Newsletter No.42   15 April 2002

 

色とりどりの音楽 − ノルウェーのレコード・レーベル 2L

 “ジャンルという血統から解放されて (free from the strains of genre)”。2L というノルウェーの新しいレコード・レーベルのキャッチフレーズです。といっても、クロスオーバーのレーベル? ということではなく、"2L" というレーベルひとつで、クラシカル、現代、ジャズ、ポップス、民俗音楽といった、いろいろなジャンルのディスクをリリースするという意味。ちょっとスウェーデンの Opus3 と似ています。Lindberg Lyd のイニシャルが重なっていることがレーベル名の由来です。

 レーベルのプロジェクトマネージャーはモッテン・リンドベルグ Morten Lindberg。制作のほか、録音とグラフィックデザインも手がけています。2L のアルバムには彼のセンスが強く反映し、おのおののディスクがコンセプトをもって制作されているために、多様な音楽が並んでいることが、ごく自然なことに見えてきます。

 2L のプロジェクトには、作曲家でピアニストのヴォルフガング・プラッゲ Wolfgang Plagge も深くかかわっています。クラシカルと現代のレパートリーの録音でミュージシャンとして参加していることは当然として、2L のディスクのコンセプトに彼の存在が果たす役割は小さくないはずです。

 プラッゲは1960年、オスロの生まれ。幼児のころから音楽に強い興味を示し、4歳のときにピアノを習い初めるとともに、初めての曲も書いています。10歳でイギリスのテレビで行われた国際コンペティションで優勝。翌年にはオスロの若手ピアニスト・コンペティションでも一位になりました。1972年にはオスロでリサイタル・デビューし、コンペティションの優勝を重ねた後、1986年にハンブルクの音楽大学を優等で卒業しています。

 プラッゲがユニークなのは、“神童” などと呼ばれながら、“大人になったらただの人” にならなかったことでしょう。作曲家としては才気と魅力をあわせもった作品を発表し、とりわけ管楽器のための室内楽作品はもっとも得意とする分野のひとつです。これまでの代表作のひとつがホルン協奏曲。フロイディス・レー・ヴェクレ Frøydis Ree Wekre の演奏で録音されています (Simax PSC1100)。ピアニストとしての活躍も目立ち、ソロ活動だけでなく、ヴェクレ、ラルス・アネルス・トムテル Lars Anderes Tomter (ヴィオラ)、トルルス・モルク Truls Mørk (チェロ)、2L5 に参加しているトランペットのオーレ・エドヴァルド・アントンセンをはじめとする国内外のアーティストと共演。代表的な録音はアイヴィン・グローヴェン Eivin Groven (1901-1977) のピアノ協奏曲です (Simax PSC3111)

 2L がこれまでにリリースしたディスクは5枚。うち3枚がクラシカルの “血統” に属します。

 “メランコリー (Melankoli)”と銘うった 2L1 は、コダーイ、ダウランド、ブリテン、アルヴォ・ペルト、スコット・ジョプリン、ヨハン・クヴァンダール、ブロッホ、リスト、ブラームスのヴィオラ、ピアノ、女声のための曲 (ジョプリンは編曲) を集めたアルバム。“憂いを感じ、それを新しい展望への足がかりとする” が、コンセプトです。アーティストは、モッテン・カールセン Morten Carlsen (ヴィオラ)、マリアネ・ベアーテ・シェラン Marianne Beate Kielland (メッツォソプラノ)、セルゲイ・オサドチュク Sergej Osadchuk (ピアノ)。ジャケットにはエドヴァルド・ムンク Edvard Munch の 「メランコリー (Melankoli)」 が使われました。

