・ドレンガル 他 王立ストックホルム・フィルハーモニック管弦楽団
  王立管弦楽団 オスロ・フィルハーモニック管弦楽団
  スウェーデン映画産業管弦楽団 ヒゥーゴ・アルヴェーン(指揮)

 

日本シベリウス協会 アイノラの集い in 広島

 日本シベリウス協会の広島での二度目の“アイノラの集い”の開催が決まりました。11月4日、連休中の土曜日です。

 恒例のミニコンサートはエリザベト音楽大学の小ホール − ザビエルホール − で午後2時から行われます。このコンサートには、協会会員以外の方の参加も大歓迎です。

 曲目は、とりあえず3曲が決まりました。山口県在住の桑原奈緒子さんのフルートで、グンナル・ド・フルメリ Gunnar de Frumerie (1908-1987) の《田園組曲 (Pastoralsvit)》。原曲のフルートとピアノのための版で演奏されます。エルランド・フォン・コック Erland von Koch (b.1910) の一連のモノローグから、テューバのために書かれた第9番。いずれもスウェーデンの曲です。そして、フィンランドのハッリ・ヴェスマン Harri Wessman (b.1949) のテユーバとピアノのためのソナタ。タピオラ合唱団のレパートリーにもなっている児童合唱のための作品《雪の下の流れは力なく》で有名な現代の抒情作家による、美しい曲です。これが日本初演になるのではないでしょうか。

 テューバを吹いてくれるのは、エリザベト音楽大学大学院に在学中の小林宏光君。ピアニストの山根浩志さんとともに、第1回にひきつづき出演をお願いしました。ピアノソロのための曲は、シベリウス、グリーグ、セーヴェルー……弾きたい曲が多いので、山根さんも迷っています。もうしばらくお待ちください。

 ライヴの北欧の音楽をくつろいだ気分で楽しもうという趣旨のコンサートなので、入場料はいただきません。「エッ、これが現代の曲?!」と言ってしまいそうな音楽もあるので、びっくりなさるかもしれません。

 

International Record Review

 この春、イギリスで International Record Review という音楽雑誌が創刊になりました。

 もと Gramophone 誌の副編集長だったハリエット・スミス Harriet Smith を中心に、Gramophone のスタッフだった面々が結集しての事業です。手元の8月号には250以上のディスク評が掲載されていて、ヴィジュアル面をつよく打ちだした最近の Gramophone と好対照の内容になってます。批評を担当する70人を越す執筆者の中は、Gramophone でおなじみだった人たちだけでなく、初めての名前が見受けられます。北欧音楽ファンにとって嬉しいのは、ロバート・レイトン Robert Layton の名があることです。8月号ではセーヴェルーのチェロ協奏曲と交響曲第8番 (BIS CD972) の批評と、“レコードにおけるシベリウスの交響曲第3番”を担当。ペッテション=ベリエルの第3番の交響曲 (cpo 999 632-2) を批評しているマーティン・アンダーソン Martin Anderson − 北欧音楽に対する造詣が深く、北欧とバルト三国を特集した別冊 "Gramophone Explorations 1" (絶版) の編集長 − とともに、懐かしい文章を書いています。

 

新譜情報

BIS CD1058 オスヴァルダス・バラカウスカス (1937-) 作品集
 コンチェルト・ブリオ (Concerto Brio) (1999) (ヴァイオリンと室内管弦楽のための)
 オーボエ、ハープシコードと弦楽のための協奏曲 (1981)
 ルードゥス・モドルム (Ludud modorum) (1972) (チェロと室内管弦楽のための)
 ピアノと弦楽のための小協奏曲 (1966 rev.1994)
  ルネス・マタイティテ (ヴァイオリン) ロムアルダス・スタシュクス (オーボエ)
  セルゲユス・オクルシュコ (ハープシコード) エドムンダス・クリカウスカス (チェロ)
  聖クリストフォロス室内管弦楽団 (ヴィルニュス) マルグリト・カトクス (指揮)

◇バラカウスカス Osvaldas Balakauskas は、現代リトアニアを代表する作曲家のひとり。ヴィルニュス教育大学を卒業後、キエフ音楽院に進み、ボリス・リャトシンスキーについて作曲法を学ぶ。ランズベルギス大統領のもと、1992年から1994年にかけて駐仏(駐伊、駐葡)リトアニア大使を務めたこともある。現在はリトアニア音楽アカデミーの作曲科主任。色彩豊かなテクスチュアに特色があり、“バラカウスカス調性”と呼ばれるコード進行も有名。他にアルトサクソフォーンと弦楽オーケストラのための《ポリロガス》(LMPIC CD004)、《オストロボスニア交響曲》(Finlandia 4509-97892-2) などを録音で聴くことができる。

