Newsletter No.46   15 August 2002

 

英国に生まれたディーリアスと、ノルウェー

 シャン、シャン、シャンという鈴の音が聞こえてくるような軽やかな音楽。イギリスの作曲家、ディーリアスの管弦楽曲《そりすべり (Sleigh Ride)》は最初、ピアノのために作曲されました。そのときのタイトルは “ノルウェーのそりすべり (Norwegische Schlittenfahrt/Norwegian Sleigh Ride)”。このことは、ごく最近になって知りました。

 フレデリック・ディーリアス Frederick Delius (1862-1934) が《そりすべり》を書いたのは1887年。ライプツィヒを再度訪れたときことです。ちょうどそのころ、エドヴァルドとニーナのグリーグ夫妻も、管弦楽法の新しいアイデアを求めて、母校のあるライプツィヒに滞在していました。ディーリアスはそのグリーグ夫妻と一緒にクリスマスイヴを過ごすという幸運に恵まれます。子供のころからグリーグ Edvard Grieg (1843-1907) の音楽が好きだったディーリアスにとって、これは願ってもない機会でした。きっかけをつくってくれたのは、ディーリアスの旧友、ハルヴォシェン Johan Halvorsen (1864-1935) とシンディング Christian Sinding (1856-1931) です。

 クリスマスイヴ。ディーリアスらはエドヴァルドとニーナの滞在先を訪ね、いっしょに食事をとったあと、次から次へと音楽を演奏して楽しみました (エドヴァルド・グリーグは “決して忘れることのないお祝いの時” と書き記しています)。このときにディーリアスが弾いた曲が “ノルウェーのそりすべり” です。“ディーリアスが訪れた、夏真っ盛りのノルウェーの雪を戴く山々の思い出と、ふだんは単調な冬のライプツィヒの街景色がクリスマスのお祭り気分に染まっている様子を結びつけた音楽” (ライオネル・カーリー Lionel CarleyDanacord DACOCD592 ブックレット)。ディーリアスは、この曲をこの夕べのために書いた可能性が高いと言われています。

 この曲のピアノ譜は失われましたが、1889年にディーリアス自身がこの曲を管弦楽用に編曲。タイトルも《冬の夜 (Winter Nacht/Winter Night)》に変更され、《夏の夜 (Sommer Nacht)》と《春の朝 (Frühlings Morgen)》とあわせて、《3つの交響詩 (3 Symphonische Dichtungen)》としてまとめられることになります。タイトルから “ノルウェー” の文字がなくなり、スコアの冒頭のコメントにも1887年のクリスマスイヴのいきさつは触れられていないものの、軽快な音楽から、グリーグ夫妻と一緒に過ごした夕べのディーリアスらの幸せそうな顔が想像されるような気がします。

 フレデリック・ディーリアスが初めてノルウェーを訪れたのは1880年代の初頭のことでした。しかし、このときは、父親の商用旅行の途中に立ち寄った程度。ディーリアスが再びノルウェーに赴いたのは1887年です。こんどはノルウェーを旅行することが目的でした。ノルウェーに到着するなり村の結婚式に招待され、そこで見た人々の正直さと素朴さに心が和むものを感じた、とディーリアスは旅日記に記しています。6週間にわたってフィヨルドや高原地帯を旅してまわったディーリアスは、この旅行がきっかけとなって、ノルウェーを心のふるさとと考えるようになりました。

 ディーリアスとノルウェーの結びつきは強まっていき、1889年にはグリーグとシンディングと一緒にヨートゥンハイム山に登っています。その後は1911年をのぞき、毎年、夏になるとノルウェーを訪問。第1次世界大戦が終わると、グーブランスダール Gudbransdal のレスヤスクーグ Lesjaskog に夏の別荘を建築。ディーリアスの創作にとって、ノルウェーはなくてはならない存在になっていきます。そして、もうひとつ忘れてはいけないのが、グリーグのこと。グリーグが父親に口添えをしてくれたからこそ、ディーリアスが本格的に音楽の道に進むことができたというのは、重要なことです。

 ディーリアスが書いたデンマークにゆかりの作品を集めた “デンマーク名作集” (DACOCD536) につづく Danacord の新しいディスクでは、ディーリアスがノルウェーからインスピレーションを受けて書いた音楽が紹介されます。