 2L2 はヴィエニャフスキのヴァイオリン作品全集の第1集です。ヴァイオリンはピョートル・ヤノフスキ Piotr Janowski (1951-)。プラッゲがピアノで共演しています。曲目は《華麗なるポロネーズ (Polonaise Brillante)》、《夢想 (Rêverie)》、《ロシアの謝肉祭 (Le Carnaval Russe)》など10曲。"Strad" 誌のタリー・ポッター Tully Potter は、ヤノフスキの演奏を、「音色は美しく、旋律の歌わせ方も上質だが、この音楽では、華麗な技巧、楽々と演奏するハーモニックス奏法、ポーランドのリズム −− 特にマズルカ −− に対する感覚、そして自然なルバートが注目される」と賛辞を呈し、プラッゲのピアノについても “とびきり (superb)” と評価しています (April 2002)。シリーズは4枚ないし5枚で完結、管弦楽をともなう曲もすべて録音する計画です。

 クラシカルのもう1枚は 2L5。アルバム・タイトルが “アルス・ノーヴァ (Ars Nova) − 中世からのインスピレーション (Den levende Middelalderen)”。ヴォルフガング・プラッゲの作品のなかから、タイトルどおり “中世” に素材を求めた曲が3曲、収録されています −− ソプラノとトランペットのための《ニダロスのセクエンツィア本》、トランペットソナタ、ソプラノとピアノのための《太陽の歌》。いずれも、カトリック信仰という背景をもつプラッゲが、敬虔な祈りとともに書いた作品です。

 《ニダロスのセクエンツィア本 (Liber Sequentiarum Nidrosiensis)》の素材は、宗教改革の流れのなかで破棄された、ニダロス大司教の命により作られたノルウェーで最初のカトリック祈祷書の断片を復元したもの。歌のテクストと旋律はそのまま使われ、中世と現代をつなぐ役割をになうトランペットの音楽はプラッゲが作曲。旋法を基本としながら、複調と半音階による作曲を行ったことについて、プラッゲは、トヴェイト Geirr Tveitt、ストラヴィンスキー、バルトークの手法に似てはいるが、オリジナル素材を壊さないよう細心の注意をはらったと語っています。ソプラノのソールヴェイ・クリンゲルボルン Solveig Kringelborn が、オーレ・エドヴァルド・アントンセン Ole Edvard Antonsen (1962-) のトランペットと共演しています。

 旋法、多調、ポリリズムの要素をもったトランペットソナタも、語法そのものは現代です。しかし、中世と現代を往来するかのような雰囲気が独特。最後にハインリヒ・イザーク Heinrich Isaac (c.1450-1517) の歌曲《インスブルックよ、さらば (Insbruck ich muss dich lassen)》の旋律が引用され、ハッとするような効果を上げています。アントンセンに献呈され、2001年のオスロ室内楽フェスティヴァルで初演されました。

 《太陽の歌 (Sólarljód)》では、中世アイスランドの詩をイーヴァル・オルグラン Ivar Orgland によるニューノシュク (新しいノルウェー語) 訳がテクストになっています。悪魔を魚類の一種ネズッポ (Vondraken/the Sea Dragon)、イエス・キリストを太陽の牡鹿 (Solhjorten/the Sun Hart) に例えるなど、キリスト教と異教の象徴を混在させた詩はきわめて絵画的。北欧の死生観が時代を超えたドラマとして迫ってきます (アイスランド語のオリジナルの 「太陽の牡鹿 (Sólarhjört)」 の部分は、ヨウン・ノルダル Jón Nordal (b.1926) の《春の朝の祈り (Óttusöngvar á vori/Matins in Spring)》(ITM7-09) にも使われています)。一般的な意味の歌曲というよりは叙事的なアリア。プラッゲ自身がそう語っています。クリンゲルボルンのために作曲された作品です。トランペットソナタと同じく、プラッゲがピアノを弾いています。

 クラシカル以外の2枚も、興味深いディスクです。2L3 の “ヴィンテルモーネ − 冬の月 (Vintermåne)” は、ジャズとポップスを背景にもつ若いグループ、ヴィンテルモーネがノルウェー民謡を自分たちの感性で歌ったアルバム。「冬の月のすばらしい鋼青色 −− 冷たい雪を照らす、なぞにつつまれた暖かい明かり」というキャッチコピー。一種独特の雰囲気の世界に聴き手を誘います。2L4 は、トロン・ステフェン・ヴェストベルグ Tron Steffen Westberg (1968-) のフィドル演奏によるノルウェーのトラディショナル作品です。誤解をおそれずに言えば、きわめて洗練された、現代的な音楽づくりの奥からノルウェー固有の響きが聞こえてくる演奏とでもなるでしょうか。ヴェストベルグは曲によってフィドルとハリングフェレを弾きわけていると思われます。

