Newsletter No.37   15 November 2001

 

わたしの気に入り − 弦楽オーケストラのための北欧愛好曲集

 いつか話したように、わたしが初めてほんとうの意味で北欧音楽を聴くようになったきっかけを作ってくれたのは、スウェーデンのラーシュ=エーリク・ラーション Lars-Erik Larsson (1908-1986) とフィンランドのアーレ・メリカント Aarre Merikanto (1893-1958) とパーヴォ・ヘイニネン Paavo Heininen (b.1938) でした。曲はラーションがヴァイオリン協奏曲、メリカントが《管弦楽のための10の小品》、ヘイニネンが《Musique d'été (夏の音楽)》。いずれも Gramophone 誌のロバート・レイトン Robert Leyton 氏の記事で紹介されていたCDです。

 この3曲が北欧音楽に触れるきっかけ。しかも、シベリウスを1枚ももっていないのにアーレ・メリカントやヘイニネンの音楽が入ったCDを買ったというのも、一般的なことではないかもしれません。でも、音楽にかぎらず、何をきっかけに新しいものに出会うかは人によって違っていてもいいような気がします。

 メリカントとヘイニネンの曲が入っていたディスク (Finlandia FACD365) −− すでにカタログから外れていますが、"Meet the Composer" シリーズで聴くことができます −− では、ユッカ=ペッカ・サラステ Jukka-Pekka Saraste (b.1956) とエサ=ペッカ・サロネン Esa-Pekka Salonen (b.1958) が育てたアヴァンティ!室内管弦楽団 Avanti! Kamariorkesteri が演奏しています (ちょっと自信がありませんが、バーミンガム市交響楽団の音楽監督になったサカリ・オラモ Sakari Oramo (b.1965) が、このときコンサートマスターだったように覚えています)。アヴァンティ!の責任者と話をする機会があり、そのときに、初めて買ったフィンランド音楽のCDがこれだったという話をすると、大喜びすると同時に、「かわった人ね」 と言いたげな表情が見えたような気がしましたが、気のせいでしょう。

 これは余談。

 もちろん、シベリウスやグリーグの音楽をまったく聴いていなかったということではありません。それほど興味をひかれなかったにすぎません。ただ、日本シベリウス協会の会員に名を連ねているくらいですから、シベリウスの音楽が肌に合わなかったということでないのは確かです。今にして思うと、聴いた演奏が合わなかった。そう考えるべきでしょう。

 たとえば、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。(あえて名前は出しませんが) 航空機事故で亡くなった女流の奏者の録音と、ロシア生まれの −− ロシア生まれだったかどうか、関心がないので、確かではありません −− アメリカ人ヴァイオリニストによる録音で聴きました。まだLPのころです。いずれも評価の高い演奏だとされていました。でも、何というか、ただ、「イヤな音楽だな」 という印象を受けただけ。音楽の内面性を表現することと、演奏者が高血圧気味だったり、聴き手に過度の緊張を強いたりすることは別次元の話ではないかという気がします。

 この曲とはよほど巡り合わせがよくなかったのか、しばらくして買った、アジア系のヴァイオリニストがフィンランドの指揮者と共演したディスクもだめでした。Gramophone 誌の批評で “高貴な (noble)” という形容を使って評価されていたために興味をもちましたが、演奏、録音の音質ともに何かが変でした。この演奏がその年の Graphonone Award の協奏曲部門の最優秀ディスクに選ばれた理由が、いまだに理解できません。シベリウスのヴァイオリン協奏曲が気に入ったのは、ペッカ・クーシスト Pekka Kuusisto (b.1976) の録音 (Ondine ODE878-2) を聴いてからのこと。内面と対話する作曲家の姿勢、さわやかな抒情、そしてフィンランドの独特の風土色。この曲にこれほどの多様な魅力があることを知ったのは、このフィンランドの若手ヴァイオリニストのおかげです。ずっと後にライヴで彼の演奏に接して録音から受けた印象もいっそう強くなり、シベリウスの作品の中でも一二を争うくらいに好きな曲になってしまいました。

 グリーグの《ペール・ギュント》組曲の 《朝の気分》 については、愉快な −− といっていいのか? −− 話を聞きました。小学校だか中学校だかで、毎朝、始業前にこの音楽が校内放送で流れたのだとか。“朝” だからという単純な発想でこの曲を流すことが教育の現場で誇れることかどうかは別として、それだけなら問題はなさそうです。でも、グリーグの音楽につづいて、「今日もしっかり勉強しましょう」 という風なアナウンスが入るとなると、話は変わります。「今日もやるぞ!」 と意気込んでいる小学生、あるいは中学生が全国にどのくらいの数いるものか。まして、そりの合わない教師がニタニタ笑ってでもいたりすると、「坊主憎けりゃ…」 となっても無理はありません。この曲、事業者金融のテレビCMのバックにも流されたことがあります。よりによってグリーグの曲を選んだCMディレクターは、メフィストフェレスに魂を売ったファウスト……。こういったことを知るにつけ、グリーグに同情することしきりです。

 グリーグといえば、ピアノ協奏曲も、北欧音楽のファンの間でさえ嫌う人が多い作品のひとつです。これも、理由は演奏にあります。有名曲だという理由から日本でもライヴで演奏される機会が多く、これが問題です。高度の技巧を要求されることもあって、指の動きに自信のあるピアニストがやたらと弾きたがります。その結果、「音はしてたけど、何だったの、あれは?」 という演奏の多いこと。響きのセンスがあれば救われますが、きわめてまれです。まして、ろくにさらってもいない演奏を聴かされたりすると、聴きながら落ち込んでしまいます。実際に、去年ありました。美人のピアニスト。ピアノは顔で弾くものではない。つくづく思いました。

 いつものこととはいえ、話が変な方に行ってしまいました。

 グリーグの協奏曲を聴くのであれば、まずノルウェーのピアニストによる演奏。ノルウェーの指揮者とオーケストラの共演も望みたいところです。理由のひとつは、第3楽章のリズム。あの楽章でグリーグが意図した本当のリズムは、楽譜に書ききれていないのではないか。というより、音符で書けるような単純なリズムではないのではないかという気がするからです。ところが、ノルウェーのピアニストの演奏で聴くと、ぎくしゃくしたリズムとともに、ごくごく自然な音楽が聞こえてきます。こうなると、グリーグがもっていたのと同じリズム感が彼らのからだにもしみついているとしか思えません。「これを外国の演奏家が真似すると、ケチャップを使ったナポリタン (スパゲッティ) になりかねない」 と言った人がいます。まったく同感。