BIS CD1164 夕べの鐘 − ローランド・ペンティネン、クリスマス・アルバム
JS・バッハ (1685-1750) (ケンプ 編曲) 甘き喜びのうちに (In dulci jubilo)
 いざ来たれ、異教徒の救い主よ (Nun komm der Heiden Heiland)
オリヴィエ・メシアン (1908-1992)
 幼な子イエスにそそぐ20のまなざし (Vingt regards sur l'Enfant Jésus) − ノエル (Noë)
  幼な子イエスのくちづけ (Le baiser de L'Enfant-Jésus)
フェレンツ (フランツ)・リスト (1811-1886) クリスマスツリー (Weihnachtsbaum) (1874-76)
ステファン・ペンティネン (1967-) カリヨン (Carillon) (2000)
マックス・レーガー (1873-1916) マリアの子守歌 (Mariä Wiegenlied) 作品76-52
フェルッチョ・ブゾーニ (1866-1924) クリスマスの夜 (Nuit de Noë)
  ローランド・ペンティネン (ピアノ)

◇スウェーデンのピアニスト、ペンティネン Roland Pöntinen (1963-) が、ちょっとユニークな曲で彩るクリスマス・アルバム。

BIS Northern Lights CD5011 バスーンナティクス (Bassoonatics)
ジョージ・ガーシュウィン (1898-1937) 3つの前奏曲 (1926) アイ・ガット・リズム (I Got Rhythm)
ヨハネス・ブラームス (1833-1897) 8つのワルツ
ジャン・シベリウス (1865-1957) 劇付随音楽《テンペスト (Stormen)》作品1094つの曲
 ソナティナ 嬰ヘ短調 作品67-1
レイナルド・アーン (1874-1947) 3つの絵はがき
ジェレマイア・クラーク (c.1674-1707) マドリガル
WA・モーツァルト (1756-1791) ジグ ト長調 K574
リーロイ・アンダーソン (1908-1975) トランペット吹きの休日
デューク・エリントン (1899-1974) キャラバン
レノン/マッカートニー オー!ダーリン
イーゴリ・ストラヴィンスキー (1882-1971) タンゴ (1941)
マイケル・ウェルシュ (1954-) タンゴ
クルト・ヴァイル (1900-1950) ユーカリ
アストル・ピアソラ (1921-1992) タンゴ
ビル・ダグラス (1944-) アズーレ
  キャリバン・バスーン四重奏団

◇カナダ出身のバスーン四重奏団。バスーンという楽器の表現力を駆使して聞かせる、国も違えば時代も違う音楽の数々。

DG 469 692-2 4CD's チェリビダーケ、スウェーデン放送交響楽団レコーディング
アントニーン・ドヴォルジャーク (1841-1904) チェロ協奏曲 ロ短調 B191 作品104 [1967年11月 ストックホルム] 
セザール・フランク (1822-1890) 交響曲 ニ短調 (1886-88) [1967年12月 エスキルストゥーナ]
パウル・ヒンデミット (1895-1963) 交響曲《画家マティス》(1934) [1970年11月 ハンブルク]
ジャン・シベリウス (1865-1957) 交響曲第2番 ニ長調 作品43 [1965年11月 ストックホルム]
 交響曲第5番 変ホ長調 作品82 [1971年3月 ストックホルム]
リヒァルト・シュトラウス (1864-1949) 交響詩《ドン・ファン》作品20 [1970年11月 ニュルンベルク]
 交響詩《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》作品28 [1971年3月 ストックホルム]
ドミートリー・ショスタコーヴィチ (1906-1975) 交響曲第9番 変ホ長調 作品70 [1970年3月 オレブルー]
  ジャクリーン・デュプレ (チェロ) スウェーデン放送交響楽団 セルジュー・チェリビダーケ (指揮)
   
EMI Classics (Denmark) CDC5 56906-2
カール・ニルセン (1865-1931) ヴァイオリン協奏曲 FS61 作品33
マックス・ブルッフ (1838-1920) ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26
  ニコライ・スナイダー(ヴァイオリン)
  ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団 ローレンス・フォスター(指揮)

EMI Classics CZS5 74188-2 2CD's double-forte カール・ニルセン (1865-1931) 管弦楽曲集
 交響曲第1番 ト短調 FS16 交響曲第2番 ロ短調 FS29《4つの気質》
 交響曲第3番 ニ短調 FS60《シンフォニア・エスパンシーヴァ(広がりの交響曲)》
 交響曲第4番 FS76《消しがたきもの》 パラフレーズ《ボヘミア=デンマーク民謡》FS130
 アンダンテ・ラメントーゾ《若き芸術家の棺の傍らで》FS58
  デンマーク放送交響楽団 ヘルベルト・ブルムステット(指揮) [CDM5 65302-2, CDM5 65415-2]

EMI Classics CZS5 74200-2 2CD's double-forte ジャン・シベリウス (1865-1957)
 交響詩《クッレルヴォ》(クッレルヴォ交響曲)作品7 音詩《大洋の女神》作品73
 《歴史の情景》組曲 第1番 作品25 《カレリア》組曲 作品11 − 間奏曲 行進曲風に
 音詩《タピオラ》作品112 音詩《フィンランディア》作品26
 2つのセレナード 作品69(第1番 ニ長調 第2番 ト短調)
  ライリ・コスティア(メッツォソプラノ) ウスコ・ヴィータネン(バリトン) YL(ヘルシンキ大学男声合唱団) 
  イーダ・ヘンデル(ヴァイオリン) ボーンマス交響楽団 パーヴォ・ベリルンド(指揮)