 2L のディスクの録音はきわめて上質。自然な響きの楽器が、くっきりとした音像を結びます。こういう音質の録音に接すると音楽を聴くことが楽しくてしかたありません。

 2L には "PIANO" という姉妹レーベルがあります。このレーベルの録音には、2L と同じ制作スタッフに加え、チェコ出身のピアニスト、イルジ・フリンカ Jiri Hlinka がプロデューサーのひとりとして参加しています。フリンカは教育者としても著名。現在のバラット=ドゥーエ音楽学校 (オスロ) の前にはベルゲン音楽院にクラスをもっていました。そのときの教え子のひとりが、ライフ・ウーヴェ・アンスネス Leif Ove Andsnes です。このレーベルも新しく、カタログには3枚のディスクしかありません。オリヴィエ・メシアンの2台のピアノのための 《アーメンの幻視 (Visions de l'Amen)(PIANO 001)、ニコライ・メトネルの作品を20年以上にわたって手がけてきたグンナル・サーマ Gunnar Sama (1949-) によるピアノ作品集 (PIANO 002)、そして、フリンカの愛弟子、ステフェン・ホルンがアントニオ・ビバロ Antonio Bibalo (1922-)、ヤナーチェク、リスト、クレメンツィの独奏のための曲を録音したピアノ作品集。

 このなかでもっとも注目にしたいのは、メシアンのディスクです。演奏しているのは、エリサベト・ヴァットン Elisabeth Vatn (1973-) とステフェン・ホルン Steffen Horn (1976-。ヴァットンもフリンカの門下生です。このふたりは1997年にデュオを結成。ラフマニノフ、ゲイル・トヴェイト、ルトスワフスキの作品などをレパートリーに、活動を行っています。彼らが録音した《アーメンの幻視》では、まず、たっぷりとした美しい響きのピアノに魅了されます。無理な力を加えることなく、ごく自然にダイナミックな響きを生み出す。これはフリンカの弟子の演奏に共通する特色といわれます。やはり美しい! そして、自分たちの音楽に自信をもった、説得力のある音楽づくり。メシアンの描いた7つの“アーメン”が鮮やかな姿を見せます。終曲 《成就のアーメン (Amen de la Consommation)》 の中間部にわずかなアンサンブルの乱れのようなものを感じますが、音楽そのものの価値を損なってはいません。

 このディスクは録音が、また見事です。2台のDモデル・スタインウェイが等身大に、くっきりと焦点を結び、音楽がリアルに、しかもみずみずしい音で再現されます。メシアンの音楽を堪能するには、この音質は欠かすことのできない要素です。傑作の割には条件の整ったCDが少ないこともあって、これは嬉しいプレゼント。好きな曲だからじっくり聴く、とリンドベルグ氏に伝えると、「楽しんでくれ (Enjoy!)」というメールがかえってきました。何度か聴いた後、もちろん、「楽しんだ (I did!)」というメールを送りました。

 2L のグループにはもうひとつ、LILY というレーベルがあります。制作スタッフはほかの2つのレーベルと共通。ミュージシャンたちとの共同製作という形態で、主として民俗音楽系のディスクをリリースしています。

 2L のディスク −− PIANO 001 も −− はディジパック仕様のジャケットに収められています。このパッケージの作りが丁寧で、北欧デザインのエッセンスを見る思い。スウェーデンの Nytorp Musik といい、2LPIANO といい、北欧の小さなレーベルがリリースするディスクには、制作に携わる人たちの洗練されたセンスを感じます。

リリースリスト

 

ユーセフ・ヨンソンの2つの交響曲

 Musica Sveciae Modern Classics の新作には、スウェーデンの作曲家ユーセフ・ヨンソン Josef Jonsson (1887-1969) の3つの交響曲のうち2曲が収録されました。