 ディーリアスはノルウェーの美しい自然に魅せられました。同時に、ディーリアスの音楽のなかで “ノルウェー” が重要な位置を占めるようになった理由として、ノルウェーの自然に潜む “超自然” の力の存在も忘れることはできないでしょう。たとえば、ノルウェーのたくさんの物語に現れるトロルや地底の住人。グリーグやセーヴェルーが音楽を書いたイプセンの《ペール・ギュント (Peer Gynt)》にもトロルは登場し、グリーグの歌曲集《ハウグトゥッサ (山の娘) (Haugtussa)》には、超自然の存在が影を投げかけています。このことをはっきりと感じさせる作品が、ディスクの最初に収められた音詩《おとぎ話 (Eventyr)》です。

 この曲は、ノルウェーのおとぎ話を具体的な題材にした音楽ではないと一般的に考えられてきました。しかし、途中現れる男声による “荒々しい叫び声” は、山に捕らわれていた魔法の馬に乗って逃げる少年を追ってきたトロルの群を表しているのではないかという考えもある、といわれます。この曲の、“いかにもディーリアス” という旋律と和声をもちながら、ヴァーグナーを思わせるオーケストレーションで表現される音楽は、“曖昧模糊としたディーリアス” とは一線を画したドラマティックな起伏を持ち、そこから、背景にあるノルウェーの自然を思い起こさせます。ボー・ホルテンの指揮も、思い切り荒々しい音楽を聴かせ、抒情的な音楽との対比を強調しています。

 “デンマーク名作集” では、指揮者のボー・ホルテン Bo Holten (b.1948) が5つの歌曲のオーケストレーションを行い、それがアルバムの魅力のひとつになっていました (Gramophone, September 2000 "Editor's Choice")。今回のディスクでも、ニーナ・グリーグのために書かれた《ノルウェーの5つの歌》(1888) がホルテンの手で管弦楽用に編曲されています。ビョルンソン Bjørnstjerne Bjørnson、テオドル・シェルルフ Theodor Kjerulf (2曲)、パウルセン Johan Paulsen、アンドレアス・ムンク Andreas Munch の詩による 5曲です。この歌曲を受け取ったグリーグは最初、ノルウェー的な詩の抑揚がヴァーグナー風の旋律になっていることに抵抗を感じていたようですが、しばらく経ってから、この音楽の真の価値に気づき、あらためてディーリアスに賛辞を送っています。

 “デンマーク名作集” のホルテンのオーケストレーションについて、エドワード・グリーンフィールド Edward Greenfield は、Gramophone 誌の批評で、「管弦楽の色彩の使い方、特に木管楽器の書法については、ディーリアスほど特徴があるとは言えないものの、ピアノ伴奏にくらべて、美しい」(Gramphone 9/2000) と述べました。“美しい” ということに変わりはないとして、今回の編曲がはるかにのびのびとした印象を与えるのは、ディーリアスの書法をホルテンがさらに研究した成果でしょうか。《眠りの天使 (まどろみの歌) (Søvnens Engler/Slumber Song)》の細やかな弦楽の序奏、ヴァーグナーかと思わせるような、《あこがれ (Længsel/Longing)》のスケールの大きな響き。ディーリアスの晩年、身体の自由がきかなくなった師の作曲を助けたエリック・フェンビー Eric Fenby (1906-1997) だったらどう評価するでしょうか。

 ソプラノのボンデ=ハンセン Henriette Bonde-Hansen (b.1963) は “デンマーク名作集” につづいての起用です。透明でありながら、やや暗めの声。歌曲よりはオペラに向いた歌い方のように思いますが、この5曲では、それぞれの詩と歌の性格にあわせた歌い方と表現を行っています。びっくりしたのは、《日没 (Solnedgang/Sunset)》。マーリト・オスネス・オームボー Marit Osnes Aambø (Simax PSC1120) の、淡泊な (しかし愛情のこもった) 歌になれていたので、ちょっととまどいました。しかし、“たそがれゆく自然” の情緒をたっぷりと歌い上げるボンデ=ハンセンの歌には説得力があります。ホルテン指揮のオーケストラが雄弁ということもあるかもしれませんが、それだけでもなさそうです。ボンデ=ハンセンも、オームボーと同じく、通常のドイツ語訳 (あるいは英訳の) 歌詞ではなく原詩のノルウェー語をあてて歌っています。にもかかわらず、ことばの抑揚が旋律やリズムとうまく合って聞こえるのは、興味のあるところです。なお、この録音では、オームボーが省略した2番も歌われていて、演奏時間は、倍以上の5分もかかっています。