Finlandia 8573-80771-2 ジャン・シベリウス (1865-1957) ピアノ作品集 第1集
 6つの即興曲 作品5 (1893) ピアノソナタ ヘ長調 作品12 (1893)
 10の小品 作品24 (1893-95, 1900, 1903)
  エーロ・ヘイノネン(ピアノ) [録音 1996年、1998年 ヘルシンキ]

Finlandia 8573-80772-2 ジャン・シベリウス (1865-1957) ピアノ作品集 第2集
 10のバガテル 作品34 (1914-16) 抒情的瞑想 作品40 (1912-14)
 キュッリッキ − 3つの抒情的な小品 作品41 (1904)
 3つのソナティナ 作品67 (1912) 2つのロンディーノ 作品68 (1912)
  エーロ・ヘイノネン(ピアノ) [録音 1995-1998年 ヘルシンキ]
 
Finlandia 8573-80773-2 ジャン・シベリウス (1865-1957) ピアノ作品集 第3集
 10の小品 作品58 (1909) 4つの抒情的な小品 作品74 (1914)
 5つの小品《樹の組曲》 作品75 (1914) 13の小品 作品76 (1911, 1913-14, 1916, 1919)
  エーロ・ヘイノネン(ピアノ) [録音 1996年、1998-1999年 ヘルシンキ]

Finlandia 8573-80774-2 ジャン・シベリウス (1865-1957) ピアノ作品集 第4集
 5つの小品《花の組曲》 作品85 (1916-17) 6つの小品 作品94 (1914?, 1919)
 6つのバガテル 作品97 (1920) 8つの小品 作品99 (1922)
 5つのロマンティックな小品 作品101 (1923) 5つの特徴ある印象 作品103 (1924)
  エーロ・ヘイノネン(ピアノ) [録音 1995年、1997-1999年 ヘルシンキ]

Finlandia 8573-80775-2 ジャン・シベリウス (1865-1957) ピアノ作品集 第5集
 5つのスケッチ 作品114 (1929) 組曲《フロレスタン》(1889) 騎士 (1900) 6つのフィンランド民謡 (1903)
 憧れに (1913) スペイン風に (1913) マンドリナート (1917) フィンランディア 作品26-7 (1899 arr.1900)
 悲しいワルツ 作品44-1 (1904) カッリオ教会の鐘の旋律 作品65b (1912)
  エーロ・ヘイノネン(ピアノ) [録音 1997年、1999-2000年 ヘルシンキ]

Finlandia 8573-80776-2 5CD's mid-price
 ジャン・シベリウス (1865-1957) ピアノ作品集
  エーロ・ヘイノネン(ピアノ)

◇BIS にエングルンド、クーラ、オスカル・メリカントの作品集の録音があるフィンランドのエーロ・ヘイノネン Eero Heinonen (b.1950) による作品集。作品番号つきのすべての曲、管弦楽のための作品をシベリウス自身が編曲した《M. ジャコブ・ド・ジュランのモティーフによるロマンティックな小品》をのぞく、出版された作品のすべてを収録。《フィンランディア》と《悲しいワルツ》は、シベリウスによる編曲版を演奏。作曲者自身のテクストがつけられた(録音では省略)4曲からなる組曲《フロレスタン》(作品番号なし、未出版)が、めずらしい録音。8573-80776-2 は、全5枚をまとめミッド・プライスによるリリース。

FJB CD0001 人生の季節 − フレード・ヨニー・ベルグ (b.1973) 作品集
 ヴァイオリンソナタ第1番 作品50
 音楽のそびえる山脈 作品8 (フルートとピアノのための)
  極地の夜 北極光
 青い次元の人々 作品4a (ピアノのための)
  女王のワルツ 放心状態の頭脳 ヌーディフィケーション 不規則な進路 間奏曲
  告発マニア 巨人を粉砕する 断念
 コルノルの料理本 作品7 (ピアノのための)
  怒り狂う肉 シャムのキャベツ ポップコーンに生まれて 走るフィッシュケーキ
 フルートソナタ第1番 作品40
 人生の季節 作品2 (ピアノのための)
  成長期の人生 繁栄期の人生 絶望の人生 寒気のなかの人生
 別れ 作品20b (フルートとピアノのための)
  トム・オッタル・アンドレアセン (フルート) ホーヴァル・ドーエ・ログンリ (ヴァイオリン)
  ヴォルフガング・プラッゲ (ピアノ)

◇フレード・ヨニー・ベルグ Fred Jonny Berg は、ノルウェー北部の村に生まれた。独学で作曲法を身につけ、交響詩、ピアノ協奏曲、室内楽曲、器楽曲、あるいはエレクトロアクースティック音楽など、幅広いジャンルの作品を書いている。このディスクに収録されたのは1991年から1999年にかけての作品。ほとんど北極圏といえそうな世界の静寂と厳しい自然に囲まれて育ったことが音楽に反映している。ユーモラスな曲、思索的な曲、いずれも親しみやすい作風で、作者のおおらかで暖かい人柄がしのばれる。