 もうひとつの理由は、ピアノと管弦楽の響きです。とくに第3楽章の最後のところは、ひとつの間違いが大間違いに。ハリウッドでさえ赤面しそうな金ピカの演奏を聴いたことがあります。この曲くらい国際的に有名になると、作曲家の手だけでなく、ノルウェーをすら離れてしまったとも言えるので、何があってもふしぎはありません。でも、これではちょっと……。

 そういうことがあるので、グリーグの協奏曲を敬遠する北欧ファンにも同情したくなります。そして、「アンスネスかブラトリあたりの演奏で聴いてみたら」 などと、余計なお節介もしたくなる……。アウドゥン・カイセルの録音がLPでしか手に入らないことも残念です。ノルウェーのピアニスト以外では、イギリスのピアニスト、クリフォード・カーゾン Clifford Curzon がノルウェーの指揮者オイヴィン・フィエルスター Øivind Fjerstad (1903-1983) 指揮のロンドン交響楽団と共演した録音 (Decca 448599-2) も素敵です(ピアノの録音が不得手な Decca にしては、ピアノの響きに艶があります)。このピアニストは、風貌がアルフレート・ブレンデルに似ていなくもありませんが、音楽はまったく違います。繊細さこそあれ、いささかも神経質だと感じさせないのが、カーゾンの音楽の美徳でしょう。

 結局、音楽というのはきわめて個人的な体験だということ。長々と話しながら、こういった単純なところに落ち着くのは、わたしの悪趣味。よくご存じのとおりです。

 ここまで辛抱づよくつき合っていただき、わたしのことを 「ヤなヤツ」 などと軽蔑なさらず、北欧音楽でも聴いてみようかという気になった方がいらしたら、これから、折に触れて、わたしのお気に入りのディスクを紹介してみようかなと思っています。そういう方がいらっしゃると仮定して、まず今回、こんなディスクはいかがでしょうか。

 「弦楽オーケストラのための北欧愛好曲集 (Nordic Favourites for String Orchestra)(Intim Musik IMCD069)。いくつかある同じ趣向の曲集のなかで、個人的にもっとも気に入っている1枚です。“抒情だけが北欧ではない” というのがわたしの持論ですが、“抒情あっての北欧” ということも事実です。

 バロックの雰囲気と北欧の明るい抒情が幸せに融合した、グリーグの《ホルベルグ (ホルベア) の時代から (Fra Holbergs Tid)》。グリーグの親友、スヴェンセンが弦楽オーケストラ用に編曲し、美しく、感傷的な雰囲気が愛されている《セーテルの娘の日曜日 (Sæterjentens søndag)》 (オーレ・ブル 作曲) と《去年、山で山羊の番をしていた (I fjol gjætt' e gjeitinn)》(ノルウェー民謡)。シベリウスが自作のピアノ曲2曲をロマンティックな弦楽オーケストラ作品に改作した《即興曲 (抒情的アンダンテ) (Impromptus)》。オスロ・フィルハーモニックの指揮者でもあった、グリューネル=ヘッゲ Grüner-Hegge の《悲しい旋律 (Elegisk melodi)》と、ラーションの《田園組曲 (Pastoralsvit)》からの《ロマンス》は、どちらも曲名が示すとおりの音楽。そして最後が、スウェーデンのアルヴェーンの《羊飼いの娘の踊り (Vallflickans dans)》。バレエパントマイム《山の王 (Bergakungen)》に入っている軽快な音楽です。

 抒情とロマンティシズムが際だつ選曲に思えますが、実際に通して聴くと、むしろ北欧音楽のもっている世界の奥の深さを感じます。無視できないのが、ノルウェーの団体、クリスチャンサン室内管弦楽団 Kristiansand Kammerorkester の演奏です。18人の弦楽器奏者による自発性にあふれたアンサンブルのおかげで、それぞれの曲の特色がはっきりと描きわけられています。Intim Musik の録音の透明でダイナミックな音質がそれを活かしていることについては、言うまでもありません。恥ずかしさを承知で言います。グリーグの 《最後の春 (Våren/Spring)》 を聴きながら、ひとり、泣いてください。

 このディスクには、同じ北欧でもデンマークとアイスランドの作品が含まれていません。それは別のディスクで、ということにしましょう。

Intim Musik IMCD069 弦楽オーケストラのための北欧愛好曲集
エドヴァルド・グリーグ (1843-1907)
 組曲《ホルベルグ (ホルベア) の時代から (Fra Holbergs Tid)》 作品40
 2つの悲しい旋律 (Två elegiske melodier) 作品34
  心の傷み (Hjertesår) (傷つけられしもの) 最後の春 (Våren) (春)
オーレ・ブル (1810-1880) (ヨハン・スヴェンセン 編曲)
 セーテルの娘の日曜日 (Sæterjentens søndag)
ジャン・シベリウス (1685-1957) ロマンス (Romance) ハ長調 作品42
 即興曲 (Impromptu) (抒情的アンダンテ) (Andante lirico) 作品5-5/6
ヨハン・スヴェンセン (1840-1911)
 2つのスウェーデン民謡 作品27 − すべて天空のもとに (Alt unter himlens fäste)
 去年、山で山羊の番をしていた (I fjol gjætt' e gjeitinn) 作品31 (ノルウェー民謡)
オッド・グリューネル=ヘッゲ (1899-1973) 悲しい旋律 (Elegisk melodi)
ラーシュ=エーリク・ラーション (1908-1986) 田園組曲 (Pastoralsvit) 作品19 − ロマンス (Romance)
ヒゥーゴ・アルヴェーン (1872-1960) 羊飼いの娘の踊り (Vallflickans dans)
  クリスチャンサン室内管弦楽団 ヤン・スティグメル (リーダー)

 

Simax のカタログ

 ノルウェーのレコード会社 Grappa のクラシカル 2001-2002年版カタログが出版になりました。SimaxPro Musica、そして新たに傘下に入った、ノルウェー作曲家協会の AuroraHemera のタイトルがすべて収められています。A5変形サイズで、索引を含めて210ページのオールカラー。いかにも北欧らしく、センスのいい仕上がりです。既発売ディスクからピックアップした音源を収録したサンプラーCD が1枚ついています。今回からは有償頒布になり、税別価格 \600 の予定です。

 

「北欧のことば」

 以前、東海大学出版会から「北欧の音楽」という本が出版されたことがあります。イギリス教育省の専任音楽視学官ジョン・ホートン氏 John Horton"Scandinavian Music: A Short History" の大束省三氏による翻訳書 (1971年) です。絶版になって久しく、再版にならないのが残念なくらい、きわめて意義のある出版でした。

 東海大学が北欧の研究に力を注いでいることは、あるいはそれほど知られていないかもしれません。しかし、1967年には北欧文学科が創設され、スウェーデン社会研究所という組織も社団法人として同じ年に設立されています。北欧文学科は、現在では名称も北欧学科となり、21世紀の社会のモデルとなるかもしれない“北欧”の研究の日本における中心的存在となったと考えられます。