 《高地の丘の歌 (The song of the High Hills)》。このアルバム最後の曲のタイトルの“高地の丘 (high hills)”はノルウェーの山々のこと。そのため、エリック・フェンビーは、この曲を “ノルウェーの風景そのものへのオマージュ” と呼び、(ヴォーカリーズによる) 8声部の合唱とソプラノとテノールの独唱は、ノルウェーの山々とふれあいながら作曲者の魂が感じた、超人的な声の表現と言っています。合唱が初めて現れるところの神秘的な雰囲気は、間違いなく、ディーリアスの音楽のなかでも、もっともインスピレーションを感じさせる瞬間のひとつ。この曲のスケッチは、ディーリアスが1887年、ノルウェーの夏山に登った際にすでに携えていたと言われ、1912年に完成するまで、作曲者がいかに苦心したか (特に、合唱の部分) が想像できます。

 “エリック・フェンビーらの演奏にくらべ、速いテンポで、総じて情熱的な” (エドワード・グリーンフィールド Gramphone 9/2000) ボー・ホルテンの指揮の特徴は、基本的に今回のアルバムでも変わりません。全体に管弦楽の響きは明るく、透き通っており、全体にスマートで洗練されています。《高地の丘の歌》は、フェンビーの演奏 (Unicorn-Kanchana DKP (CD) 9029) にくらべるまでもなく、とにかく明快。(録音の透明度も高く) “いつからか、あるいは、どこからともなく聞こえてくる合唱” は、期待しないほうがいいでしょう。といっても、少しも否定的な意味ではなく、むしろ、ボー・ホルテンとオーフスのオーケストラと合唱団の作り上げる、もってまわったところのない音楽は、ディーリアスの音楽の味わいを率直に伝えてくれているような気がします。

 このディスクも、前作同様、ディーリアス・トラスト Delius Trust の助成により制作されました。制作のレンナート・デーン Lennart Dehn と録音のステファン・フロック Stephan Flock は、“デンマーク名作集” と同じ、いずれもスウェーデンの技術者のコンビ。オーケストラ全体とそれぞれの楽器 (そして、声) の輪郭がはっきりしていながら、雰囲気づくりも重視した録音は、それ自体が、音楽を聴くよろこびでもあると言ってもいいでしょう。《高地の丘の歌》で、“遠くから聞こえる” ように (はじめて) 合唱が入ってくるところは、空間に浮かぶ合唱のイメージが美しく、息をのんでしまいます。

 ついでながら、ディーリアスには、このディスクに録音された5つの歌曲以外に、《ノルウェー語の7つの歌 (7 Songs from the Norwegian)(RTV/9) (1889-90) という、ノルウェーの詩に曲をつけた歌曲集もあります。イプセン Henrik Ibsen、ヴィンニェ Aasmund Olavson Vinje、ビョルンソンの詩。グリーグがヴィンニェの詩に曲を書いた (作品35-9)《ルンダーネで (Ved Rondane)》 (ディーリアスの曲のタイトルは《家路に向けて (Homeward Journey)》) も含まれており、同じ詩にもかかわらず、ふたりの作曲家の音楽がまるっきり違ってしまっているのがおもしろいところ。グリーグの曲は、言うまでもなく、彼が書いたもっとも色彩的な旋律をもつ歌曲のひとつです。

 この歌曲集は、グリーグの《4つの歌曲》(作品2) と《6つの歌曲》(作品4)、ディーリアスの《5つのノルウェーの歌》と《森で (I skogen)》(ビョルンソンの詩)、そしてグレインジャーの5つの歌といっしょに、オームボーの録音 (Simax PSC1120) で聴くことができます。知的でありながら親愛を感じさせる歌、とでもいうのでしょうか。温もりのあるメッツォソプラノの声も素敵です。彼女はブックレットの解説もみずから担当していて、グリーグ、ディーリアス、グレインジャーという3人の作曲家の結びつきに対する思い入れのほどが知れます。グレアム・ジョンソン Graham Johnson のピアノが、しっかりと、しかもチャーミングに歌をサポートしていることはもちろんです。