 ユーセフ・ヨンソンは1887621日、エンショーピング Enköping の生まれ。父のペール・エドヴァルド Per Edvard Jonsson は牧師でした。生後数カ月のときユーセフはポリオを患うという不幸にみまわれ、そのために生涯をつうじて車椅子での生活を余儀なくされます。しかし、ハンディキャップを克服。ノールショーピング Norköping の音楽文化にとって重要な役割を担う作曲家として尊敬を集めるまでになりました。

 ヨンソンは正式な音楽教育は受けていないといわれます。ピアノの手ほどきを受けたのが10歳のとき。一時的にノールショーピングに滞在していた親戚のアメリカ人が先生でした。その後、オルガン奏者、そして音楽教師になった兄のセト Set Jonsson からピアノ演奏と音楽を学び、ドイツに留学した同年代の友人たちからも楽譜や音楽の知識を手に入れるようになります。作曲については独学でした。

 作曲家の道を歩むにあたり、ひとつの転機となったのが、スウェーデンを代表する作曲家ヴィルヘルム・ステーンハンマル Wilhelm Stenhammar (1871-1927) との出会いでした。1915年、自作の組曲 −− 第1番 イ長調 作品9 −− を送ったことがきっかけでステーンハンマルと知り合います。指揮者でもあったステーンハンマルは、翌年ヨーテボリでこの組曲を指揮したばかりか、ヨンソンにさまざまの貴重な助言を与えました。そのひとつとして、形式に精通しているがために音楽が学究的になることを避けるために、ベートーヴェンの後期のソナタと弦楽四重奏曲を引用し、形式から解放されることを勧めたといわれます。

 もうひとりの恩人は、ノールショーピング交響楽団の首席指揮者を務めていた、作曲家でもあるイーヴァル・ヘルマン Ivar Hellman (1891-1994)。彼からは管弦楽法を教わり、ステーンハンマルのときと同様に、生涯をつうじた友情を育くんでいきました。

 ヨンソンは1952年にヘルマンとラジオで対談し、そのとき、彼が手本とした作曲家の名を挙げています。もっとも魅力を感じた歌曲作家はフーゴ・ヴォルフ。管弦楽の分野ではマックス・レーガーから影響を受け、シベリウスやグリーグら、民族的ロマンティシズムの作曲家には惹かれなかったといいます。しかし、レーガーの影響が見られるのは対位法の活かし方程度で、音楽の形式については独学で会得したバロックと古典主義音楽、管弦楽の響きは後期ロマンティシズムの影響のほうが大きいと考えられています。

 作曲家としての活動のほか、ヨンソンは批評家としてノールショーピングの新聞に寄稿。交響楽団のコンサート・プログラムに曲目解説を提供しています。こうしたノールショーピングを中心とした活動のおかげで、彼の管弦楽作品は交響楽団のコンサートで取りあげられることが多く、この交響楽団が演奏した44曲のうち26曲は初演でした。1938年、ヨンソンはスウェーデン音楽アカデミーの会員に選出され、翌年にはストックホルム音楽協会賞を受賞しています。

 ヨンソンの作品のなかでは声楽のための曲がかなりの部分を占めています。アッテルベリが傑作と呼んだ《ミサ・ソレムニス (Missa solemnis)》(作品37) のような大作もありますが、得意としたのは歌曲です。シューベルトやシューマンよりもヴォルフの歌曲を好んだと言うことからも想像できるように、ヨンソンの歌曲では内面性が重視されています。しかし、《銀の飾りのように (Som ett silversmycke)(Phono Suecia PSCD707:1) のように旋律の美しさが魅力の曲も書いており、このあたり、歌の伝統をもつスウェーデンの作曲家らしさが感じられます。

 歌曲とともにヨンソンの作品の核となっているのが管弦楽曲です。そのうち交響曲が3曲。このディスクに収録された第1番と第2番。そして、第3番ハ短調 作品50 (1947) です。