 アンドレアセン Tom Ottar Andreassen (b.1963) はノルウェー放送管弦楽団のフルーティストで、ソナタ第1番は彼に献呈された。ヴァイオリンのログンリ Håvard Daae Rognli (b.1969) はライフ・ヨルゲンセン、ビャーネ・フィスクム、リーヴォン・チリンギリアンらに師事、現在はオスロ・フィルハーモニック、ノルウェー室内管弦楽団、トロンハイム・ソロイスツ、イ・フィアミンギなどのオーケストラやアンサンブルで、フリーランスの演奏家として活躍している。ヴァイオリンソナタ第1番は彼に献呈された作品。ヴォルフガング・プラッゲ Wolfgang Plagge (b.1960) は現代ノルウェーを代表する作曲家のひとり。ピアニストとしても活躍し、アイヴィン・グローヴェンのピアノ協奏曲を録音している。

Intim Musik IMCD068 4つの気質
エルネスト・ブロッホ (1880-1959)
 合奏協奏曲第1(1924-25) (弦楽オーケストラとオブリガート・ピアノのための)
 合奏協奏曲第2(1952) (弦楽のための)
パウル・ヒンデミット (1895-1963) 主題と4つの変奏《4つの気質》(1940) (ピアノと弦楽のための)
  ホーヴァル・ギムセ (ピアノ)
  クリスチャンサン室内管弦楽団 ヤン・スティグメル (リーダー)

◇アルバム「ノルウェー・ランデヴー」(Intim Musik IMCD056) で、今日のノルウェー作品の新鮮な演奏を披露したヤン・スティグメル Jan Stigmer (b.1964) 率いるクリスチャンサン室内管弦楽団による、ブロッホ、ヒンデミットという同時代のイデオロギーを共有したドイツの作曲家の作品集。しっとりした情感のこもった緻密な演奏。Naxos にシベリウス・ピアノ作品を継続して録音中のギムセ Håvard Gimse (b.1966) −− ノルウェー国立アカデミーでイルジ・フリンカに師事 −− は、きめの細かい輝かしい音色と軽快なリズム感はいつものとおり。この録音では(濁ることのない)力強いフォルテが、ヒンデミットの音楽の意志力を伝える。第1変奏《憂鬱な》、リーダーのスティグメル Jan Stigmer とのかけあいがスリリング。しばしば“ブロッホはあか抜けしない”とか“ヒンデミットは乾いている”と言われるのは演奏のせいだったせいだった?

Lærdal Musikkproduksjon LMP100 わが故郷の調べ − ソグンとフョルダーネの民謡とフィドルの調べ
ラルダール民謡 ハンマルセーテの夏の牧舎で娘が座っている
シグネ・クリスティーネ・ダーレ・ペールソン (b.1920) 好きな男の子の名はオーラというの
 /パウル・ベルスター (b.1908)  むかしひとりの男の子がいた
アネルス・サーゲン (1829-1922) 結婚の踊り 
クリストフェル・タイゲ (1887-1967) インガ、僕とつきあいたいの?
 /ベンディク・ソーレストラン (1885-1967) かれらはシルドを釣っていた
ペーデル・ロイスム (1802-1870) ウンデルダールの結婚行進曲
オールダール民謡(トム・カールスルード 編曲) フィヨルドを漕いでいこう
ユーナス・オースネス (1891-1969) 母親が歌っている
エドヴァルド・M・リスネ (b.1912)(トム・カールスルード 編曲) わたしの雌牛、ブローコラ
アネルス・サーゲン (1829-1922) 大昔のスプリンガル(跳躍舞曲)
ニルス・フーレ (1926-1986) 子守歌
シュヴェールト・ヘシェヴォル (1901-1984) 槌の舞曲
シーグル・フョスネ (1887-1974)(トム・カールスルード 編曲) ヨフルーがやってくる
カール・エルデゴール (1893-1963) フロースダールスノーシ山で
シーグル・エルデゴール (1893-1962) ハリング
オールダール民謡(トム・カールスルード 編曲) ああ美しい
ボルグヒル・ビュクヴェ (b.1928) 羊の群にかこまれたイェンタ
カール・エルデゴール (1893-1963) スメダーレンで
オラヴ・サンネ (1850-1927) 森の中の12人の男
 /ドルテア・ネッセ (1902-1985) トゥーヴェ、トゥーヴェに
  ホーコン・ホゲモ(ハリングフェレ) ユーディト・ヴェストライム(ヴォーカル)
  トム・カールスルード(アコーディオン)

◇西ノルウェー、ラルダール地方に住む3人の音楽家が、故郷の曲を歌い、演奏したアルバム。プロデュースも担当するアコーディオン奏者トム・カールスルードは、すべての歌が自分たちにとって誇りであり、歌詞に歌われた100年、200年とつづいてきた日常生活のページを心の故郷と呼びたい、と語る。ヴェストライムのヴォーカルは、牛寄せの声を思わせるような張りと透明な響きを併せもち、なかでもアカペラで歌われる曲では、山や谷の爽やかな空気さえ感じられる。

nosag CD053 チャバ・デアーク (b.1932) ウィンドオーケストラのための作品集
 Anémone de Felix (フェリクスのアネモネ) (1993) (シンフォニックバンドのための)
 クラリネット協奏曲 (1992) (クラリネットとウィンドオーケストラのための)
 Farina Pagus (ミョルビュー) (1984) (シンフォニックバンドのための)
 Memento mare (海の形見) (1995) (混声合唱とウィンドバンドのための)
 ウィンドオーケストラのための交響曲 (1995)
  チェル・ファゲーウス (クラリネット) フィルハーモニック合唱団
  王立音楽高等学校ウィンドオーケストラ アンドレーアス・ハンソン (指揮)