 「大人の音楽」。《高地の丘の歌》を聴いて、友人のひとりが、こうつぶやきました。たしかに、ディーリアスの曲を初めて聴いて、すぐにその味わいやおもしろさがわかるかどうか。ディーリアスの音楽には奥行きがあります。たとえば、彼のもっとも成熟した作品のひとつといわれる、ホイットマンの詩をテクストにした《海の彷徨 (Sea Drift)》(1903-04)。ディーリアスの音楽のもっと深いところに切り込むとすれば、この作品は欠かせないでしょう。ホイットマンもホイットマンなら、ディーリアスも……。そのやりきれないほどの無常の世界を実感するには多少の時間を必要とするかもしれませんが、一度その味わいを知ると、きっと心に残りつづけることでしょう (聴くなら、同じヒコックスの録音でも、オペラティックな歌を歌うブリン・ターフェルを起用した Chandos のディスクより、ジョン・シャーリー=カークが毅然とした歌を聴かせる Decca (425 156-2) で)。ディーリアスの音楽とはそんな音楽です。(イギリスのあまたの作曲家のように) 無理に交響曲を作曲することをしなかったディーリアス。英国人というより、コスモポリタンというイメージが強くありませんか?

 先に触れた《ノルウェー語の7つの歌》だけでなく、ディーリアスは、ノルウェーと関わりのある作品をこのディスクの曲の他にも書いています。音詩《頂にて (On the Mountains)》、メロドラマ《頂にて (På vidderne)》(イプセン詩)、《ノルウェー組曲 (Norwegian suite)》など。そうなると “ノルウェー名作集” の第2集があってもいいところですが、現段階では Danacord の企画にはないとのこと。(《ノルウェー組曲》をのぞき) ダグラス・ボストック指揮の王立リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団による録音 (Classico CLASSCD364) があるのでいいのかもしれません。でも、ボー・ホルテンとオーフスのオーケストラの演奏でも聴きたいところですね。

 

Danacord DACOCD592 フレデリック・ディーリアス (1862-1934) ノルウェー名作集
 音詩《おとぎ話 (Eventyr)(昔むかし (Once upon a Time)) RTVI/23 (1915-17)
 そりすべり (Sleigh Ride) (冬の夜 (Winter Nacht/Winter Night)) RTVI/7 (1887 orch. 1889)
 ノルウェーの5つの歌 RTV/5 (1888) (オーケストレーション:ボー・ホルテン) (ノルウェー語)

 高地の丘の歌 (The Song of the High Hills) RTII/6 (1911-12)
  ヘンリエッテ・ボンデ=ハンセン (ソプラノ) ヨン・キョーラー (テノール)
  ヘレ・ホイヤー・ハンセン (ソプラノ) オーフス大学合唱団 ホンマー合唱団
  オーフス室内合唱団 オーフス交響楽団 ボー・ホルテン (指揮)
  [録音 2001519日 − 23日 フリクスパーケン (オーフス)]
  [制作 レンナート・デーン 録音 ステファン・フロック]

(TT)

新譜情報

Chandos CHAN9795 ニルス・W・ゲーゼ (1817-1890) 交響曲全集 第3集
 演奏会序曲《オシアンの余韻 (Efterklange af Ossian)》 作品1
 交響曲第3番 イ短調 作品15 (1846-47)
 アンダンテ=アレグロ・エネルジーコ=アンダンテ=テンポ・プリモ (交響曲第3番の破棄された第1楽章)
 交響曲第6番 ト短調 作品32 (1856-57)
  デンマーク国立放送交響楽団 クリストファー・ホグウッド (指揮)

◇ニルス・W・ゲーゼ・エディションによるシリーズ最新作。伝説時代スコットランドの戦士、詩人といわれるオシアンの詩にインスピレーションを得て、それにノルウェーを訪れた際の山並みの記憶を重ねた、ゲーゼのもっとも “北欧的” な作品のひとつ、《オシアンの余韻 (Efterklange af Ossian)》。メンデルスゾーンの影響がもっとも強いと評される第3番の交響曲は、1847年にライプツィヒのゲヴァントハウスで初演された。このディスクには、この交響曲の初稿の第1楽章《アンダンテ=アレグロ・エネルジーコ=アンダンテ=テンポ・プリモ》も収録 (初録音)。ゲーゼが破棄した理由は、スタイルが“北欧的”すぎたためとも、激しさと半音階の不安そうな動きが保守的なライプツィヒの聴衆に受け入れられないことをおそれたとも言われている。最初の妻の死という悲しみを反映したとされる第6番の交響曲は、暗く、揺れ動く気持ちとともに、ふしぎなやすらぎを感じさせる音楽。

dacapo 8.224183 パウル・フォン・クレーナウ (1883-1946) 管弦楽作品集 第2
 交響曲第7番 《嵐の交響曲 (Die Sturmsymphonie)(1941)
 バレエ序曲《イーダちゃんの花 (Klein Idas Blumen)(1916) (HC・アンデルセンの童話による)
 《死神との会話 (Gespräche mit dem Tod)(1916) (アルトと管弦楽のための7つの歌曲)
 ロンドンの年の市 (公休日 − ハムステッドヒースの思い出)
  (Jahrmarkt bei London) (Bankholiday - souvenir of "Hampstead Heath") (1923)
  スサンネ・レスマーク (アルト) オーゼンセ交響楽団 ヤン・ヴァーグナー (指揮)