 第1番 (作品23) は1919年から1922年にかけて作曲された、比較的若い時期の作品です。《北国 (Nordland)》という副題をもち、4つの楽章には詩が引用されています −− 「Vem är den sköldung, som skeppen styr... (舟を率いる戦士は誰だ)」(「エッダ (Edda)」) (第1楽章)、「Skogarna lärde mig sjunga... (森が私に歌を教えてくれた)」(ヤーコブ・テーゲングレン Jakob Tegengren) (第2楽章)、「En hornlåt från en fäbodvall i sol... (陽のあたる山の牧草地から角笛の音が)」(カール=エーリク・フォシュルンド Karl-Erik Forsslund) (第3楽章)、「Bergland, Bergland, som ur havet stiger... (山よ、海から立ちあがる山よ)」(ベッティル・マルムベリ Bertil Malmberg) (第4楽章)。これらの詩は楽章の雰囲気を暗示する目的で引用されおり、この交響曲の各楽章が詩の内容にそった標題音楽になっているということではないといわれます。

 演奏時間にして約50分。“壮大な北欧のフレスコ画 (en bred nordisk fresk)” といううたい文句が似合う大曲です。第1楽章は太い筆遣いで書かれた力強い音楽。全曲の重心がおかれた第2楽章では、明るい世界と暗い世界を往来するような、ふしぎな抒情が漂います。第3楽章アレグレットは、4分の3拍子の舞曲。弦楽器群が演奏する荒々しい音楽は、詩の一節にある、「En brudlåt ifån Forskarlns gyllne fiol (川の精が金のフィドルで弾く婚礼の歌)」と考えられます。終楽章は荘重なアダージョから始まり、“光と闇の壮大な戦い (en storslagen kamp mellan det ljusa och det mörka)” (スティーグ・ヤーコブソン Stig Jacobsson) が展開。コラール風の音楽が輝やいたあと、静かに消えていく幕切れが印象的です。

 第1楽章について、もっと凝縮させるべきだったという意見もあったようです。引き締まった音楽の第2楽章以降とでは、作曲の時期に隔たりがあったのかどうか、興味があります。もうひとつおもしろいのは、レーガーの影響を受けたといいながら、ヨンソンの音楽には理屈っぽさがないことです。ステーンハンマルの助言のおかげでしょうか。

 交響曲第1番は、19231023日、作曲家のテューレ・ランスグトレム Ture Rangström (1884-1947) がヨーテボリ交響楽団を指揮して初演。1924130日のストックホルムでの初演を指揮したのは、同じく作曲家のクット・アッテルベリ Kurt Atterberg (1887-1974) です。作曲家仲間たちが初演の指揮棒をとったのは、ユーセフ・ヨンソンをスウェーデン作曲家協会 (Svensk Tonsättarförening (FST)) の創設者のひとりと考えた、友情のあかしだとも言われています。

 1928年から1930年に作曲された交響曲第2番ニ短調 (作品34) には詩の引用もなく、第1番ほどのロマンティシズム的雰囲気はあまり感じられません。3つの楽章からなり、演奏時間も20分半ほど。簡潔な、強い推進力のある音楽です。しかし、けっして無愛想ではなく、とりわけ第2楽章スケルツォの中間部アダージョの静穏で澄み切った音楽の美しいこと! 第3楽章も、さまざまな主題が使われていながら、コラールの終結に向けて大きな流れとなって展開していきます。突如あらわれるオーボエの旋律でハッとさせたり、木管楽器の色彩的な使い方が巧みです。

 第2番の交響曲は1931317日、トゥード・ブレンネル Tord Brenner 指揮ノールショーピング交響楽団により初演されました。1933年にストックホルムで演奏された時の指揮者は、作曲家でもあったアードルフ・ヴィークルンド Adolf Wiklund (1979-1950) です。

 このディスクで演奏しているのは、ヨンソンゆかりのノールショーピング交響楽団。リュー・チャー Lü Jia (1964-) は、1999年からこのオーケストラの首席指揮者を務める、中国生まれの指揮者です。フルメリの協奏曲を指揮したディスクが先日リリースされたばかり。このコンビ、単に曲を紹介するという以上の演奏をしているように感じられました。