 その関係もあって、東海大学出版会からは北欧に関する興味深い著作が多数出版されています。ホートン氏の著書の翻訳も “北欧文化シリーズ” の一冊として出版されました。現在も、「アイスランドのサガ中篇集」、「ヴァイキングと都市」といった作品から、いっぷう変わった北欧人論「われら北欧人」まで。かなりの数の著作が現在でも入手できます。

 この東海大学出版会が新たに “双書・北欧” というシリーズをスタートさせました。出版を企画したのは東海大学の北欧研究会。学部学科を越えた有志の集まり。その活動と研究の成果を発表する場のひとつが “双書・北欧” です。その第1巻として、今回、「北欧のことば」が出版されました (アラン・カーカー Allan Karker、ビルギッタ・リンドグレン Birgitta Lindgren、ストーレ・レーラン Ståle Løland 編、山下泰文、森信嘉、福井信子、吉田欣吾 訳)。北欧言語事務局 (Nordisk språksekretariat) が出版した "Nordens språk" を東海大学文学部北欧学科の教授、助教授、講師陣が翻訳したものです。

 『北欧の言語と社会』、『北欧における言語理解度と言語協力』、『デンマーク語』、『ノルウェー語』、『スウェーデン語』、『フィンランドのスウェーデン語』、『フィンランド語』、『スウェーデンのフィンランド語』、『サーミ語』、『アイスランド語』、『フェーロー語』、『グリーンランド語』の全12章。各章のタイトルが示すとおり、北欧のすべての言語の歴史と社会的背景の概説と、単語や用法を具体的に挙げての説明、そして各言語の関連などが包括的に解説されています。

 『序文』でも触れられているように、原著は北欧各国の大学レベルの教育機関でも教科書として使われており、一般的な読み物とは言えないかもしれません。しかし、北欧の文化を知るうえでは、きわめて貴重な著作と考えられます。まして北欧の言語への関心が少しでもあれば、この本は、まさに興味の尽きない一冊となるはず。そういうわたしも、時間をみつけては、大いに楽しみながら読んでいるひとりです (文中のカナ表記は翻訳本に準拠)。

 定価は \3,000 (税別)。一般の書店で入手できます。

 

新譜情報 − Classical & Contemporary

BIS CD1060 カミーユ・サン=サーンス (1835-1921) 管弦楽作品集
 ヴァイオリン協奏曲第2番 ハ長調 作品58 管弦楽のための序曲《スパルタクス》
 ミューズと詩人 作品132 (ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための)
  タピオラ・シンフォニエッタ ジャン=ジャック・カントロフ (ヴァイオリン、指揮)
  トゥールレイフ・テデーエン (チェロ) トゥオマス・オッリラ (指揮)

BIS CD1128 北欧のトロンボーン協奏曲
クリスチャン・リンドベリ (1958-)
 庭隅のトリカブト (Mandrake in the Corner) (1998-2000) (トロンボーンと管弦楽のための)

アクセル・ヨーアンセン (1881-1947) 組曲 (1926) (トロンボーンと管弦楽のための)
エギル・ホーヴラン (1924-) トロンボーン協奏曲 作品76 (1972)
ヤン・サンドストレム (1954-) Cantos de la Mancha (ラマンチャの歌) (1994-95)
  クリスチャン・リンドベリ (トロンボーン) シンガポール交響楽団 ラン・シュイ (指揮)

◇アクセル・ヨーアンセン Axel Jørgensen はヴィオラ奏者で作曲家。1919年からは王立デンマーク管弦楽団に在籍し、ブレウニング=バケ弦楽四重奏団のメンバーでもあった。1926年の《組曲》は代表作のひとつ。ノルウェーのエギル・ホーヴラン Egil Hovland は、ネオクラシカルな作風による協奏曲に楽しめる作品が多く、真摯な教会音楽も数多い。トロンボーン協奏曲は、独奏楽器の特性を活かした曲との評価が高い。チェレスタ、ヴィブラフォーン、鐘などの打楽器が音楽に色彩と活気を与える。ペール・ブレーヴィグ Per Brevig とアレクサンドル・ドミトリーエフ指揮スタヴァンゲル交響楽団 (Aurora ACD5004) につぐ録音。

BIS CD1145 ペーテリス・ヴァスクス (1946-) 合唱作品集
 チェスワフ・ミウォシュの3つの詩 (Three Poems by Czeslaw Milosz) (1994)
  窓 (Window) こんなにも小さい (So little) 遭遇 (Encounter)
 ゼムガーレ (Zemgale) (1988) 母なる太陽 (Mate Saule) (1975)
 マドリガル (Madrigals) (1975) 連祷 (Litene) (1993)
 Dona nobis pacem (われらに平安をあたえたまえ) (1998) (混声合唱とオルガンのための)
  ラトヴィア放送合唱団 シグヴァルズ・クラヴァ (指揮) カスパルス・プトニンス (指揮)
  アイヴァルス・カレイシュ (オルガン)

◇「できるかぎり自分に正直な気持で作曲するわたしにとって、わたしの音楽が演奏されるというのは、嬉しいことだ。わたしは人々のために作曲するのであって、机の引き出しのためではない。それは神からの贈り物であり、わたしはそれを謙虚にうけとる」。ラトヴィアの作曲家ペーテリス・ヴァスクス Peteris Vasks はこう語り、彼の音楽のもつ精神的な広がりが、ここに集約されている。《連祷》はヒリアード・アンサンブルの委嘱作品。

BIS CD1153 ヨーロッパ − サクソフォーン・アンサンブルのための作品集
イアニス・クセナキス (1922-2001) XAS (1987) (サクソフォーン四重奏のための)
クシシュトフ・ペンデレツキ (1933-) (ハリー=キンロス・ホワイト 編曲)
 クラリネットと弦楽三重奏のための四重奏曲 (1993) (サクソフォーン四重奏のための)
パウル・ヒンデミット (1895-1963)  2つのアルトサクソフォーンのための小協奏曲 (1933)
ペーア・ネアゴー (1932-)
 Roads to Ixtlan (イクストランへの道) (1992-93) (サクソフォーン四重奏のための3楽章)
クリストバル・アルフテル (ハルフテル) (1930-)
 フラクタル協奏曲 (Fractal - Concierto a Cuatro) (1990)
  ラッシャー・サクソフォーン四重奏団