◇ハンガリーに生まれ、1957年スウェーデンに移住した作曲家チャバ・デアーク Csaba Deák は、ヒルディング・ルーセンベリ Hilding Rosenberg (1892-1985) の弟子。デアーク自らが語るところによると、ルーセンベリのおおらかな人柄のおかげで、師弟よりも友人同士としてのつながりに発展していったという。子供のころからピアノを習い始めるが、ラジオで聞いたジャズがきっかけで、音楽に対する本当の関心が芽生える。16歳のクリスマスにプレゼントされたクラリネットが、ベニー・グッドマンに憧れたデアークのもっとも大事な楽器となった。ウィンドオーケストラのための作品を集めた新しいアルバムに録音されたクラリネット協奏曲には、スウェーデンに渡って最初に書いたクラリネット小協奏曲以後、デアークが作曲家として展開していく過程で重要な意味をもった色々な要素が −(作曲者によれば)無意識のうちに − 組み込まれている。独奏楽器には即興演奏も要求される、非常に面白い音楽 − クラリネット独奏は、Opus3 にモーツァルトの協奏曲と五重奏曲などの録音がある、ファゲーウス Kjell Fagéus (b.1949)。《メメント・マーレ(海の形見)》は、1994年9月に沈没したエストニア号の犠牲者に捧げられ、“レクイエム”のラテン語の典礼を歌う混声合唱をともなう作品。厳粛な音楽は劇的に高揚し、やがて訪れる静寂とともに失われた命の記憶が墓碑銘に刻まれる。牽引するリズムが面白い、現代の“ディヴェルティメント”《ファーリナ・パーグス》。奇妙な響きと動きを聞かせる《フェリクスのアネモネ》。そして打楽器が活躍し、リズミカルな躍動が踊りの要素を強く感じさせる交響曲。透明感のある響きとダイナミックな低音楽器が強い印象を残す。

Serpent SERCD19 王立スウェーデン陸軍中央バンド − 1999年のベスト・コンサートから
スヴェン・サミュエルソン (1918-1996) 落下傘部隊行進曲 (1956)
フランツ・フォン・スッペ (1819-1895)(ジェームズ・グリーティ 編曲)
 オペレッタ《詩人と農夫》(1846) − 序曲
デイヴィッド・フォスター (20th Cent.)(イェルケル・ユーハンソン 編曲) 冬季オリンピック (1988)
アンデシュ・エークダール (b.1943) ポプリ《ストックホルムの旋律》
ミヒァエル・コルプ/ウーリ・レーファー ハイランド(スコットランド高地地方)の聖堂
ジョン・バリー (b.1933)(ヨハン・デ・メイ 編曲) 007 ジェームズ・ボンド・メドレー
アラム・ハチャトゥリャン (1903-1978)(フランク・ルーセングレン 編曲)
 剣の舞(《ガイーヌ》 (1939-42 rev.1952/57) から)
ジュゼッペ・ヴェルディ (1813-1901) オペラ《アイーダ》(1871) − 凱旋行進曲
グスターヴ・ホルスト (1871-1934)(ジョージ・スミス 編曲?) 組曲《惑星》作品32 − 木星
マッツ・ヤンハーゲン (b.1961) ポルタヴァの戦い
  王立スウェーデン陸軍中央バンド マッツ・ヤンハーゲン(指揮)   [ライヴ録音]

◇王立スウェーデン陸軍中央バンドが、1999年のいくつかのコンサートからのベストを選んだアルバム。デイヴィッド・フォスターの《冬季オリンピック》は、1988年カルガリー冬季オリンピック大会のテーマ音楽。《ジェームズ・ボンド 007 セレクション》の編曲は、トールキンの物語による交響曲《指輪物語》を書いたヨハン・デ・メイ。

Serpent SERCD21 スウェーデン空軍バンド − 大空に向かって
イェルケル・ユーハンソン (b.1967) 行進曲《大空に向かって》
パーシー・フレッチャー (1879-1932)(フィリップ・スパーク 編曲)
 叙事交響曲 − 英雄行進曲(第3楽章)
フィリップ・スパーク (b.1951) 山の歌 (1987) パントマイム
ウィリアム・ウォルトン (1902-1983) 《スピットファイア》前奏曲とフーガ (1942 rev.1966/70)
パーシー・グレインジャー (1882-1961) 徒歩旅行の調べ (1905 rev.1940)
ジョン・ウィリアムズ (b.1932)(ポール・ラヴェンダー 編曲) 《遙かなる大地へ》交響組曲 (1992)
サミュエル・バーバー (1910-1981) コマンドー・マーチ (1943)
グレン・ミラー (1904-1944)(ジェフ・ヘスト 編曲)
 真珠の首飾り ムーンライト・セレナーデ イン・ザ・ムード
ヒゥーゴ・ミュルテリウス (1892-1977) 演奏会マーチ《大佐》 (1944)
ハンス・フェリクス・フーサデル (1897-1964) 行進曲《落下傘部隊リヒトホーフェン》 (1935)
ヘルゲ・ダムベリ (1885-1961) スウェーデン空軍行進曲 (1934)
イェルケル・ユーハンソン (b.1967) 行方不明兵士に捧ぐ
  スウェーデン空軍バンド イェルケル・ユーハンソン(指揮)