Phono Suecia (Musica Sveciae Modern Classics) PSCD720
ユーセフ・ヨンソン (1887-1969)
 交響曲第1番 作品23《北国 (Nordland)(1919-22)
 交響曲第2番 ニ短調 作品34 (1928-30)
  ノールショーピング交響楽団 リュー・チャー (指揮)
 [録音 20019月、ルイ・ド・ジェール・ホール (ノールショーピング) 制作 シンシア・セッテルクヴィスト]

 

新譜情報

BIS CD1100 WA・モーツァルト (1756-1791) セレナード第4番 ニ長調 K203/189b
 セレナード第5番 ニ長調 K204/213a セレナード第2番 ヘ長調 K101 (4つのコントルダンス)
  テロ・ラトヴァラ (ヴァイオリン) タピオラ・シンフォニエッタ ジャン=ジャック・カントロフ (指揮)
 [録音 19999月、20004月、タピオラ・コンサートホール 制作・録音 イェンス・ブラウン]

BIS CD1010 につづく、ジャン=ジャック・カントロフとタピオラ・シンフォニエッタによるモーツァルトのセレナード録音第2作。管楽器のための 《グラン・パルティータ》 をメインにおいた前作は、BBC Music Magazine で高く評価された。新アルバムのニ長調のセレナード2曲は、いずれも第2楽章から第4楽章までが “ヴァイオリン協奏曲” の形をとった作品。LPの時代には、エド・デ・ヴァールト指揮ドレスデン・シュターツカペレによる軽やかで優美な演奏があった (Philips)。タピオラ・シンフォニエッタの演奏は、中欧の宮廷風優雅さで聴かせるというよりは、飾らないストレートな音楽づくりに独特の魅力が。

 独奏ヴァイオリンのテロ・ラトヴァラ Tero Latvala1972年にヘルシンキ音楽院に入学、翌年シベリウス・アカデミーに移り、レーナ・シウコネン=ペンティラ、アリ・アンゲルヴォ、アレクサンデル・ヴィニツキー、トゥオマス・ハーパネンに師事。ミリアム・フリードとペーテル・チャバのマスタークラスにも参加した。1988年からフィンランド国立オペラ管弦楽団のコンサートマスターを務めたあと、1990年から現在までタピオラ・シンフォニエッタのコンサートマスター。その他に、フィンランド室内管弦楽団のコンサートマスターも兼務。指揮者としても活動を始めた。

BIS CD1199 ヤーコブ・リンドベリ (1952-) (編曲) スウェーデン民謡による7つの組曲
 ダーラナ組曲 (Dalasvit)1番 (リュートのための) ヤムトランド組曲 (Svit från Jämtland) (リュートのための)
 ヴァルムランド組曲 (Svit från Värmland) (リュートマンドレーのための)
 ウプサラ組曲 (Svit från Uppland) (リュートのための) ダーラナ組曲 (Dalasvit) 第2番 (リュートのための)
 ハルシング組曲 (Hälsingesvit)1番 (ギターのための) ハルシング組曲 (Hälsingesvit)2番 (リュートのための)
  ヤーコブ・リンドベリ (リュート、ギター、リュートマンドレー)

◇ヤーコブ・リンドベリ Jakob Lindbeg は、ルネサンスリュート、バロックリュート、テオルボ、アーチリュート、バロックギターなど、撥弦楽器をなんでもこなす奏者として有名。スウェーデンだけでなく国際的に活躍する。BIS への最初の録音では、17世紀の手稿譜によりスコットランドのリュート音楽などを演奏した (CD201)。民謡の宝庫と言われるスウェーデンの民俗音楽をリュートのために編曲するにあたっては、スコットランドのリュート音楽からインスピレーションを得たという。