BIS CD1154 キャバレー・ソング
ウィリアム・ボルコム (1938-)
 キャバレー・ソング (1977-83) − ピアノのむこうに (Over the piano)
  毛皮 (毛皮職人マーリー) (Fur (Murray the Furrier))
  彼は給仕係にチップをやった (He tipped the waiter) 待ってる (Waitin')
  ブラック・マックスの歌 (Song of Black Max) アモール (Amor)
  生きるところ (Places to live) 歯みがきのとき (Toothbrush time)
  びっくりして! (Surprise!) 俳優 (The Actor)
  ああカーテンを閉めて (Oh Close the Curtain) ジョージ (George)
クルト・ヴァイル (1900-1950)
 ナンナの歌 (Nanna's Lied) ヨウカリ (Youkali) セーヌ河の嘆き (Complainte de la Seine)
 あなたを愛していない (Je ne t'aime pas)
フレデリック・ホランダー (フリートリヒ・ホレンダー) (1896-1976)
 一度だけあなたのカルメンにして (Laß mich einmal deine Carmen sein)
 ブロンド女にあったらご用心 (Nimm dich in acht vor blonden Frau'n)
 頭のてっぺんから足のさきまで愛ひとすじに (Ich bin von Kopf bis Fuß auf Liebe engestellt)
 窃盗癖の女 (Die Kleptomanin)
ベンジャミン・ブリテン (1913-1976)
 4つのキャバレー・ソング
  恋の真実を語ってちょうだい (Tell me the truth about love)
  葬儀のブルース (Funeral Blues) ジョニー (Johnny) カリプソ (Calypso)
  マレーナ・エルンマン (メッツォソプラノ) ベンクト=オーケ・ルンディン (ピアノ)

◇キャバレーソングは、ロッテ・レーニャ、マーレーネ・ディートリヒ、ウーテ・レンパー、マリアンネ・フェイスフル、テレーサ・ストラータスなど、個性的な女優、歌手によって歌いつがれてきた。風刺あり悲しみの表現あり。このユニークなジャンルの歌に新たに挑戦するのは、マレーナ・エルンマン Malena Ernman (1970-)。“素朴 − 現代スウェーデン歌曲集”(KMH-CD12) で、自然な歌を聴かせてくれたばかりのスウェーデンのメッツォソプラノ歌手。ヘンデルのオペラ《ジュリオ・チェザーレ (ユリウス・カエサル)》のセクストゥス、ロッシーニの《セヴィリャの理髪師》のロジーナ、そしてスウェーデン国立劇場で上演されたミュージカル《キャバレー》のサリー・ボウルズ (ボブ・フォッシーによる映画化ではライザ・ミネリが演じた役) など幅広い役柄をこなしているだけに興味がもてる。歌曲伴奏に定評のあるベンクト=オーケ・ルンディン Bengt-Åke Lundin (1963-) が共演。

BIS CD1158 ギャレット・フィッシャー (1970-) 聖トマス・モア受難曲 (The Passion of St. Thomas More)
  アンナ・ヴィンテン=ユーハンセン (ソプラノ) クリスティーナ・ホーグマン (ソプラノ)
  ウッレ・ペーション (バリトン) ターニャ・カー (コールアングレ) スヴェン・オーベリ (ギター)
  ギャレット・フィッシャー (インディアン・ハーモニウム) ヨーラン・モンソン (打楽器)

◇イギリスの哲学者、人文学者トマス・モア Thomas More (1478-1535) −− アン・ブリン Anne Boleyn (1507-1536) と結婚するために王妃キャサリン Catherine (1485-1536) と離婚しようとした国王ヘンリー八世 Henry VIII (1491-1547)(在位 1509-1947) に反対し、処刑された、「ユートピア (Utopia)」の著者 −− の生涯と受難を、現代アメリカの作曲家フィッシャー Garrett Fisher がオペラ仕立てにした作品。耳なじみの旋律が装いをかえて音楽を彩る。ヴィンテン=ユーハンセン Anna Winten-Johansen、クリスティーナ・ホーグマン Christina Högman、ウッレ・ペーション Olle Persson はいずれもスウェーデンの歌手。

BIS CD1246 ミッコ・ヘイニオ (1948-)
 教会オペラ《騎士と龍 (Riddaren och Draken)(1999/2000)
  クット・アッペルグレン (バスバリトン) ヘレナ・ユントゥネン (ソプラノ)
  ルーニ・ブラッタベアグ (バス) シャルロット・ヘレカント (メッツォソプラノ)
  アキ・アラミッコテルヴォ (テノール) サリ・ヌードクヴィスト (アルト)
  ミア・フフタ (ソプラノ) トゥルク・オペラ合唱団
  トゥルク・フィルハーモニック管弦楽団 ウルフ・セーデルブルム (指揮)

◇《騎士と龍 (Riddaren och draken/The Knight and the Dragon)》は、フィンランドの古都トゥルク (スウェーデン語名、オーボ) の大聖堂建立700年を記念して、トゥルク市、トゥルク大学、トゥルク・カーリナ教区連合教会、トゥルク・オペラ協会から委嘱された作品。2000年11月9日に、トゥルク大聖堂で初演された。ソプラノ (2人)、メッツォソプラノ、アルト、テノール、バスバリトン、バスの独唱者と、それぞれ2組の女声合唱と男声合唱、そして管弦楽とオルガンという大編成のために書かれている。聖ゲオルギーの伝説に題材をとり、ブー・カーペラン Bo Carpelan のスウェーデン語による台本がテクスト。前奏曲、間奏曲と2つの幕から構成される。

 ミッコ・ヘイニオ Mikko Heiniö は、ノルドグレン Pehr Henrik Nordgren (1944-)、カレヴィ・アホ Kalevi Aho (1949-) とともにフィンランド・ポストモダンを代表する作曲家のひとり。シベリウス・アカデミーでヨーナス・コッコネン Joonas Kokkonen (1921-1996) に師事し、1970年代前半は、伝統的手法と自由調性による音楽を書いた。1975年から1977年までベルリンの芸術大学に留学し、ヴィトルト・サロネク Witold Szalonek のもとで作曲を学び、和声と音楽素材を重視する作風に移行していく。十二音技法やミニマリズムを限定的に用いたり、ロマンティックな旋律とネオクラシカルなリズムを現代技法に融合させるなど、技法そのものにこだわることなく、作品の求めに応じて柔軟な作風を採用する。混声合唱、管弦楽とシンセサイザーのための《風の絵 (Wind Pictures)》が、これまでの代表的な声楽作品。