◇デンマークに生まれたパウル・フォン・クレーナウ Paul von Klenau (1883-1946) はドイツ、オーストリアで学び、働くため、青年時代に母国を離れた。初期の交響曲はブルックナーに感化され、後期はフランス音楽とシェーンベルクの十二音技法の両方から影響を受けている。クレーナウはデンマークでは認められることはなかったものの、国外では、ウィーン・コンツェルトハウス協会などの重要な指揮ポストにつき、また、アルバン・ベルクの友人でもあった。「イーダちゃんの花」は、最初の童話集に掲載された、アンデルセンの1835年の作品にもとづく作品。[dacapo リリースシートから] 

dacapo 8.224225 ペレ・グズモンセン=ホルムグレン (1932-) 室内楽作品集
 鏡の小品 (Mirror Pieces) (1980) (クラリネット、チェロとピアノのための)
 ダブル (Double) (1994) (ヴァイオリンとピアノのための)
 パッサカリア (Passacaglia) (1977) (タブラ、クラリネット、ヴァイオリン、チェロとピアノのための)
 領土の歌 (Territorial Song) (1995-97)
  (バスクラリネット、チェロ、ピアノ、ハイハット、チェーンとそりの鈴のための)
 地に平和を (In terra pax) (1961) (クラリネット、ピアノと打楽器のための)
 ふたりの奏者のためのプラトー (Plateaux pour deux) (1970) (チェロと打楽器のための)
  LIN アンサンブル
   イェンス・スコウ (クラリネット) ヨン・エーデ (チェロ、指揮) エーリク・カルトフト (ピアノ)
  シーネ・マセン (ヴァイオリン) マス・ベンセン (打楽器) カーステン・サイマー=ハンセン (指揮)

◇みずからを“デンマーク音楽界の小物”−− アウトサイダー −− と言う、ペレ・グズモンセン=ホルムグレン Pelle Gudmundsen-Holmgren (b.1932) は、実際は現代デンマーク音楽界を代表する大物作曲家のひとり (いわば、名声を確立したアウトサイダー)。ペーア・ネアゴー Per Nørgård (b.1932) の “偉大なる二卵性双生児” と呼ばれことすらある。メロディ、心、ヴィジョンがネアゴーのキーワードとすれば、グズモンセン=ホルムグレンの方はリズム、身体、形式。対称となる2つの音階を用いた《鏡の小品》をはじめとし、JS・バッハ、ヴェーベルン、ブーレーズ、ジョン・ケージ、民俗音楽などの影響を受けたといわれる作品が集められている。

Intim Musik IMCD077 クレーリア・イルスン、ワルツ・アルバム
フレデリク・ショパン (1810-1849) 華麗なるワルツ 変イ長調 作品34-1
 ワルツ 変イ長調 作品69-1 《告別》
エイトル・ヴィラ=ロボス (1887-1959) 苦悩のワルツ (1932)
カール・マリア・フォン・ヴェーバー (1786-1826) 舞踏への誘い 作品65
フランシスコ・ミニョーネ (1897-1986) 街角のワルツ 第1
ロレンソ・フェルナンデス (1897-1998) 郊外のワルツ 作品70
エンリケ・グラナドス (1867-1916) 詩的なワルツ集 (1887)
ヨハネス・ブラームス (1833-1897) ワルツ イ長調 作品39-15
レオポルト・ゴドフスキー (1870-1938) なつかしいウィーン
ヨハン・シュトラウス二世 (1825-1899)/アンドレイ・シュルツ=エルフェル (1854-1905)
 「美しく青きドナウ」によるアラベスク
ミーシャ・レヴィツキー (1898-1941) 演奏会用ワルツ
フェレンツ・リスト (1811-1886) メフィスト・ワルツ第1
  クレーリア・イルスン (ピアノ)

Meridian Records のヴィラ=ロボス作品集で注目を集めた、ブラジル出身の女性ピアニスト、クレーリア・イルスン Clélia Iruzun。“ラテンアメリカ舞曲集” (IMCD061) とメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番など (IMCD066) につぐ Intim Musik への録音。メンデルスゾーンのディスクはスウェーデン放送の “ベスト・レコード” に選ばれた。