◇名手ぞろい、アンサンブルの優秀なウィンドバンド。演奏を意識することなく、そのまま音楽に浸ることができる。イギリスのウィンド・ミュージック作曲家フィリップ・スパークの《山の歌》は、ブラスバンドのための原曲を日本からの依頼により作曲者自身がウィンドバンド用に編曲した版による演奏。オーストリア・アルプスの村の日曜日の気分を描写する田園詩。《パントマイム》は、ユーフォニアム・ソロに抒情的なカンタービレと名人芸を求められる作品。ソロイストのアンデシュ・ルンディンが見事に要求に応える。ケルトの情緒とともに、ダイナミックな音楽を書いたジョン・ウィリアムズのフィルムスコア《遙かなる大地へ》による交響組曲。ウィンドバンドのための編曲と演奏は、70ミリ・フィルムの画面を彷彿とさせる。指揮者イェルケル・ユーハンソンが作曲した2曲は、自作自演ならでは。吹奏楽だからと過小評価しないほうがいいと思わせるアルバム。

Simax PSC1194 クリスチャン・シンディング (1856-1941) 歌曲集 第1
 「子供の不思議な角笛 (Des Knaben Wunderhorn)」から 作品15
  憐れみの聖母マリア (Maria Gnadenmutter) ローズマリー (Rosmarin)
  ふたりの姉妹が死んだ (Es starben zwei Schwestern)
  物乞いの女が歌う (Die Bettelfrau singt) 子守歌 (Wiegenlied) フーガ (Fuge)
 「アンタルとアブラのアラビアの話」から (Sange af den Arabiske fortælling Antar og Abla)
  戦いの讃歌 (Stridssang) 愛の歌 (Kjærlighetssang)
 歌曲集《狂人の歌 (Galemandssange)》作品22
  恋人を埋葬した (Jeg havde begravet min elskov) 探して、探して (Jeg går og leder)
  五月の夜 (Majnat) 荒れ野の秋 (Høst på heien) おおみそか (Nytårsnat)
 歌曲集《アネモネ (Symra)》作品28
  歌を歌ってくれ (Kom med visor) ついていたのは (Heppen var den) アネモネ (Symra)
  やってみたけれど (Eg hee freistat) 古き峰 (Dei gamle fjelli) 心 (Hugen) 欲望 (Saknad)
  愛の詩 (Elskhugs-kvæde) 人生 (Livet)
  誰もかれもを喜ばせることは (Til lags aat alle kam ingen gjera)
  たくさんの意見が耳に (Ein fær no høyra so mange griller)
  折れた枝がある (D'er brotne kvistar)
 歌曲集《アネモネU (Symra II)》作品75 − 第3曲 春の日 (Vaardagen)
  第4曲 老ハムレット (Gamle Grendi) 第5曲 秋の歌 (Haustvisa)
 歌曲集《家路へ (Heimfahrt)》作品80 − 第4曲 インガ (Inga)
  第5曲 いま太陽がしずむ (No dalar Soli) 第7曲 夕べ (Kvælden)
 歌曲集《新しい愛にとらえられ (Der neubestellte Irrgarten der Liebe)》作品85
  夜に (An die Nacht) 緑の奇跡 (Das grünen Wunder) ライラック (Flieder)
  肌寒さ (Kälte) 一筋の日の光の歌 (Das Lied vom bißchen Sonnenschein)
 子守歌 (A Cradle Song) 作品126-1 別れ (Farval) 作品130-2
  ペール・ヴォレスタード (バリトン) シーグムン・イェルセット (ピアノ)

ノルウェーのバリトン、ペール・ヴォレスタード Per Vollestad (b.1959) による、シンディング歌曲集の第1集。シンディングの現存する最初期の作品「アンタルとアブラのアラビアの話」からの詩に曲をつけた2曲は、初演時クリススチャニア(現在のオスロ)の聴衆と批評家を驚かせたといわれる。荒々しい《戦いの讃歌 (Stridssang) 》と飾り気のない《愛の歌 (Kjærlighestssang)》は、《春のさざめき (Frühlingsrauschen)》よりも、変奏曲《宿命 (Fatum)》のシンディングの世界を予感させる。神経衰弱に陥った時期にヴィルヘルム・クラーグ Vilhelm Krag の詩に作曲した《狂人の歌 (Galemandssange)》は1893年に出版され、グリーグ以後の新しい歌曲として熱狂的な支持を受けた。みずからもドラマティックな歌曲を書いたテューレ・ラングストレムも、“思春期の憂愁との決別をこれほど優しく、美しく、純粋な曲に作り上げた作品はスカンディナヴィア歌曲には見当たらない”と称賛している。