Fuga FUGA9007 ジャン・シベリウス (1865-1957) 歌曲集
 5つの歌 作品37 − 夢だったのか 逢い引きから帰ってきた娘
 6つの歌 作品36 − 黒いばら 葦よそよげ
 7つの歌 作品17 − あれ以来、私はたずねたことはなかった
  迷い 夕べに 川面に漂う木
 7つの歌 作品13 − 春はいそぎ過ぎゆく 若い狩人
 5つの歌 作品38 − 海辺のバルコニー
 シェイクスピアの「十二夜」による2つの歌 作品60
 泳げ、青い鴨 (1899) 6つの歌 作品60 − 乙女が野原で歌っている
 劇付随音楽《ペレアスとメリザンド》作品46 − 三人の盲目の姉妹 
 交響詩《クッレルヴォ》作品7 − クッレルヴォの嘆き 
  ヨルマ・ヒュンニネン (バリトン) ラルフ・ゴトーニ (ピアノ) セッポ・シーララ (ギター)

◇フィンランドのバリトン歌手ヨルマ・ヒュンニネン Jorma Hynninen (b.1941) は、2002年サヴォンリンナ・フェスティヴァルで上演されるアーレ・メリカントのオペラ《ユハ (Juha)》の新演出による舞台を最後に、現役引退が予定されている。期間中の7月7日にはフェアウェルコンサートも開催。このディスクは、1975年、シベリウス・アカデミー・コンサートホールで録音され、Fuga からリリースされたLPCD化したもの。ヒュンニネンの最初のアルバム発売の25周年とFuga 設立40周年を記念して2000年にリリースされた。《若い狩人》は時間の制約のためオリジナルLPには収録されていなかった。

Fuga FUGA 9122 ヤルマル・フレイ 1903年-1909年録音集成
アルマス・ヤルネフェルト (1869-1958) 人生に寄せる夢想家の歌
ヤーコブ・アクセル・ユーセフソン (1818-1880) 暖かさと明るさ
エドゥアルト・ヴァイデンブリュック (1884-1919)
 わが祖国 秘めごと かつて老いた王がいた 真昼の静けさ
クリスチャン・シンディング (1856-1941) 多くの夢
ジャン・シベリウス (1865-1957) おとめが野原で歌っている 作品50-3
フレードリク・パーシウス (1809-1891)、オスカル・メリカント (1868-1924)
グンナル・ヴェンネルベリ (1817-1901)、スウェーデン民謡、フィンランド民謡、
A・ダルゴムィジスキー (1813-1869)G・ヴェルディ (1813-1901)
A・ルビンシテイン (1829-1894)、ハンス・ヘルマン (1870-1931)R・シューマン (1810-1856)
F・リスト (1811-1886)F・シューベルト (1797-1828) ほかの曲
  ヤルマル・フレイ (バス) ピアノ伴奏

◇バス歌手ヤルマル・フレイ Hjalmar Frey (1856-1913) は、フィンランドオペラ史に名を残す第1世代の歌い手。1885年から1905年の20年間にわたり、サンクトペテルブルグのマリインスキー劇場で活躍し、《スペードの女王》の初演にも参加した。帰国後も、1910年にトゥルクで行われた、セリム・パルムグレン Selim Palmgren (1878-1951) のオペラ《ダニエル・ユート (Daniel Hjort)》の 初演の舞台に立つなど活躍したが、1913年に不遇のうちに没した。フィンランド放送 (YLE)EMIColumbia などの音源による集成。

Fuga FUGA 9123 ピア・ラヴェンナ 1924年-1929年録音集成
イルマリ・ハンニカイネン (1892-1955) 子守歌 作品3-2
フィンランド民謡 空は青く白い雲が
スウェーデン民謡 ぼくが17歳のとき 明るい星
オスカル・メリカント (1868-1924) 太陽が輝くとき 作品24-1 わたしは生きている 作品71-1
エルッキ・メラルティン (1875-1937) Mademoiselle Rococo (ロココ嬢)
作品97-3
アレクサンドル・アリャビエフ (1787-1851) ナイチンゲール (1826) (2種)
G・ドニゼッティ (1797-1848)G・ロッシーニ (1792-1868)、エヴァリスト (エヴァ)・デラクワ (1860-1930)
G・ヴェルディ (1813-1901)、アレッサンドロ・パリゾッティ (1835-1913)C・グノー (1818-1893) ほかの曲
  ピア・ラヴェンナ(ソプラノ)
  ベルリン国立オペラ管弦楽団員 マンフレート・グルリット (指揮) ほか

◇コロラトゥーラソプラノ、ピア・ラヴェンナ Pia Ravenna (1894-1964) は、国際的な舞台で大きく活躍することはなかったが、“フィンランドのナイチンゲール” と呼ばれ、38年にわたる歌手生活の間に800回を超すコンサートとオペラに出演した。

Fylkingen FYCD1012 1:2:3
ステーン・オーロフ・ヘルストレム (1956-)
 Equal (対等) (1997) Prequel (前編) (1996) Sequal (続編) (1995)
パウリーナ・スンディン (1970-)
 Crisálida (クリサリダ) (1996) Li Shin Chuen (A formed fist/鍛えられた拳) (1998)
ペーテル・ルンデーン (1955-)
 Big Bang on Whispering Waters (ささやく水の上のビッグバン) (1995) Noises (雑音) (1994)
  エレクトロ=アクースティック作品

EMS (Institute for Electro-acoustic Music in Sweden/スウェーデン・エレクトロ=アクースティック音楽研究所) を中心に活動する作曲家たちの作品集。ステーン=オーロフ・ヘルストレム Sten-Olof Hellström は、スウェーデンで作曲法を学んだのちイギリスに留学。University of East Anglia のデニス・スモーリー Dennis Smalley のもとで研究をつづけ、作曲法の修士号を取得した。スウェーデン王立テクノロジー研究所の研究プロジェクトに携わりながら、ロンドンの City University の博士課程を履修中。パウリーナ・スンディン Paulina Sundin は、ウプサラ大学を卒業後、ストックホルムの王立音楽大学で作曲法を学んだ。ヴィデオ、コンピュータアニメーション、ダンスなど、他分野のアーティストと共同しての製作も多い。現在は、EMS で作曲法のクラスも受け持つ。ペーテル・ルンデーン Peter Lundén は、EMS のロルフ・エンストレム Rolf Enström (b.1951) とヤン・W・モッテンソン Jan W. Morthenson (b.1940) に師事してエレクトロ=アクースティック音楽を研究した。ICEM (International Confederation of Electroacoustic Music/国際エレクトロ=アクースティク音楽連盟) の会長、EMS の理事会メンバー。