Intim Musik IMCD078 汝はたたえられよ (Gelobet seist Du)1705年リューベックのクリスマス
ディズリク・ブクステフーデ (c.1637 - 1707) 前奏曲 ハ長調 BuxWV137
 コラール前奏曲〈イエス・キリストよ、汝はたたえられよ〉 BuxWV188
マティアス・ヴェクマン (1616 - 1674)
 イエス・キリストよ、汝はたたえられよ (Gelobet seystu Jesu Christ) (6節)
 救いはわれらに来たれり (Es ist das Heil uns kommen her) (2節)
ニコラウス・ブルーンス (1665 - 1697) 前奏曲 ホ短調
アルヴォ・ペルト (1935-)
 Pari Intervallo (二部) (Anläßlich des Todes von M.K.) (MK の死を悼んで) (1976)
JS・バッハ (1685 - 1750) トッカータ、アダージョとフーガ ハ長調 BWV564
  ハンス・ダーヴィドソン (オルガン)

◇1705年、JS・バッハはブクステフーデに教えを請うためにリューベックを訪問。ブクステフーデは、オルガンの技法を紹介するだけでなく、リューベック大聖堂に新たに設置されたシュニトガー Schnitger オルガンによる演奏をバッハに聴かせものと考えられている。このディスクは、ブクステフーデとバッハが、1705年のクリスマスの時期、大聖堂の西バルコニーに上ってクリスマスの旋律に基づいたさまざまな作品の演奏を楽しんだ様子を再現しようとするもの。このディスクでは、あわせて、エストニアの作曲家アルヴォ・ペルト Arvo Pärt (b.1935) が友の死を悼んで作曲した "Pari Intervallo" も演奏されている。曲の反復構造にヴェクマンの音楽の反映が見られるという。

 ハンス・ダーヴィドソン Hans Davidsson はヨーテボリ大学の助教授。マティアス・ヴェクマンのオルガン音楽の解釈に関する論文により、1991年に音楽演奏の博士号を取得している。ヨーテボリ・オルガン芸術センター (GOArt) の創立者。2001年からはアメリカのイーストマン音楽学校 (ロチェスター市) の助教授にも就任した。

Opus3 CD22012 SACD (Multichannel/Stereo hybrid) Across the Bridge of Hope (希望の橋を渡り)
ヤン・サンドストレム (1954-)
 Across the Bridge of Hope (希望の橋を渡り) (1999) (ボーイソプラノと合唱のための)
 Surge Aquillo (北風よ、目覚めよ) (1998) (「ソロモンの雅歌」第4章 第16節)
ラーシュ・ネースブム (1925-) 教会ポルスカ (Kyrkpolska) (1972) (ニッケルハルパのための)
トマス・イェンネフェルト (1954-) 組曲《Villarosa Sequences(1996)Claviante Brillioso
アンデシュ・オストラン (1962-) Touch (タッチ) (2001) (打楽器アンサンブルのための)
 バガテル (Bagatelle) (2001) (マリンバとヴィブラフォーンのための)
エスキル・ヘムベリ (1938-2004) Thou who art over us (われらのうえにいます汝よ) (1992)
オスカル・リンドベリ (1887-1955) 聖霊降臨祭 (Pingst) (1911)
ユーハン・メーラク (1928-)
 山の風に寄せるヨイク (Bieggá luohte/Joik till fjällvinden) (ヨイクと儀式ドラムのための)
ヤン・サンドストレム (1954-)
 山の風に寄せるヨイク (Bieggá luohte/Joik till fjällvinden) (1998) (合唱、ヨイクと儀式ドラムのための)
ヤン・フェルム (1963-) I carry your heart (君の思いを僕の胸に) (2000) (ニッケルハルパのための)
  I carry your heart (君の思いを僕の胸に) (2000) (ニッケルハルパ、打楽器と合唱のための)
ヨハンネス・ユーハンソン (1951-) ケルビムの賛美歌 (Cherubim hymn) (1998)

オット・オルソン (1879-1964)
 詩篇120番 (Psalmus CXX) 「苦難の中から主を呼ぶと (Ad Dominum cum tribulare clamavi)
 シメオンの頌歌 (Canticum Simeonis)
  「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり (Nunc dimittis servum tuum, Domine)
 Rex gloriose Martyrum (殉教者の群の栄光の王よ)
  エーリク・ヴェストベリ・ヴォーカルアンサンブル エーリク・ヴェストベリ (指揮)
  アレクサンダー・リントット (ボーイソプラノ) トゥルビョン・ネースブム (ニッケルハルパ)
  アンデシュ・オストラン (打楽器) アンデシュ・オストラン打楽器アンサンブル ユーハン・メーレク (ヨイク)