BIS CD1213 NOW
アンデシュ・ヒルボリ (1954-) 金管五重奏曲 (1998)
エイノ・タンベルク (1930-) 5のための音楽 (Music for Five) 作品86 (1992)
ペール・モッテンソン (1967-)
 易経変奏曲 (I-Ching Variations) (1998/99) (金管五重奏とエレクトロニクスのための)
ポール・ルーザス (1949-) ブレークダンス (Break Dance) (1984)
ルチアーノ・ベリオ (1925-2003) コール
(Call) (1985)
ヨアキム・アイナス タンゴ (1996)  スン・ヨンウォン パンドラゴン (Pandragon) (2000)
フレードリク・ホーグベリ (.1971-) メランコリー・タンゴ (Melancholy Tango) (2000)
  ストックホルム室内ブラス
  ペール・モッテンソン (エレクトロニクス) フレードリク・ウッレーン (ピアノ)

◇第1作 "ヘヴィメタル (Heavy Metal)"(BIS CD544) で世界中の度肝を抜き、金管五重奏を新しいレベルまで引き上げたと評されたストックホルム室内ブラス Stockholm Chamber Brass の新作。メンバーの交代はあったものの技巧とアンサンブルの良さはそのまま。新録音では聴き手に音楽をしっかりと伝えることも重視されている。ベリオとルーザスの曲をのぞき、すべてストックホルム室内ブラスのために作曲された。

BIS-NL CD5019 サブストリング・ブリッジ
スティーヴ・ライヒ (1936-)
 エレクトリック・カウンターポイント (1987)/リミックス/トリオ・エスコート/エスコーティック・ジョイント
武満徹 (1930-1996) すべては薄明かりのなかに (1988)
アンデシュ・ヒルボリ (1954-) クロースアップ (1996)/リミックス
オーケ・パーメルード (1953-) サブストリング・ブリッジ (1999) (ギターとコンピューターのための)
アーネ・レートマン ディプティーク (1993)
マグヌス・フリュクベリ クロース・イナフ
ユーハン・セーデルクヴィスト エピローグ (2000)
ボーナス・マルチメディア・トラック サブストリング・ブリッジ
  マッツ・ベリストレム (ギター)

EMI Classics CDC5 57266-2 フランツ・シューベルト (1797-1828) ピアノソナタ イ長調 D959
 歌曲集  星 巡礼者 不幸な男 流れを下る船上で
  ライフ・ウーヴェ・アンスネス (ピアノ) イアン・ボストリッジ (テノール) 他

Intim Musik IMCD075 クラリネットとピアノのためのスウェーデン作品集
ニクラス・ブレーマン (1966-) パルス 2 (Pulsar 2) (2000)
ハ ンス・エークルンド (1927-1999)
 ピアノのためのシャコンヌ (Ciacona per pianoforte) (1982)
トマス・リリエホルム (1944-) 第三の人影 (The Third Figure) (1994)
ユーナス・フォシェル (1957-) 七つの大罪 (The Seven Deadly Sins) (1992-1994)
カール=エーリク・ヴェーリン (1934-1992)
 ピアノのための主題と36の変奏 (Tema Con 36 variazione per pianoforte) 作品36 (1984)
イングヴァル・リードホルム (1921-) Amicizia (1980)
ヴィリアム・セイメル (1890-1964) クラリネットとピアノのための組曲 作品8

 ヘルマン・ステファウンソン Hermann Stefánsson (1976-) はアイスランド生まれのクラリネット奏者。南カリフォルニア大学でイェフダ・ジラードとミッチエル・ルーリーに、ロッテルダム音楽院でヴァルター・ボエケンス、ピテア音楽学校でクット・フォシュベリに師事した。王立ストックホルム・フィルハーモニックとストックホルム・シンフォニエッタの首席奏者を務める。ラーシュ・ダーヴィド・ニルソン Lars David Nilsson (1966-) はストックホルムの王立音楽大学で教会音楽とピアノを学び、大学院でピアノ独奏の修士号を取得した。ハンス・ファーギウス、ラーシュ・セレルグレン、ハンス・ポールソンの他、シュナーベルの弟子マリア・クルチオにも師事した。王立音楽大学で教えるかたわら、音楽祭やスウェーデン放送のための録音に参加している。