Intim Musik IMCD070 夕べの音楽 (Abendmusik) − ディズリク・ブクステフーデ (c.1637-1707)
 第1旋法のマニフィカト BuxWV203 (オルガン独奏のための)
 「太鼓をたたけ、音楽家たちよ (Schlagt, Kunstler! Die Pauken)BuxWV122
 「モーゼが荒れ野でヘビを上げたように (Sicut Moses exaltavit serpentem) BuxWV97
 「おお主よ、心からわれ汝を愛す (Herzlich lieb hab ich dich, o Herr) BuxWV41
 「イエス、わが喜びの主よ (Jesu meiner Freuden Meister) BuxWV61
 「すべての民よ、手を打ち鳴らせ (Froocket mit Händen aller Völker) BuxWV29
  マリア・シェオハーネ (ソプラノ) アンナ・ユーブラント (ソプラノ) アンナ・エイナション (アルト)
  ユーハン・リンデロート (テノール) ヤン・H・ボリエソン (バス)
  ヨーテボリ・バロックアーツアンサンブル マグヌス・シェルソン (オルガン、指揮)

◇デンマークの作曲家ブクステフーデ Didrich (Dietrich) Buxtehude がリューベックで行った "Abendmusiken (夕べの音楽)" を再現したディスク。ヨーテボリのオールグリューテ新教会 Örgryte Nya Kyrka の北ドイツ様式バロックオルガンが使われています。

Intim Musik IMCD073 モーランダ教会のオルガン
ヤン・ピーテルソン・スヴェーリンク (1562-1621) いと高きにある神のみに栄光あれ
 幻想曲第5番 《六音音階 (Hexachord)》 4つの変奏曲 (More Palatino)
マッティアス・ヴェックマン (1616-1674)
 Toccata vel Praeludium Primi Toni (第一旋法の前奏曲によるトッカータ)
 カンツォン ハ長調 トッカータ ホ短調
ヨハン・カスパル・ケルル (1627-1693) パッサカリア ニ短調
ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー (1616-1667)
 カプリッチョ リチェルカーレ トッカータ ハ長調
ゲオルク・ベーム (1661-1730) ああ、いかにはかなく、いかにむなしき (8つの変奏曲)
  ハンス・ダーヴィドソン (オルガン)

◇ウールスト (Orust) 島 (スウェーデン) のモーランダ教会 Morlanda-kyrka のオルガンによる録音。1604年に建造。1715年にエリアス・ヴィッティーグ Elias Wittig の手で修復され、1999年から2001年にかけて全面的な修復作業が行われた。筐体、パイプ、アクション、キーデスクなどは保存状態がよく、17世紀バロック期のオルガンを現代に伝える歴史的オルガンのひとつ。ハンス・ダーヴィドソン Hans Davidson は、ヨーテボリ大学のオルガンとオルガン演奏の助教授。

Kontrapunkt 32323 CEF・ヴァイセ (1774-1842) ピアノソナタ集 第2
 ソナタ ホ長調 (1799) ソナタ 変ロ長調 (1799) 幻想曲 ニ長調 (1790)
 アレグリ・ディ・ブラヴーラ (1792-93 pub.1796) − 第1曲 第2曲 第4
  モーテン・モーエンセン (ピアノ)

CEF・ヴァイセ Christoph Ernst Friedrich Weyse は、ドイツから移住したデンマークの作曲家。コペンハーゲンに旅した15歳のときから、JAP・シュルス Johann Abraham Peter Schutz (1747-1800 ドイツ − デンマーク) 宅に滞在して音楽教育を受ける。コペンハーゲンの音楽サークルでモーツァルトの協奏曲を弾いたことをきっかけに、ピアニスト、ハープシコード奏者としての才能を認められるようになる。声楽曲と舞台音楽を中心に作曲活動を行った。1795年から1799年にかけて7曲の交響曲を作曲 (初稿)。それに先立つ《アレグリ・ディ・ブラヴーラ (Allegri di bravura)》(1792-93) も、シュルスとライカートの手により、この時期に出版された。1804年に作曲された《4つの小品》とともに、デンマークのピアノ作品のなかでも高く評価されている曲集。ハイドンらのウィーン古典主義音楽の影響を受けながらロマンティシズムという新しい方向をめざしていることが指摘されている。ピアノソナタは全部で8曲。CPE・バッハ、ハイドン、クレメンティ、モーツァルトらの影響が強いものの、耳なじみのいい旋律の主題の魅力が際だっており、当時の人々から愛された。

 モーテン・モーエンセン Morten Mogensen (b.1965) は、デンマークの比較的若い世代を代表するピアニストのひとり。コペンハーゲンのデンマーク王立音楽アカデミーでアンカ・ブリーメ Anker Blyme (b.1925) に師事した。Kontrapunkt に録音したPE・ランゲ=ミュラー Peter Erasmus Lange-Müller (1850-1926) のピアノ作品全集 (32228, 32248, 32258) は批評家と音楽ファンの間で高い評価を受けた。コパンハーゲン三重奏団のメンバーとしても Kontrapunkt に多数の録音がある。

 このディスクは、第1集 (Kontrapunkt 32284) につづくもの (2000年9月録音)。ヴァイセのソナタは、このほかに、デンマークのピアニスト、トマス・トロンイェム Thomas Trondhjem (b.1954) が後半の4曲を録音している (dacapo 8.224140)

SFZ Records SFZ1002 Frets of Prey
ヤン・トルフ (1949-) Frets of Prey (1995) (ギターと木管五重奏のための)
アンデシュ・ニルソン (1954-)
 セレナード (2000) (チェロと木管五重奏のための室内協奏曲)
オーリヤン・サンドレッド (1964-)
 Danquah Circle (ダンカ・サークル) (1997) (ピアノと木管五重奏のための)
スヴェン=ダーヴィド・サンドストレム (1942-)
 見よ、島々を (Se, öarna) (1998) (メッツォソプラノと木管五重奏のための)
  マッツ・ベリストレム (ギター) オーラ・カールソン (チェロ)
  ルーヴェ・デルヴィンゲル (ピアノ) マリアンネ・エクレーヴ (メッツォソプラノ)
  オステルスンド木管五重奏団 スタファン・ラーション (指揮)

◇木管五重奏に管以外の独奏楽器を加えた音楽を集めたアルバム。

 フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、バスーンというアンサンブルによる音楽が盛んになったのは19世紀の後期だとされる。テレマンの《食卓の音楽》に代表される "Harmonienmusik" ではそれぞれの楽器が2本ずつ使われており、その後、モーツァルトやベートーヴェンの作品にみられるようなピアノ五重奏 −− オーボエ、クラリネット、ホルン、バスーンそしてピアノ −− の時代を経て、19世紀初頭になって、イタリアのジョヴァンニ・ジュゼッペ・カンビーニやチェコのアントン・ライヒァによる、管楽器だけの五重奏曲が作曲されるようになる。