"Musica Sacra" (Opus3 CD19506/CD19516) が好評だった、エーリク・ヴェストベリ・ヴォーカルアンサンブルの第2作。前作のソプラノサクソフォーンとオルガンにかえて、今回は、打楽器とスウェーデンの民俗楽器ニッケルハルパを起用。アカペラ合唱だけでなく、多彩な合唱音楽を楽しませる趣向。

 アルバムタイトルとなった “Across the Bridge of Hope (希望の橋を渡り)” は、ヤン・サンドストレム Jan Sandström (1954-) が、1998815日に北アイルランドのオーマで起こった IRA による爆弾事件の犠牲者30人を追悼して書いた曲。19986月、アイルランド大統領メアリー・マカリーズが “橋を架ける (Building bridges)” をテーマとする詩を書くことを呼びかけ、各地の生徒と学生が応募。その中に、12歳のショーン・マクラフリンと5人のクラスメートの詩も含まれていた。詩を提出した後の815日、ショーンは、爆弾事件に巻き込まれ犠牲者のひとりとなった。この曲は、1999年の大晦日からミレニアム (2000年) にかけて、世界56カ国、310の合唱団が歌い継ぎ、エーリク・ヴェストベリ・ヴォーカルアンサンブルが、最初と最後を歌った。ソロを歌う、アレクサンダー・リントット Alexander Lintott (1988-) は、イギリス、ケント州ブロムリー生まれのボーイソプラノ。

 ニッケルハルパを演奏するトゥルビョン・ネースブム Torbjörn Näsbom はウメオー交響楽団のヴァイオリニストでもある。《教会ポルスカ (Kyrkpolska)》を作曲したラーシュ・ネースブム Lars Näsbom (1925-) は彼の父。サーミの伝統、ヨイクを素材にした《山の風に寄せるヨイク (Bieggá luohte/Joik till fjällvinden)》は、ユーハン・メーラク Johan Märak (1928-) の口伝の歌を導入部とし、引き続きヤン・サンドストレムがアダプトした作品を演奏する。メーラクはサーミ出身。ヨックモック Jokkmokk 教区で司祭を務めていた。

Simax PSC1207 ヨハン・ハルヴォシェン (1864-1935) 劇音楽《フォッセグリム (Fossegrimen)》 作品21
 ノルウェーからシオドア・ローズヴェルトへの挨拶 (Norway's Greetings to Throdore Roosevelt) 作品31
  アルヴェ・モーン・ベルグセット (ハリングフェレ、ヴァイオリン、ヴォーカル)
  オイヴィン・ブルンク (テノール) ペール・ヴォレスタード (バリトン)
  オーシル・シーリ・レフスダール (ソプラノ) ヨアキム・セバスチャン・シェスブ (ボーイソプラノ)
  室内合唱団 ギンヌンガガップ ラトヴィア国立交響楽団 テリエ・ミケルセン (指揮)

◇ノルウェー・ロマンティシズムの作曲家ハルヴォシェン Johan Halvorsen (1864-1935) が付随音楽を書いた《フォッセグリム (Fossegrimen)》は、クリスチャニア国立劇場の俳優シーグル・エルデガルド Sigurd Eldegard の台本による “4幕のトロル劇”。滝の下に住む超自然の生物フォッセグリム (fossegrim) の弾くフィドルを聴いたという、村一番のフィドルの名手トルゲイルを主人公とするため、ノルウェーの民俗楽器ハリングフェレが劇音楽の全体で大きな役割を果たす。ノルウェー音楽史上初めて、管弦楽とともにハリングフェレを用いた音楽として有名。ガンガル (gangar)、スプリングダンス (springdans)、結婚行進曲 (bruremarsch) など、ノルウェーの伝統的な民俗音楽の曲をモデルにした音楽が作品を彩る。当時の上演ではハルヴォシェン自身がハリングフェレを弾いたとも伝えられる。

 このディスクには、序曲 (Ouverturen)、(音楽にあわせて台詞を語る) メロドラマ (Melodrama)、登場人物たちの歌う歌など、ハルヴォシェンがこの劇のために書いた音楽の全曲が収録されている。