Ondine ODE960-2 キンモ・ハコラ (1958-) クラリネットのための作品集
 クラリネット五重奏曲 (1997)
 ローコ (loco) (クラリネットとペダル・バスドラムのための) (1995)
 カプリオール (Capriole) (バスクラリネットとチェロのための) (1991)
  カリ・クリーク (クラリネット、ペダル・バスドラム) アンシ・カルットゥネン (チェロ)
  アヴァンティ! 四重奏団
   ヨン・ストゥールゴールズ (ヴァイオリン) アンナ・ホホティ=ヤーティネン (ヴァイオリン)
   トゥーラ・リーサロ (ヴィオラ) レア・ペッカラ (チェロ)

◇ キンモ・ハコラ Kimmo Hakola (1958-) はフィンランドでもっとも注目される作曲家のひとり。シベリウス・アカデミーでラウタヴァーラ Einijuhani Rautavaara (1928-)、エーロ・ハメーンニエミ Eero Hämeenniemi (1951-2007)、マグヌス・リンドベリ Magnus Lindberg (1958) のもとで学んだ。1980年代には主として、楽器の技巧を活かした独奏曲や二重奏曲を作曲し、徹底し細部にこだわる完璧主義者的作風の音楽を聴かせた。しかし1990年の初め、ハコラはヘルシンキを離れてカレリア地方のケサラハティに住むことで、アカデミズムから距離を置いた。この数年間の模索によってハコラの音楽は独創性を強め、より自由な表現を獲得することになったといわれる。

YLE (フィンランド放送) との共同製作によるこのディスクで演奏された3曲は、いずれもカリ・クリーク Kari Kriikku (1960-) が初演した、ハコラがクラリネットという楽器を熟知していることがわかる作品。バスクラリネットとチェロのための《カプリオール》のタイトル "capriole" は “跳躍” を意味し、馬術では垂直跳躍 “カプリオール”、バレエでは跳躍の一種 “キャブリオール” として使われる。たえず動きながら、変化する音楽。最後に突然現れる抒情的な音楽はモンゴールの民謡を模したとされ、それまでの音楽と鮮やかな対照を見せる。《ローコ》ではクラリネット奏者がペダル・バスドラムも操る。"loco" には、音楽用語の “ローコ”、イタリア語の “場所” ないし “位置”、スペイン語の “狂気の” の意味が重ねられている。クラリネット五重奏曲は音楽祭 “クルーセル週間” の委嘱作品。動きつづける渦のような 《Process (過程)》 と静謐な 《Meditation (瞑想)》 の2つの楽章からなる演奏時間約42分の大曲。

 

新着情報

Vilnius Recording Studio VSCD063 オヌテ・ナルブタイテ (1956-)
 オラトリオ《Cenones meae urbi (わが街のパッチワーク)》(1997)
  レギーナ・マチューテ (ソプラノ) イグナス・ミシューテ (バス)
  アイディア室内合唱団 MK・チュリュリョーナス芸術高等学校合唱団
  リトアニア国立交響楽団 ロベルタス・シャルヴェニカス (指揮)

Vilnius Recording Studio VSCD101 ヴィータウタス・バルカウスカス (1931-) 室内楽作品集
 組曲 (Partita) 作品12 (1967) (ヴァイオリン独奏のための)
  ギドン・クレーメル (ヴァイオリン)
 アレグロ・ブリランテ 作品107 (1996) (2台のピアノのための)
  ルータ・イベルハウプティヤーネ (ピアノ) ズビグニャヴァス・イベルハウプティヤーネ (ピアノ)
 クラリネット三重奏曲 作品92 (1990-91)
  ライモンダス・カティリュス (ヴァイオリン) アルギルダス・ブルドリュス (クラリネット)
  シャルゲユス・オクルシュコ (ピアノ)
 弦楽四重奏のためのおとぎ話《王女の旅 (Karalaites kelione)》 作品
114 (2000)
  ヴィルニュス弦楽四重奏団
 弦楽オーケストラのための小協奏曲 作品88 (1988)
  リトアニア室内管弦楽団 サウリュス・ソンデツキス (指揮)
 ヴィオラと室内管弦楽団のための協奏曲 作品63 (1981)
  ユーリ・バシュメット (ヴィオラ)
  リトアニア国立交響楽団弦楽セクション ロベルタス・シャルヴェニカス (指揮)


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