 イーヴァル・オーセンの詩に作曲した《アネモネ (Symra)》は、ノルウェー的、民謡的な色彩の強い曲集。グリーグを思わせる瞬間がある。ビーアバウムのドイツ語の詩に作曲した《新しい愛にとらえられ (Der neubestellete Irrgarten der Liebe)》は、シンディングがドイツ語をテクストにした際にみられる、ヴァーグナーやR・シュトラウスら後期ロマン派ドイツ歌曲の影響が強い。愛の歓びが美しい旋律とともに歌われる。

 管弦楽伴奏によるグリーグ歌曲集 (Simax PSC1076) などの録音で明るい歌声を聞かせてくれたヴォレスタードは、このディスクでは声の美しさを抑え、音楽の内面の表現を優先させた歌唱を聞かせる。演奏家として活躍するかたわら、現在ノルウェー国立音楽アカデミーにシンディング歌曲の歌唱をテーマとして博士課程に在籍中。このシリーズは論文の一端として企画され、つづく第2集と第3集で完結の予定。

Swedish Society Discofil SCD1101 アルヴェーン・エディション 第1集
ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960) 交響曲第1番 ヘ短調 作品7
 劇音楽《グスタフ二世アードルフ》組曲 作品49
  幻影 間奏曲 皇帝フェルディナントの宮廷のチャペルで サラバンド ブーレ メヌエット
  悲歌 (エレジー) ブライテンフェルトの戦い
  スウェーデン放送交響楽団 スティーグ・ヴェステルベリ (指揮)

◇「アルヴェーン・エディション」の第1集。第1番の交響曲は SCD1001 (1972年8月15-17日録音)、《グスタフ二世アードルフ》組曲は SCD1013 (1967年3月29日、4月2日録音) としてリリースされていた音源のオリジナルのマスターテープによるリマスター。

 雄々しい序奏で始まる勇壮な第1楽章グラーヴェ。アンダンテの第2楽章は、アルヴェーンがスウェーデンの国民的ロマンティシズムを代表する作曲家と呼ばれるようになる予感を強く感じさせる抒情が美しい。第3楽章アレグロ・モルト・スケルツァンドの軽快な味わい、そして鮮やかな舞曲を聴かせる終楽章アレグロ、マ・ノン・トロッポ。1897年の初演時からおおむね好意的に受け入れられたが、1903年から1904年にかけてオーケストレーションの改訂が行われた。アルヴェーンの交響曲の中でももっとも人気の高い1作に数えられる。

 《グスタフ二世アードルフ》は、三十年戦争の最中の1632年11月6日、リュッツェンの戦場で戦死した国王グスタフ二世アードルフを記念するため1932年に上演が企画された史劇「われら」のために書かれた劇音楽を、アルヴェーン自身が組曲にまとめたもの。第1曲《幻影》の中間部の金管楽器のコラール、3本のバスーンによるコミカルな《ブーレ》、そしてもっとも有名なのが第7曲《エレジー(悲歌)》。リュツェンの戦いの前夜、アードルフが若き日の恋に思いを馳せる場面の音楽。アルヴェーンが書いたもっとも美しい音楽のひとつとして、しばしば単独で演奏される。終曲の《ブライテンフェルトの戦い》は、3曲のスウェーデン・ラプソディだけでアルヴェーンを知っている人たちを驚かせるに充分の迫力ある音楽。《エレジー》はペトリ・サカリ、ネーメ・ヤルヴィらの録音があるが、組曲全曲を聴けるヴェステルベリの録音の再発売が待たれていた。

 「アルヴェーン・エディション」全5集は、各集に交響曲を1曲ずつ振り分け、それぞれに1曲から2曲の管弦楽作品を組み合わせることは決まっているが、具体的なカップリング曲は未定。交響曲第4番は、発売がのびのびになっているニルス・グレヴィリウス指揮ストックホルム・フィルハーモニックの録音。第5番は、《グスタフ二世アードルフ》とカップリングになっていたヴェステルベリ指揮による第1楽章だけの版が収録されるが、スウェーデン放送に残っている、同じヴェステルベリによる4楽章版の録音がCD化される可能性もある。その他、管弦楽作品以外の録音を集めてエディションを継続させる計画も検討中。

 