 《ノルウェーからシオドア・ローズヴェルトへの挨拶 (Norway's Greetings to Throdore Roosevelt)》は、ノーベル平和賞を受賞したシオドア・ローズヴェルトの講演会 (1910年5月5日、オスロの国立劇場) に際し、ノルウェーとアメリカの友好を記念するためにノーベル委員会から委嘱された作品。《星条旗 (Star Spangled Banner)》(アメリカ国歌)、《ヤンキードゥドル (Yankee-doodle)》にハリングフェレが演奏するハリング (halling) が絡み合い、中間部では、ノルウェーとアメリカの友好関係を示すかのように、スヴェンセン Johan Svendsen (1840-1911) の編曲で親しまれている民謡《去年、山で山羊の番をしていた (I fjol gjætt'e gjeitinn)》と《星条旗》が同時に演奏される。

 演奏は、ハルヴォシェンの劇音楽の第1集 (Simax PSC1198)、第2集 (PSC1199) につづいて、テリエ・ミケルセン Terje Mikkelsen (b.1957) 指揮ラトヴィア国立交響楽団。ハリングフェレのアルヴェ・モーン・ベルグセット Arve Moen Bergset (b.1972) は、クヴァンダールの《ハリングフェレと弦楽のための幻想曲》 (Intim Musik IMCD065) や、トヴェイトのハリングフェレ協奏曲第1番・第2番 (BIS CD1207) など、最近の録音活動がめざましい。独唱者は、《アウドの歌 (Auds sang)》がオーシル・シーリ・レフスダール Åshild Skiri Refsdal (b.1972) (“ノルウェーの母の歌” (thema TH198-2) を録音したソプラノ)、《司会者の歌 (Kjøkemeistarens vise)》を歌うバリトンのペール・ヴォレスタード Per Vollestad (b.1959) (管弦楽伴奏によるグリーグ歌曲集 (Simax PSC1076)) など、いずれも1曲だけのために参加するという贅沢なキャスティング。

Sofa 507 ニルス・ヘンリク・アスハイム (b.1960) オルガンのための16の小品 (16 pieces for organ)
  ニルス・ヘンリク・アスハイム (オルガン) [録音 2001年12月16日−17日 オスロ大聖堂 (Ryde & Berg 1998)]
  [制作 ニルス・ヘンリク・アスハイム 録音 アウドゥン・ストリューペ]

◇“空気、メカニズム、パイプ、そして空間という4つの要素で成り立つ機械” オルガンに、作曲家でオルガニストでもあるアスハイム Nils Henrik Asheim (b.1960) が、自由な即興というアプローチで挑んだディスク。楽音だけでなく、オルガンの機械騒音、オスロ市内の交通の騒音など、オルガンを取りまくさまざまな音が音楽の流れと一体化して生まれるライヴ感覚も、意図されたもの。

Sonor SONCD9002 Etwas Neues unter der Sonnen
ヤン・マグネ・フォルデ (b.1962)
 ホルンの海 (トランペット協奏曲) (Hornhavet - a trumpet concerto) (2001)
  ヤン・マグネ・フォルデ (トランペット) ヘルゲ・ハルスタード (ベース)
  ロルフ・オラヴ・アイデ (ドラムズ)
シェル・ハベスタード (b.1955)
 Etwas Neues unter der Sonnen (Das Unterirrdische Klippenkonzert aus Norwegen) (1986/2000)
  (太陽の下、何か新しいもの (ノルウェーの地下の岩のコンサート))
  イングヴィル・ハベスタード (ハリングフェレ)
シェル・モルク・カールセン (b.1947) ヴァイキング讃歌 (Viking-hymn) (1982/2001)
ビョルン・ホムスネス (b.1954) Voices from the Script (聖書の声) (1999)
  コーレ・ノールストーガ (オルガン)
  クールボトン・シンフォニックウィンズ エルレン・トゥーネストヴェイト (指揮)
  [録音 2001年5月、10月、2002年1月 クールボトン映画館、オスロ大聖堂]
  [制作 トロン・エーリクソン  録音 ヤン・エーリク・トルモーエン]

Telarc CD80585
ジャン・シベリウス (1865-1957) 交響曲第2番 ニ長調 作品43
エドゥアルド・トゥビン (1905-1982) 交響曲第5番 ロ短調 (1946)
  シンシナティ交響楽団 パーヴォ・ヤルヴィ (指揮) [録音 2001年12月 シンシナティ]


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CD artwork © Danacord (Denmark), Ondine (Finland)