 以後、この楽器編成は、シェーンベルク、カール・ニルセン、ヒンデミット、ミヨー、イベール、バーバー、カーターら、多くの作曲家たちに作曲の機会を与えてきた。スウェーデンでは、ラーシュ=エーリク・ラーション Lars-Erik Larsson (1908-1986)、ヨン・フェーンストレム John Fernström (1897-1961)、ヤン・カールステット Jan Carlstedt (1926-)、アンデシュ・エリーアソン Anders Eliasson (1947-) をはじめとし、100人を超す作曲家たちが木管五重奏曲を書いたといわれる。

 しかし、木管五重奏に管楽器以外の楽器ひとつをプラスした作品となると、プーランクのピアノ六重奏曲やルーセルのディヴェルティメントなどをのぞくと、あまり例がない。その意味でも、このディスクの最初に演奏されるヤン・トルフの曲は、貴重な存在。1995年、委嘱したマッツ・ベリストレムがスンドスヴァル木管五重奏団 Sundsvall Blåsarkvintett と共演して初演した作品。イェムトランド Jämtland を中心に1995年から活動を開始したオステルスンド木管五重奏団 Östersunds Blåsarkvintett は、さらに3人のスウェーデン作曲家に作曲を依頼。トルフの作品と3つの新作を加えてできあがったのが、このディスク。

 ヤン・トルフ Jan Tolf (1949-) の《Frets of Prey》は、パナマの熱帯雨林にいる “タップダンスをするイモ虫” についての新聞記事がヒントになった。その種のイモ虫が植物の葉の上でダンスをすると、その振動がアリの群を引き寄せる。アリは、イモ虫が分泌するタンパク質グルコースをごちそうになり、そのおかえしに、イモ虫を捕食性のキバチ (frets of prey/rovgetingar) から守ってくれるという。タイトルは "fret" (いらだち) と "prey" (獲物、捕食) から思いつくことばのあそび。ポップスとジャズのグループでギターを弾き、映画と劇場のための音楽を作曲するヤン・トルフの遊び心が出た音楽。《Tap dance (タップダンス)》、《Entice (誘い)》、《Secrete (分泌)》、《Menace (脅威)》の4つの部分から構成される。マッツ・ベリストレム Mats Bergström (b.1961) は、1983年のウィグモアホール (ロンドン) でのデビューコンサート以来、独奏者、アンサンブル奏者として活躍する、スウェーデンを代表するギター奏者のひとり。

 アンデシュ・ニルソン Anders Nilsson (1954-) の《セレナード (Serenade)》は、チェロと木管五重奏のための協奏曲として意図された。恋人の窓辺で歌うセレナードではなく、“夕べのメランコリー” といった趣の音楽。オーラ・カールソン Ola Karlsson (b.1952) は、スウェーデン放送交響楽団のソロ奏者。王立音楽大学の助教授、室内楽奏者、独奏者としても活躍をしている。

 《Danquah Circle (ダンカ・サークル)》は、モーツァルトの作品をプログラムに含むコンサートのために委嘱された。複雑になったバロック後期の音楽への反動として生まれたウィーン古典音楽にならい、複雑な20世紀音楽に対する反動として作曲したと、作曲者のオーリヤン・サンドレッド Örjan Sandred (b.1964) は言う。タイトルは、彼が曲を完成させた、ガーナのアッカにある環状交差路 (ロータリー) のひとつからとられた。アッカには道路標識がなく、いくつかある環状交差路によって自分のいる位置を確認することになるという。この曲を聴く人が自分のいる位置がわかるように、というのが作曲者の発想。ルーヴェ・デルヴィンゲル Love Derwinger (b.1966) は、スウェーデンを代表するピアニストのひとり。室内楽奏者としての活動、とりわけ現代作品の演奏を積極的に行っている。グリーグのピアノ協奏曲の原典版録音 (BIS CD619) 以下、録音活動も活発。

 スヴェン=ダーヴィド・サンドストレム Sven-David Sandström (1942-) の《見よ、島々を (Se, öarna)》のテクストは、スウェーデンの詩人カタリーナ・フロステンソン Katarina Frostenson の詩集「島々への道 (Vägen till öarna/The way to the Islands)」(1996) からとられた。写真家のジャン=クロード・アルノー Jean-Claude Arnault とのスウェーデンのベリスラーゲン (Bergslagen) 地方への旅を描写したものといわれる。メッツォソプラノ歌手マリアンネ・エクレーヴ Marianne Eklöf は、コンサートとオペラの両方で活躍する。レパートリーは、《サロメ》 (ヘローディアス)、《ヴォツェック》 (マルグレート)、《ローエングリン》 (オルトルート)、《ドン・カルロ》 (エボーリ姫) などの重要な脇役や、《カルメン》のタイトルロールなど。サンドストレムの作品では、《大ミサ曲 (The High Mass)(Caprice CAP22036) に参加した。

Sterling CDS1043-2 スウェーデン・ロマンティシズム時代のバレエ
イーヴァル・ハルストレム (1826-1901)/コンラード・ヌードクヴィスト (1840-1901)
 バレエ《スコットランドでの冒険 (Ett äfventyr i Skottland)(1875)
  (アンデシュ・ヴィークルンド 校訂)
イーヴァル・ハルストレム (1826-1901)
 バレエ田園詩《ある夢 (En dröm)(1871) (アンデシュ・ヴィークルンド 校訂)
  マルメ・オペラ管弦楽団 ミカエル・バートシュ (指揮)

バレエマスターのオギュスト (アウゴスト)・ブルノンヴィル August Bournonville (1805-1979) が去った後、ストックホルムオペラのバレエ団は、オペラ公演に参加する以外、ほとんど公演の機会に恵まれなかった。しかし、1870年、ブルノンヴィルの訓練を受けて主役ダンサーのひとりだったテオドール・マルクル Theodor Marckhl がバレエマスターに就任してからは、1886年までの間に25の作品を上演するなど、独自の公演を行うことができた。イーヴァル・ハルストレムとコンラード・ヌードクヴィストのふたりのスウェーデン人作曲家が、うち3つの舞台の共同製作にかかわった 。《ある夢》、《スコットランドでの冒険》、《メルーシナ (Melusina)》(1882) の3作品。スウェーデンの作曲家が作曲した最初のバレエのための音楽といわれる。それまでは、指揮者が作曲する、オペラや劇中のバレエ場面の音楽以外はすべて、アドルフ・アダンやレオ・ドリーブら外国の作曲家による作品が上演されていた。《ある夢》はハルストレムが単独で、《スコットランドでの冒険》はハルストレムとヌードクヴィストが共同で作曲した。