新着CD

Phaedra 292 004 北国の歌 (Songs from the North) − 北欧ロマンティック歌曲集
エミール・シェーグレン (1853-1918)
 7つのスペイン歌曲集 作品6 − 響け、響け、わたしのタンブラン (Klinge, klinge, mein Pandero!)
  わたしの長い髪の陰で (In dem Schatten meiner Locken)
 ユリウス・ヴォルフの「タンホイザー」の6つの歌 (Sechs Lieder aus Julius Wolffs Tannhäuser)》 作品12
  − 君は問いたげな眼差しでわたしを (Du schaust mich an)
    おそらく一年、私は (Jahrlang möcht ich) どうやって救おうか (Wie soll ich's bergen)
ジャン・シベリウス (1865-1957) 葦よそよげ (Säv, säv, susa) 作品36-4
 逢い引きから帰ってきた娘 (Flickan kom ifrån sin älsklings möte) 作品37-5
 黒いばら (Svarta rosor) 作品36-1 夢だったのか (Var det en dröm?) 作品37-4 ユバル (Jubal) 作品35-1
ユルヨ・キルピネン (1892-1959) 
 歌曲集《愛の歌 (Lieder der Liebe)》作品60
  わが心はうつろに (Mein Herz ist leer) 夜になった (Es ist Nacht) われらの愛 (Unsere Liebe)
  われらは暗がりに腰を下ろし (Wir sitzen im Dunkeln) 愛の定め (Schicksal der Liebe)
エドヴァルド・グリーグ (1843-1907) ある夢 (En drøm) 作品48-6 白鳥 (En svane) 作品25-2
 春 (Våren) 作品33-2 はじめての桜草 (Med en Vandlilje) 作品25-4 君を愛す (Jeg elsker dig) 作品5-3
トイヴォ・クーラ (1883-1918) 羊飼いたち (Paimenet) 作品29a-3
 月夜の舟旅 (Purjein kuutamolla) 作品31a-1 エピローグ (Epiloi) 作品6-2
テューレ・ラングストレム (1884-1947) 新月の下の娘 (Flickan under nymånen)
 夜への祈り (Bön till natten) 戦の女神 (Sköldmön)
  ヒレヴィ・マッティンペルト (ソプラノ) マッティ・ヒルヴォネン (ピアノ) [録音 1993年]

◇エサ=ペッカ・サロネンが指揮したラーションの《偽装の神》の録音など、オペラと歌曲の両面で国際的に活躍中のソプラノ歌手、マッティンペルト Hillevi Martinpelto (b.1958) が、1993年に録音した北欧歌曲集。スカンディナヴィア出身の歌手の例にもれず、透明な響きの声が最大の魅力。その声で歌われる一曲一曲に愛情のこもった歌を聴くことができる。シベリウスの《葦よそよげ》、グリーグの《ある夢》、ラングストレムの《新月の下の娘》と《夜への祈り》……。メロディラインの自然な流れが、曲の美しさを素直に引き出す。マッティ・ヒルヴォネン Matti Hirvonen は、シベリウス・アカデミーとストックホルム国立音楽大学でピアノを学んだ後、歌曲伴奏のスペシャリスト、ジェフリー・パーソンズに師事した。セーデシュトレム、ハーゲゴードらと共演の他、室内楽や現代音楽のピアニストとして活躍中。ふたりの共演による練れた表現により、作品の奥深い世界がとらえられている。北欧以外の国のレコードレーベルが制作した北欧歌曲集の先駆的存在のディスク。

 

ワールドミュージック新譜

Folkemusikksenteret (Norway) BFCD1010 ヴェネフランマ − クヌート・ミュランのハリングフェレ
 ポル・ヨイトナツドレングズ・ミンネ ラグンヒルド・ハガル シンドロエン 他
  クヌート・ミュラン(ハリングフェレ)

◇1932年生まれのクヌート・ミュランが、スペルマンたちの作品を演奏した曲集。

Heilo (Norway) HCD7153 ストリュンの花 − ノルウェーの民俗音楽
 ストリュンの花 フィエルジェンテン ストリュニンゲン ヒルセン・ティル・イェッレ 他
  ボルスタード・アンサンブル

◇ノルウェー、オーレスンで生涯をすごした音楽家ペール・ボルスタード Per Bolstad (1875-1967) の作品集。フィドル、アコーディオン、ギターなど7人で構成されるアンサンブルによる、ワルツ、ポルカなど舞曲を中心としたさわやかな演奏。

Heilo (Norway) HCD7160 岩山の中のフィドル − ノルウェー、ビェルクライム地方の民俗音楽
 デイ・フィナステ・ジェンテネ マスルカ コメ・ノ・ミネ・ボドナネ・スモ 他
  ヴィボ・スペレマンスラグ

◇南西ノルウェーのフィヨルドの地に位置するビェルクライム地方のフィドル中心の器楽曲と男女の独唱による声楽曲を収録。フィドル・グループ、ヴィボ・スペレマンスラグは、創立者イーヴァル・フグレスタードによる作品をレパートリーの中心とする。

Sylartum Folkemusikk (Norway) SYLCD7 はるかな地の子供たち − ノルウェーの歌
 フリアルヴィセ ヴァレソンゲン ヴィル・ドゥ・アンガ・デン・ヴェーグ 他
  エリアス・アクセルセン(ヴォーカル) フルダ・ヨハンセン(ヴォーカル)

◇1947年生まれの男性歌手アクセルセンによる13曲と、1918年生まれの女性歌手ヨハンセンが1961年に録音した8曲のノルウェー民謡を収録。ギターの弾き語りとアカペラで伝統の曲がしみじみと歌われる。


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© Nordic Sound Hiroshima

Original synopsis of "Bergakungen" in Swedish © Prophone (Sweden) by kind permission

CD artwork © Prophone (Sweden), Phaedra (Belgium)