 イーヴァル・ハルストレム Ivar Hallström (1826-1901) は、オペラ《山の王の花嫁 (Den Bergatagna/The Bride of the Mountain King)(Sterling CDO1001/2-2) で知られるスウェーデン・ロマンティシズム作曲家。幼いころにピアノのレッスンを受けたものの、法律の道に進む。ウプサラ大学時代にグスタフ王子 Prins Gustaf (1827-1852) −− 男声合唱曲《春の歌 (Vårsång)》と《行進曲「学生の幸せな日を歌え」(Marsch "Sjung om studentens lyckliga dag")》を作曲した −− を通じて王室とのつきあいが始まる。グスタフの願いにより国王オスカル二世の司書となるが、1852年に辞職。それまでにアードルフ・フレードリク・リンドブラード Adolf Fredrik Lindblad (1801-1878) のもとで作曲を学んでおり、1861年にはリンドブラードの音楽学校をまかせられることになる。コンラード・ヌードクヴィスト Conrad Nordqvist (1840-1901) は、音楽アカデミーで学ぶとともに、フランス・ベールヴァルド Franz Berwald (1796-1868) に、そして後にはルードヴィーグ・ノルマン Ludvig Norman (1831-1885) にも師事。1862年から王立オペラのバレエ音楽の指揮をまかされ、1892年には首席宮廷指揮者に任命された。

 《スコットランドでの冒険 (Ett äfventyr i Skottland/An Adventure in Scotland)》(1875) は、スコットランドの高地地方を訪れたフランスのバレエ団の一行と、そのプリマ・バレリーナに好意を寄せるふたりの男をめぐる話。ふたりの作曲家がそれぞれ7つのナンバーを担当し、最終的にヌードクヴィストが全体のオーケストレーションをチェックしたとされる。メンデルスゾーンやロベルト・シューマンの音楽を思わせる優雅なロマンティシズムのハルストレムの音楽。豊かで色彩的な管弦楽の使い方が特徴的なヌードクヴィストの音楽。そこにスコットランド高地の素朴な彩りが加わり、いやでもロマンティックな雰囲気が強まる (第5曲《スコットランドの歌 (Skotsk visa)》 の原曲は、ロバート・バーンズ Robert Burns (1759-1796) が採集し、歌詞をつけた《Ye Banks and Braes of Bonnie Doon (なんじら美しきドゥーンの堤と丘)》。ソプラノのマリー・マクラフリン Marie McLaughlin が素敵な歌を聴かせる “スコットランドの歌 (Songs of Scotland)(hyperion CDA67106) にも収録されている)。

 《スコットランドでの冒険》に先立つ《ある夢 (En dröm/A Dream)》(1871) は、収穫祭をむかえたフランスの村を舞台に、ひと組の恋人に妖精たちが絡んで話が進む。《冒険》ほど筋立ては入り組んでいない。プロット同様、旋律もすっきりしており、ロマンティックな味わいは控え目で、音楽の性格としては古典的。公演回数は40回をくだらず、最後の上演されたのは1902年と伝えられる。

 マルメ・オペラのオーケストラを指揮するミカエル・バートシュ Michael Bartosch (1965-) は、マルメとストックホルムの音楽大学を卒業。1996年王立オペラ主催の指揮者コンペティションで2位となり、王立オペラ製作のモーツァルトの《偽の女庭師》やアルバン・ベルクの《ヴォツェック》などを指揮。ヨーテボリ、マルメ、ノルランドのオペラとストックホルムのフォークオペラ、スウェーデン放送交響楽団をはじめとする国内のオーケストラを指揮。フランクフルトのアンサンブル・モデルン Ensemble Modern のコンサートにも定期的に出演する。カール・ウナンデル=シャリン Carl Unander-Scharin のオペラ《愚者の王 (Tokfursten)(Caprice CAP22046) が代表的録音。

 

新譜情報 − Jazz

Caprice CAP21617 Jazz in Sweden 2001 リンダ・スヴェンテソン − far from alone (ひとりぼっちじゃない)
 Speak of Love (愛を語ると) Can I Have Him over Here (あの人はここに来てくれるかしら)
 Far from Alone (ひとりぼっちじゃない) Delicious (おいしいこと) It Will Rain (雨が降るわ)
 Again and Again (なんどもあなたは) And Everywhere It Will Be You (そうすれば、どこでもあなたが)
 The Meaning of the Blues (ブルースが意味すること)
  リンダ・スヴェンテソン (ヴォーカル) フレードリク・ユンクヴィスト (テナーサクソフォーン、クラリネット)
  ヨン・リンドブルム (ギター) ハンス・アンデション (ベース) フレードリク・ルンドクヴィスト (ドラムズ)
  ヨアシム・ミルデル (ソプラノサクソフォーン) フレードリク・ヌードストレム (テナーサクソフォーン)
  ペッテル・ヴィンベリ (ベース)  

◇リンダ・スヴェンテソン Lindha Sventesson は、Rikskonserter (スウェーデン国立コンサート機関) と Caprice Records"Jazz in Sweden" - Artist 2001 に選ばれた女性ジャズ・ヴォーカリスト。1972年の生まれ。スタンダードナンバーを歌うことから、作詞と作曲 (このディスクでも6曲が自作) そしてフリー・ヴォーカル・インプロヴィゼーションまで。彼女の幅広い能力が高く評価された。このCDの制作と同時にスウェーデン国内ツアーも企画され、国際的な活動へ向けての援助を受けることが決まっている。透明な響きの声で落ち着いて歌うヴォーカルは、アメリカの白人女性ヴォーカルとも違った味わいがあって魅力的。すべて英語の歌詞で歌われる。録音もきわめて良く、ヴォーカル、楽器ともに音像が自然。秋から冬にかけての夜更け、じっくりとムードを楽しみたいディスク。

Caprice CAP21646 マグヌス・リンドグレン − Paradise Open
 Paradise Open Desert Room Red House Rocklunda Mourning Dove Buho
 Fågel Blå (青い鳥) The River One for Bob
  マグヌス・リンドグレン (テナーサックス、フルート、クラリネット、指揮)
  スウェーデン放送ジャズグループ

"Jazz in Sweden" - Artist 1999 に選ばれ、"Way Out" (Caprice CAP21609) をリリースしたマグヌス・リンドグレン Magnus Lindgren の新作。彼自身のカルテットに4人のブラスプレーヤーを加えた前作は、批評家とファンの双方から強く支持された。国外の評価も高い。Caprice Records とスウェーデン放送 (P2) の共同製作の実現により、マグヌスは、新しいディスクではスウェーデン放送ジャズグループと共演。2001823日と24日にストックホルムの Jazzclub Fasching で行われたライヴ演奏が録音された。聴衆の反応が示すとおり、ビッグバンドとの共演による熱っぽいジャズを聴くことができる。カール=マッティン・アルムクヴィスト Karl-Martin Almqvist が書いた "Mourning Dove" をのぞき、マグヌスが作曲。全曲アレンジも彼が担当した。


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CD artwork © Intim Musik, Prophone, Opus3, BIS, SFZ Records (Sweden)